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職業 《 勇者 》
49話 サンディーと新たな情報
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剣を抜いたカーミラが風をまとって一目散に飛んできた。
「──メーシャさんはどちらですか!」
ジーノがカーミラともうひとりの騎士を連れてメーシャとサンドワームが戦う平原に戻ってきたのだ。
「こっちだ! いろは卿がサンドワームと戦って……」
ジーノが目の前の光景を見て言葉を失ってしまう。
「……スメラルド卿、そんなに切迫した様子ではないみたいだが?」
もう一人の騎士が少し困惑したような呆れたような様子で足を止める。
この騎士は四騎士のひとりでダークエルフの"べニート・ルチルス"。
上級魔法も3種類に加え、ダークエルフでは珍しく回復魔法も使える魔法使いだ。
「むしろ和気あいあいというか……」
カーミラが目の前の様子を見て苦笑いをしながら剣をおさめる。
「サンディー、いっぱい食べるんですよ」
「っていうか、これラードロのタコ足だけど食べて大丈夫なの?」
『……大丈夫じゃねえか? 見た感じなんの変化もないし、サンディーも今まで何度も食べてきたって言ってんだから、何かあるなら既に大丈夫じゃない状態になってんだろ』
「キュッキュイ~!」
そう、"サンディー"とはサンドワームのことである。
● ● ●
メーシャとサンドワームは戦闘で体力切れになってぶっ倒れてしまった。その後回復となぜここにサンドワームが居るのか知るのを兼ねてピクニックをすることにしたのだ。
そこでメーシャはアレッサンドリーテで買った骨付き肉をワイルドに食らいつき、サンドワームにはヒデヨシと同じ豆のペーストを食べさせようとしたところ口に合わず。
匂いを感じ取ったサンドワームは『キュキュイキイキイ』と暴れ……もとい、転がって駄々をこねはじめ、困ったメーシャはみんなで相談して様子を見ながら食べさせる事に決定した。
結果、メーシャたちに懐いてしまい急遽サンドワームが妹分に。その流れで名前も全員で相談して『サンディー』となったのだった。
● ● ●
「──それで、僕は卵が産まれたらお兄ちゃんになるんだな~と思ったら、サンディーが妹になっちゃったんです! 早すぎますよね、まったくぅっ! ……ま、悪くないですけど」
ヒデヨシがこみあげる嬉しさがあふれ出したのか、なんとも締まらない顔でカーミラに経緯を説明した。
「そ、そうなんだ……。あ、それで、なぜサンドワームがここに来たの?」
「それはあーしが。あ、先にカーミラちゃんジュースでもどぞ。ジーノのおっちゃんもそちらの騎士さんもシュワっといっちゃってください。ブドウ味だよ」
メーシャはみんなにブドウ味のペットボトル炭酸飲料を配る。
「ありがとう。……甘くて美味しい。けど、痛い」
カーミラは炭酸苦手民だったようで、ひと口飲むたびに目をキュッとつむって耐えていた。
「炭酸ないやつもあるよ。交換する?」
それを見かねたメーシャは、ブドウの甘いジュースを魔法陣から取り出す。
「あ、じゃあこれは少しおいて炭酸が弱くなって飲むかな……」
「大丈夫そうならそうして。キツそうならあーしが飲んじゃうよ」
「じゃあ、お願いしていいかな? ありがとう」
カーミラは炭酸飲料と普通の甘いブドウジュースを交換してもらった。
「いいよいいよ」
「……うん、美味しい」
カーミラの口にあったようだ。
「……いろは卿、助かる。ちょうど喉乾いていたんだ」
「ありがとうございます、いろは卿。自分は炭酸に目がないもので、見たことのないパッケージの差し入れは少々心が躍ります」
ジーノとベニートの方はむしろ炭酸飲料が大好き民だったようで、しかも味も気に入ったのかグビグビ飲み始めた。
「じゃ、サンドワームが来た理由なんだけど──」
メーシャはサンディーから聞いた話(デウス訳)を3人に説明した。
サンディー目線ではただ『新たなグルメを探してここまで来ただけ』ということだったが、それまでに不穏な要素が散りばめられていた。
まず、旅立ちのキッカケはサンディーのパパママが砂漠の外にいっぱい美味しいものがあると言ったからのようだが、砂漠に適応した身体を持つサンドワームは基本的に一生を砂漠で過ごし、幼体は十分な身体の大きさに成長するまでの20年間は親と離れず狩りの練習をするのだとか。そしてサンディーはまだ14歳でその時ではない。
そうなる以前に、黒いオーラを出す怖い雰囲気の人型のバケモノとガイコツの顔のバケモノの2人組が現れて、群れの仲間が凶暴化したり行方不明にもなっていたそうだ。
そして、ここに来るまでに何度も禍々しいオーラのバケモノが襲ってきたらしい。全部食べちゃったらしいが。
● ● ●
「──つまり、ラードロによってサンドワームの群れが襲われて、何らかの実験に使われた可能性があるってことと、そこから逃すためにサンドワーム夫妻がサンディーをここへ行くよう仕向けたってカンジ? 2人組ってのはデウスいわく、邪神の幹部じゃないかって」
邪神ゴッパの軍の幹部が水面下で何かを企んでいるようだ。
「キュキュ!」
「そう言えば、サイクロプスは単純に狩りが上手くいかずにここまで来ちゃっただけって言ってました」
ヒデヨシが補足する。
「キュイッキュ!」
「ドラゴン=ラードロ1体でも傷ひとつ与えられず軍は半壊したし、騎士もひとり戦えない状態になっちまったっていうのに、まだ幹部がふたりもいるのかよ……! ジョセフィーヌ殿下の安否も確認できてないしよ」
ジーノは憤りと絶望で全身の力が抜けて座り込んでしまう。
実は、ここに来ていない四騎士のひとりは、ドラゴン=ラードロ戦で負った傷が未だに治らず戦闘行為ができなくなっているのだとか。
「キュ?」
「来たるオーク討伐戦で何か、攻略の糸口でも掴めたら良いんだが……」
ベニートが頭を抱えてしまう。
「キィッキュ」
「スメラルド卿、ルチルス卿、そうは言っても暗い話ばかりではありませんよ。何と言っても、今回はウロボロス様の勇者であるメーシャさんとヒデヨシさんに加えて、幼体とは言え砂漠のヌシであるサンドワームが仲間になったんですから」
カーミラが力強い声でふたりを元気付ける。
「キュ~!」
「……そうだな。戦う前から諦めてちゃいけないよな。すまないルーベリーテ卿」
ジーノは苦笑いを浮かべる。が、メーシャも別の意味で苦笑いしていた。
「…………サンディー? 楽しいのは分かるけど、全部に相槌しなくて良いんだよ?」
「キュ? キィ……」
サンディーは理解したのか一瞬黙ったが、何かを思い出してまた口を開いた。
「キュ! キィキュキュキキキュッキュ!」
「え、そうなんですか!?」
ヒデヨシがサンディーの言葉を聞いて目を見開いて驚く。
「ヒデヨシくん、サンディーちゃんは何って言ってたの?」
そのただ事じゃない様子に、カーミラが神妙な面持ちで訊いた。
「ここに来る直前、バケモノ……多分幹部に教えられたそうなんですけど……」
ヒデヨシはそこで深呼吸をして息を整えて再び口を開く。
「ドラゴン=ラードロの城に、ジョセフィーヌ王女がいるそうです!」
「キュッキュ!」
「──メーシャさんはどちらですか!」
ジーノがカーミラともうひとりの騎士を連れてメーシャとサンドワームが戦う平原に戻ってきたのだ。
「こっちだ! いろは卿がサンドワームと戦って……」
ジーノが目の前の光景を見て言葉を失ってしまう。
「……スメラルド卿、そんなに切迫した様子ではないみたいだが?」
もう一人の騎士が少し困惑したような呆れたような様子で足を止める。
この騎士は四騎士のひとりでダークエルフの"べニート・ルチルス"。
上級魔法も3種類に加え、ダークエルフでは珍しく回復魔法も使える魔法使いだ。
「むしろ和気あいあいというか……」
カーミラが目の前の様子を見て苦笑いをしながら剣をおさめる。
「サンディー、いっぱい食べるんですよ」
「っていうか、これラードロのタコ足だけど食べて大丈夫なの?」
『……大丈夫じゃねえか? 見た感じなんの変化もないし、サンディーも今まで何度も食べてきたって言ってんだから、何かあるなら既に大丈夫じゃない状態になってんだろ』
「キュッキュイ~!」
そう、"サンディー"とはサンドワームのことである。
● ● ●
メーシャとサンドワームは戦闘で体力切れになってぶっ倒れてしまった。その後回復となぜここにサンドワームが居るのか知るのを兼ねてピクニックをすることにしたのだ。
そこでメーシャはアレッサンドリーテで買った骨付き肉をワイルドに食らいつき、サンドワームにはヒデヨシと同じ豆のペーストを食べさせようとしたところ口に合わず。
匂いを感じ取ったサンドワームは『キュキュイキイキイ』と暴れ……もとい、転がって駄々をこねはじめ、困ったメーシャはみんなで相談して様子を見ながら食べさせる事に決定した。
結果、メーシャたちに懐いてしまい急遽サンドワームが妹分に。その流れで名前も全員で相談して『サンディー』となったのだった。
● ● ●
「──それで、僕は卵が産まれたらお兄ちゃんになるんだな~と思ったら、サンディーが妹になっちゃったんです! 早すぎますよね、まったくぅっ! ……ま、悪くないですけど」
ヒデヨシがこみあげる嬉しさがあふれ出したのか、なんとも締まらない顔でカーミラに経緯を説明した。
「そ、そうなんだ……。あ、それで、なぜサンドワームがここに来たの?」
「それはあーしが。あ、先にカーミラちゃんジュースでもどぞ。ジーノのおっちゃんもそちらの騎士さんもシュワっといっちゃってください。ブドウ味だよ」
メーシャはみんなにブドウ味のペットボトル炭酸飲料を配る。
「ありがとう。……甘くて美味しい。けど、痛い」
カーミラは炭酸苦手民だったようで、ひと口飲むたびに目をキュッとつむって耐えていた。
「炭酸ないやつもあるよ。交換する?」
それを見かねたメーシャは、ブドウの甘いジュースを魔法陣から取り出す。
「あ、じゃあこれは少しおいて炭酸が弱くなって飲むかな……」
「大丈夫そうならそうして。キツそうならあーしが飲んじゃうよ」
「じゃあ、お願いしていいかな? ありがとう」
カーミラは炭酸飲料と普通の甘いブドウジュースを交換してもらった。
「いいよいいよ」
「……うん、美味しい」
カーミラの口にあったようだ。
「……いろは卿、助かる。ちょうど喉乾いていたんだ」
「ありがとうございます、いろは卿。自分は炭酸に目がないもので、見たことのないパッケージの差し入れは少々心が躍ります」
ジーノとベニートの方はむしろ炭酸飲料が大好き民だったようで、しかも味も気に入ったのかグビグビ飲み始めた。
「じゃ、サンドワームが来た理由なんだけど──」
メーシャはサンディーから聞いた話(デウス訳)を3人に説明した。
サンディー目線ではただ『新たなグルメを探してここまで来ただけ』ということだったが、それまでに不穏な要素が散りばめられていた。
まず、旅立ちのキッカケはサンディーのパパママが砂漠の外にいっぱい美味しいものがあると言ったからのようだが、砂漠に適応した身体を持つサンドワームは基本的に一生を砂漠で過ごし、幼体は十分な身体の大きさに成長するまでの20年間は親と離れず狩りの練習をするのだとか。そしてサンディーはまだ14歳でその時ではない。
そうなる以前に、黒いオーラを出す怖い雰囲気の人型のバケモノとガイコツの顔のバケモノの2人組が現れて、群れの仲間が凶暴化したり行方不明にもなっていたそうだ。
そして、ここに来るまでに何度も禍々しいオーラのバケモノが襲ってきたらしい。全部食べちゃったらしいが。
● ● ●
「──つまり、ラードロによってサンドワームの群れが襲われて、何らかの実験に使われた可能性があるってことと、そこから逃すためにサンドワーム夫妻がサンディーをここへ行くよう仕向けたってカンジ? 2人組ってのはデウスいわく、邪神の幹部じゃないかって」
邪神ゴッパの軍の幹部が水面下で何かを企んでいるようだ。
「キュキュ!」
「そう言えば、サイクロプスは単純に狩りが上手くいかずにここまで来ちゃっただけって言ってました」
ヒデヨシが補足する。
「キュイッキュ!」
「ドラゴン=ラードロ1体でも傷ひとつ与えられず軍は半壊したし、騎士もひとり戦えない状態になっちまったっていうのに、まだ幹部がふたりもいるのかよ……! ジョセフィーヌ殿下の安否も確認できてないしよ」
ジーノは憤りと絶望で全身の力が抜けて座り込んでしまう。
実は、ここに来ていない四騎士のひとりは、ドラゴン=ラードロ戦で負った傷が未だに治らず戦闘行為ができなくなっているのだとか。
「キュ?」
「来たるオーク討伐戦で何か、攻略の糸口でも掴めたら良いんだが……」
ベニートが頭を抱えてしまう。
「キィッキュ」
「スメラルド卿、ルチルス卿、そうは言っても暗い話ばかりではありませんよ。何と言っても、今回はウロボロス様の勇者であるメーシャさんとヒデヨシさんに加えて、幼体とは言え砂漠のヌシであるサンドワームが仲間になったんですから」
カーミラが力強い声でふたりを元気付ける。
「キュ~!」
「……そうだな。戦う前から諦めてちゃいけないよな。すまないルーベリーテ卿」
ジーノは苦笑いを浮かべる。が、メーシャも別の意味で苦笑いしていた。
「…………サンディー? 楽しいのは分かるけど、全部に相槌しなくて良いんだよ?」
「キュ? キィ……」
サンディーは理解したのか一瞬黙ったが、何かを思い出してまた口を開いた。
「キュ! キィキュキュキキキュッキュ!」
「え、そうなんですか!?」
ヒデヨシがサンディーの言葉を聞いて目を見開いて驚く。
「ヒデヨシくん、サンディーちゃんは何って言ってたの?」
そのただ事じゃない様子に、カーミラが神妙な面持ちで訊いた。
「ここに来る直前、バケモノ……多分幹部に教えられたそうなんですけど……」
ヒデヨシはそこで深呼吸をして息を整えて再び口を開く。
「ドラゴン=ラードロの城に、ジョセフィーヌ王女がいるそうです!」
「キュッキュ!」
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