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〈6〉あなたの気持ちを教えて
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瞬間、私は持っていたバックを落としてしまった。
体に力が入らなかった。
ガタッ
通路からの音に、驚き二人が振り向く。
優也と目が合う。
優也は、綾にいきなりくちづけられた、その驚き、そしてそれを私がみてしまったことについて、ショックを受けているようだった。
「どうしたの?優也。いつも、ここで土日は二人きりじゃない。」
優也にくちづけた彼女は、悪びれることなくそう言うと、研究室の扉を開け、私に笑って見せた。
私がその場から動けずにいると、
「いいかげんにしろよっ!?綾、お前っ!!」
優也は、まるで汚いものに触れた後のようにその唇を拭い、それでもなお自分に歩みより触れようとしてきた彼女を突き飛ばした。
「っきゃ!」
「触るな!!俺が土日も返上で働いてるのは、莉沙と二人で過ごす、まとまった休みが欲しいからだ!!それがお前と一緒でも良いと上に承諾したのは、お前が、同僚のあいつに酷い振られ方をした挙げ句に、手柄まで横取りされたのを知ってるから、新しい研究に協力してやろうと思っただけだ!!」
優也に突き飛ばされ、彼女はよろめいたが優也はそんな彼女に手を貸そうとはしなかった。
彼女はそのまま前に倒れ込み、手を着いた。
彼女を見つめる優也の瞳は冷たかった。
彼女は泣いていた。
「っ…く。だって…っ!勘違いするじゃないっ!…私を、まだ好きなんじゃないかって…っ!何で、その女の方が良いの!?私の何がいけないの!!」
「多分、言ってもわからないよ…。」
優也は、何かを諦めたような口調で静かにそう、彼女に告げると、先程から身動きも取れずに扉の前に立ちつくし、二人をみていることしか出来なかった私に
「莉沙、傷つけてごめん。もう、終わったから。一緒に帰ろう?」
そう、優也、あなたが傷ついているような瞳で言うから。
私は、頷くしかできない。
二人、しばらく無言で通路を歩くと、先程の警備員さんに会う。
「ああ、場所、わかっんだね。」
彼は私に笑いかけると優也に。
「優也さんも。お仕事、今日は終わりましたか。休日返上でお疲れ様です。お友達さんと飲みですか。可愛いらしいお友達で。」
優也は憮然とした表情で
「これから、デートなんですよ。彼女と。それじゃ、お疲れ様です。」
「ちょっと優也!…すみませんっ!今日はありがとうございました。」
私はそう言って優也に手を引かれその場を後にした。
建物を出て。駅まで歩きながら、私は
「どうしてあんな態度とるの?良い人だったよ?」
「莉沙に気があった、あいつ。」
優也がぼそりと言った。
途端、私の感情が溢れた。
「…どうしてぇ…。どうしてそんなこと言うの…。私が今日、どんな思いだったか…。」
涙が溢れて止まらない。
「…ごめん。悪かった。でもあいつ…。」
「…優也なんて、綾さんにキスされてたじゃないっ。」
「…傷つけてごめん。綾と二人きりになること意識してなくて。悪かった…。」
「綾、綾、って何であんなに親しそうなの?いくら昔付き合ってたからって…っ!」
「莉沙には、話しておくべきだったんだけど、綾とは同僚以前に幼馴染みだったんだ。まだ、本当に小さな頃から…。」
優也はどこか寂しそうだった。
「だから、別れてからも、俺は幼馴染みに戻りたかったんだけど…。もう、無理なんだな…。」
それでも、私の涙を懸命に拭い、優也が言う。
「いまの俺の大切な人は、莉沙だけだから。他の誰より、じゃない。俺にも莉沙だけ。なんだ。」
優也が私の瞳を見つめる。
「莉沙だけ、だよ。」
「…優也…。」
私の瞳に、自然と熱がともる。
優也は照れくさそうに笑うと、私の唇を軽く啄み、
「ここでは、これで我慢する。辛いけど。本当は、めちゃくちゃに莉沙を抱きたい。」
そう私に囁いた。
私は真っ赤になりうつむくしかできなきなかった。
体に力が入らなかった。
ガタッ
通路からの音に、驚き二人が振り向く。
優也と目が合う。
優也は、綾にいきなりくちづけられた、その驚き、そしてそれを私がみてしまったことについて、ショックを受けているようだった。
「どうしたの?優也。いつも、ここで土日は二人きりじゃない。」
優也にくちづけた彼女は、悪びれることなくそう言うと、研究室の扉を開け、私に笑って見せた。
私がその場から動けずにいると、
「いいかげんにしろよっ!?綾、お前っ!!」
優也は、まるで汚いものに触れた後のようにその唇を拭い、それでもなお自分に歩みより触れようとしてきた彼女を突き飛ばした。
「っきゃ!」
「触るな!!俺が土日も返上で働いてるのは、莉沙と二人で過ごす、まとまった休みが欲しいからだ!!それがお前と一緒でも良いと上に承諾したのは、お前が、同僚のあいつに酷い振られ方をした挙げ句に、手柄まで横取りされたのを知ってるから、新しい研究に協力してやろうと思っただけだ!!」
優也に突き飛ばされ、彼女はよろめいたが優也はそんな彼女に手を貸そうとはしなかった。
彼女はそのまま前に倒れ込み、手を着いた。
彼女を見つめる優也の瞳は冷たかった。
彼女は泣いていた。
「っ…く。だって…っ!勘違いするじゃないっ!…私を、まだ好きなんじゃないかって…っ!何で、その女の方が良いの!?私の何がいけないの!!」
「多分、言ってもわからないよ…。」
優也は、何かを諦めたような口調で静かにそう、彼女に告げると、先程から身動きも取れずに扉の前に立ちつくし、二人をみていることしか出来なかった私に
「莉沙、傷つけてごめん。もう、終わったから。一緒に帰ろう?」
そう、優也、あなたが傷ついているような瞳で言うから。
私は、頷くしかできない。
二人、しばらく無言で通路を歩くと、先程の警備員さんに会う。
「ああ、場所、わかっんだね。」
彼は私に笑いかけると優也に。
「優也さんも。お仕事、今日は終わりましたか。休日返上でお疲れ様です。お友達さんと飲みですか。可愛いらしいお友達で。」
優也は憮然とした表情で
「これから、デートなんですよ。彼女と。それじゃ、お疲れ様です。」
「ちょっと優也!…すみませんっ!今日はありがとうございました。」
私はそう言って優也に手を引かれその場を後にした。
建物を出て。駅まで歩きながら、私は
「どうしてあんな態度とるの?良い人だったよ?」
「莉沙に気があった、あいつ。」
優也がぼそりと言った。
途端、私の感情が溢れた。
「…どうしてぇ…。どうしてそんなこと言うの…。私が今日、どんな思いだったか…。」
涙が溢れて止まらない。
「…ごめん。悪かった。でもあいつ…。」
「…優也なんて、綾さんにキスされてたじゃないっ。」
「…傷つけてごめん。綾と二人きりになること意識してなくて。悪かった…。」
「綾、綾、って何であんなに親しそうなの?いくら昔付き合ってたからって…っ!」
「莉沙には、話しておくべきだったんだけど、綾とは同僚以前に幼馴染みだったんだ。まだ、本当に小さな頃から…。」
優也はどこか寂しそうだった。
「だから、別れてからも、俺は幼馴染みに戻りたかったんだけど…。もう、無理なんだな…。」
それでも、私の涙を懸命に拭い、優也が言う。
「いまの俺の大切な人は、莉沙だけだから。他の誰より、じゃない。俺にも莉沙だけ。なんだ。」
優也が私の瞳を見つめる。
「莉沙だけ、だよ。」
「…優也…。」
私の瞳に、自然と熱がともる。
優也は照れくさそうに笑うと、私の唇を軽く啄み、
「ここでは、これで我慢する。辛いけど。本当は、めちゃくちゃに莉沙を抱きたい。」
そう私に囁いた。
私は真っ赤になりうつむくしかできなきなかった。
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