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 弁明をするならば、そのゲームはMOD導入が容易で、非公式であるもののヒーローたちの着せ替えデータが数多く配布されていた。王太子殿下に騎士服を着せてみたりなどのちょっとした着せ替えはもちろん、ファンタジー世界を生きる攻略対象者たちに現代の色んな制服を着せたり、スーツを着せたり出来る。
 あらゆるMODを導入してゲームを楽しんでいた私は、ある日ふと思いついてしまった。
 前世の私はプログラマーで、その日は十連勤の徹夜明けだった。
 満員電車で体を前から後ろから右から左から押しつぶされながら、思ったのだ。

 服など無粋。
 ヒーローたちの裸が見たい。

 ゲームは全年齢だったから、もちろん裸のMODデータなんて誰も配布していない。
 だが無いなら作ればいいのだ。
 思いついてしまったらダメだった。
 出来ると思ったらダメだった。
 私はその日から寝食を惜しんで、ヒーローたちの裸の着せ替えデータを作り始めた。

 男性の体や、筋肉の本を買いそろえ、男性の肉体についての研究を重ねた。
 自らもまたジムに通って筋肉をつけ、実際の筋肉の付き方、硬さ、質感に触れることも忘れなかった。全てはヒーローたちの裸体のため。裸体ヒーローたちでゲームをプレイするため。
 これも弁明だけれど……神に誓って、データを世間に配布するつもりはなかった。

 個人で楽しむだけのつもりだった。
 股間の大切な場所にもモザイク処理をかけた。

 けれど神は、そんな私の所業――全年齢ゲームのキャラを裸に剥くという行為を許さなかったのだろうと思う。
 天罰としか思えない……裸体のMODデータが完成したタイミングで、私は仕事と趣味の無理がたたり、過労死してしまったのだった。
 パソコンの前に座ってマウスを握り、ゲームのスタートボタンをクリックしようとした時に意識が遠のき――その瞬間に願ったことは今でもはっきりと覚えている。


 死ぬ前に一度でいい、全裸データでゲームをプレイしてみたかった……。


 神の慈悲か、自身の執念か……私は最期の願いを叶え、全裸データを反映させた世界に転生したのではないか。……悪役令嬢だけど。
 夢でも見ているのではないか? とも思う。 
 だけど私には、ティリティア・アルマリエとして十八歳まで生きてきた記憶がある。
 侯爵令嬢として生まれ、未来の王妃として厳しい教育を受け、誇りをもって生きてきた。
 分かるのだ……これは夢なんかじゃなくて、いまの私が生きるべき現実だって。

 私はさっと両手で顔を覆うと、ぱっと両手の指を開いて視界をオープンにした。
 目の前には全裸の王太子殿下。
 私は指の付け根の部分で殿下の股間を隠しつつ、その裸体を観察した。
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