19 / 21
妖精の隠れ家
第19話 魔女の目的
しおりを挟む
「──俺達の他に、世論を誘導している奴がいる」
リーさんの口から語られた、衝撃の事実。
何故そんな事を……。
今まで『透明な魔女』の目的は、あくまでシークレット・フェアリーの活動を妨害する事。そんな奴等が、何故、フリードの支持者を増やす様な真似を……目的が分からない。大体、これが本物の『透明な魔女』の仕業だと仮定したとして、フリードの支持者を増やす事と、俺達の活動を妨害する事に、一体、何の関係があると言うんだ。
「目的は……何なんですか……?」
俺は、リーさんに率直に尋ねた。既に思い当たる節でもあったのか、リーさんが俺の問い掛けに対して持論を述べる。
「単純に、フリードの支持者を増やす為……とも考えられる。『透明な魔女』がフリードを崇拝しているとか、な。だが、それにしてもこの増え方は異常だ。最近、更に急激な増え方をしてるらしい。そして、この最近になってフリードを支持しだした連中……こいつ等が全て、『透明な魔女』の活動に賛同しているんだ。つまり、俺達の敵に回っているという事になる。これがどういう意味か分かるか?」
俺の目を見据え、リーさんは問い返して来た。俺だけではない、他の者達も含めて、答える事が出来ずに黙り込む。そんな空気を見兼ねて、亜里沙さんが代表して口を開いた。
「……どうしてなの?」
簡潔な返答。分からない……それが、俺達の答えだからだ。予想通りの反応だったらしく、リーさんは用意していた様に自分の考えを語りだす。
「……いいか? フリードはこのタイミングで、有り得ない勢いで支持者を増やしてる。これは、明らかに支持者を誘導している奴がいるからだ。匿名で人間の本性が出やすい、ネットの世界を使ってな──」
ここまでは分かる。今の世の中に不満を抱える、フリードの支持者予備軍の様な人達。そんな人達の背中を押して、派閥を拡げようとしている者がいるからだ。
「だが何故か、そうしてフリードの支持に回った連中が、尽く俺達の活動を妨害し始めている。まるで、フリードの活動には、俺達が邪魔だと言わんばかりにな──」
話の本質に近付いたのか、リーさんは新しい煙草に火を点けた。そして、ゆっくりと深く吸い込むと、大きく煙を吐き出しながら続ける。
「つまり、フリードの支持者を増やす為に世論を誘導している連中と、俺達の活動を妨害する奴……つまり、その連中と『透明な魔女』は、利害が一致している可能性が高いという事だ。……【妖精は一人でいい】。この言葉、一見すると『透明な魔女』からのメッセージの様に見える。だが、その裏にはもう一人の『妖精』……つまり、フリードが関わっている可能性があると言う事だ!」
「そ、そんな……」
「フリードが……私達を……?」
リーさんの説明を聞き、秋菜と希ちゃんが其々に零す。同じ様に萌くんが、驚きながらリーさんに尋ねた。
「ど、どうしてフリードが僕達の活動を……?」
少し混乱しているのか、珍しく要領を得ない聞き方をする、萌くん。そんな萌くんに、リーさんは淡々と答えた。
「……分からん。フリードにとって、俺達の何が邪魔なのか。そもそも、『透明な魔女』の目的だってハッキリしないんだ。何故、俺達の活動を妨害して来るのか。ただ、これだけはハッキリ言える。フリードと『透明な魔女』……こいつ等は、確実に繋がっている」
言いたい事を終えたのか、リーさんは煙草を灰皿に押し付けた。
フリードと『透明な魔女』が繋がっている……。確かに、言われてみれば合点のいく話だ。不自然なくらい、急激に増え始めたフリードの支持者。そして、同じ様に突然現れた『透明な魔女』。タイミングは確かに一致する。リーさんの言う通り、俺達の邪魔をする目的までは分からないが……。
「一体、何が起こってるんだ……」
思わず俺は呟いた。
フリードの支持者を増やす為に世論を誘導する、『透明な魔女』。
そうして生まれた、『透明な魔女』の活動に賛同する『フリードの支持者』。
この二つが互いに利害関係で一致して妨害する、『シークレット・フェアリーの活動』。
フリードが自分の支持者を増やす為に、『透明な魔女』へ手を貸すのは、まあ分かる。では、『透明な魔女』がフリードの支持者を増やすメリットは? 単純に、フリードを支持する仲間を増やしたいからか? そもそも、どうして『シークレット・フェアリー』を、ここまで目の敵にする必要があるんだ……フリードと手を組んでまで。
──分からない。
フリードの目的も、『透明な魔女』の目的も。
またも思考の波に飲み込まれた俺を、秋菜の一言が呼び戻した。
「あの……どうして『透明な魔女』の人達は、わざわざこんなメッセージを……?」
確かにそうだ。
色々あり過ぎて、根本的な事を忘れていた。そもそも、今回こんな事を知るキッカケになったのは、あの書き込みに隠されたメッセージだ。ただの宣戦布告なのか、それとも……。
すると、リーさんは秋菜の問い掛けに対し、ニヤリと口元を歪ませた。
「いい質問だ。俺はこの書き込みの最後の一行……『いつもの場所で、今夜決着を付けましょう』。この、『いつもの場所』と言うのに心当たりがある。いつもやりあってた『妖精』だらこそ分かる、俺だけに向けたメッセージだ──」
ハッカー同士にしか分からない、何かがあるのかも知れない。リーさんはまるで、決戦を前にした高揚を抑える様に、少し興奮気味な口調で言い切った。
「──おそらく『透明な魔女』は仕掛けて来る……多分、今夜な」
リーさんの口から語られた、衝撃の事実。
何故そんな事を……。
今まで『透明な魔女』の目的は、あくまでシークレット・フェアリーの活動を妨害する事。そんな奴等が、何故、フリードの支持者を増やす様な真似を……目的が分からない。大体、これが本物の『透明な魔女』の仕業だと仮定したとして、フリードの支持者を増やす事と、俺達の活動を妨害する事に、一体、何の関係があると言うんだ。
「目的は……何なんですか……?」
俺は、リーさんに率直に尋ねた。既に思い当たる節でもあったのか、リーさんが俺の問い掛けに対して持論を述べる。
「単純に、フリードの支持者を増やす為……とも考えられる。『透明な魔女』がフリードを崇拝しているとか、な。だが、それにしてもこの増え方は異常だ。最近、更に急激な増え方をしてるらしい。そして、この最近になってフリードを支持しだした連中……こいつ等が全て、『透明な魔女』の活動に賛同しているんだ。つまり、俺達の敵に回っているという事になる。これがどういう意味か分かるか?」
俺の目を見据え、リーさんは問い返して来た。俺だけではない、他の者達も含めて、答える事が出来ずに黙り込む。そんな空気を見兼ねて、亜里沙さんが代表して口を開いた。
「……どうしてなの?」
簡潔な返答。分からない……それが、俺達の答えだからだ。予想通りの反応だったらしく、リーさんは用意していた様に自分の考えを語りだす。
「……いいか? フリードはこのタイミングで、有り得ない勢いで支持者を増やしてる。これは、明らかに支持者を誘導している奴がいるからだ。匿名で人間の本性が出やすい、ネットの世界を使ってな──」
ここまでは分かる。今の世の中に不満を抱える、フリードの支持者予備軍の様な人達。そんな人達の背中を押して、派閥を拡げようとしている者がいるからだ。
「だが何故か、そうしてフリードの支持に回った連中が、尽く俺達の活動を妨害し始めている。まるで、フリードの活動には、俺達が邪魔だと言わんばかりにな──」
話の本質に近付いたのか、リーさんは新しい煙草に火を点けた。そして、ゆっくりと深く吸い込むと、大きく煙を吐き出しながら続ける。
「つまり、フリードの支持者を増やす為に世論を誘導している連中と、俺達の活動を妨害する奴……つまり、その連中と『透明な魔女』は、利害が一致している可能性が高いという事だ。……【妖精は一人でいい】。この言葉、一見すると『透明な魔女』からのメッセージの様に見える。だが、その裏にはもう一人の『妖精』……つまり、フリードが関わっている可能性があると言う事だ!」
「そ、そんな……」
「フリードが……私達を……?」
リーさんの説明を聞き、秋菜と希ちゃんが其々に零す。同じ様に萌くんが、驚きながらリーさんに尋ねた。
「ど、どうしてフリードが僕達の活動を……?」
少し混乱しているのか、珍しく要領を得ない聞き方をする、萌くん。そんな萌くんに、リーさんは淡々と答えた。
「……分からん。フリードにとって、俺達の何が邪魔なのか。そもそも、『透明な魔女』の目的だってハッキリしないんだ。何故、俺達の活動を妨害して来るのか。ただ、これだけはハッキリ言える。フリードと『透明な魔女』……こいつ等は、確実に繋がっている」
言いたい事を終えたのか、リーさんは煙草を灰皿に押し付けた。
フリードと『透明な魔女』が繋がっている……。確かに、言われてみれば合点のいく話だ。不自然なくらい、急激に増え始めたフリードの支持者。そして、同じ様に突然現れた『透明な魔女』。タイミングは確かに一致する。リーさんの言う通り、俺達の邪魔をする目的までは分からないが……。
「一体、何が起こってるんだ……」
思わず俺は呟いた。
フリードの支持者を増やす為に世論を誘導する、『透明な魔女』。
そうして生まれた、『透明な魔女』の活動に賛同する『フリードの支持者』。
この二つが互いに利害関係で一致して妨害する、『シークレット・フェアリーの活動』。
フリードが自分の支持者を増やす為に、『透明な魔女』へ手を貸すのは、まあ分かる。では、『透明な魔女』がフリードの支持者を増やすメリットは? 単純に、フリードを支持する仲間を増やしたいからか? そもそも、どうして『シークレット・フェアリー』を、ここまで目の敵にする必要があるんだ……フリードと手を組んでまで。
──分からない。
フリードの目的も、『透明な魔女』の目的も。
またも思考の波に飲み込まれた俺を、秋菜の一言が呼び戻した。
「あの……どうして『透明な魔女』の人達は、わざわざこんなメッセージを……?」
確かにそうだ。
色々あり過ぎて、根本的な事を忘れていた。そもそも、今回こんな事を知るキッカケになったのは、あの書き込みに隠されたメッセージだ。ただの宣戦布告なのか、それとも……。
すると、リーさんは秋菜の問い掛けに対し、ニヤリと口元を歪ませた。
「いい質問だ。俺はこの書き込みの最後の一行……『いつもの場所で、今夜決着を付けましょう』。この、『いつもの場所』と言うのに心当たりがある。いつもやりあってた『妖精』だらこそ分かる、俺だけに向けたメッセージだ──」
ハッカー同士にしか分からない、何かがあるのかも知れない。リーさんはまるで、決戦を前にした高揚を抑える様に、少し興奮気味な口調で言い切った。
「──おそらく『透明な魔女』は仕掛けて来る……多分、今夜な」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
鋼月の軌跡
チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル!
未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!
ゾンビのプロ セイヴィングロード
石井アドリー
SF
東京で営業職に三年勤め、youtuberとしても活動していた『丘口知夏』は地獄の三日間を独りで逃げ延びていた。
その道中で百貨店の屋上に住む集団に救われたものの、安息の日々は長く続かなかった。
梯子を昇れる個体が現れたことで、ついに屋上の中へ地獄が流れ込んでいく。
信頼していた人までもがゾンビとなった。大切な屋上が崩壊していく。彼女は何もかも諦めかけていた。
「俺はゾンビのプロだ」
自らをそう名乗った謎の筋肉男『谷口貴樹』はロックミュージックを流し、アクション映画の如く盛大にゾンビを殲滅した。
知夏はその姿に惹かれ奮い立った。この手で人を救うたいという願いを胸に、百貨店の屋上から小さな一歩を踏み出す。
その一歩が百貨店を盛大に救い出すことになるとは、彼女はまだ考えてもいなかった。
数を増やし成長までするゾンビの群れに挑み、大都会に取り残された人々を救っていく。
ゾンビのプロとその見習いの二人を軸にしたゾンビパンデミック長編。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる