上 下
28 / 30

文化祭なんてどうせメイド喫茶かお化け屋敷でしょうが?

しおりを挟む
 私はありとあらゆる少女漫画やBL漫画特に学園モノを読んできた。
 だからこの季節、クラスで文化祭の出店を何にするかでクラスは話し合っていた。

 ふっ、どうせ定番のメイド喫茶かお化け屋敷でしょうね。そしてメイド服を着たこの私がイケメンと他のクラスを周ったりして青春が始まるのよね!

 と出店の出し物を決めるクラスの皆の様子を見て想像する。

 魚住が私のメイド服を見て普段と違う様子に照れたところまで余裕で想像できたんだけど、

 その時悲劇は起きた。

「じゃあうちのクラスの出店は坊主喫茶に決まりました。よろしくお願いします!」
 と
 とんでもないことを言い出した!!

 ちょっと待って!?
 あんまり聞いてなかったけど、
 ぼぼぼ、坊主ってあの坊主よね?
 お坊さん!?喫茶!?なんじゃそら!?
 亜種にもほどがあるでしょ!!

「えー、近年、普通のメイド喫茶だと客の何人かが女子にセクハラする問題があり、普通のメイド喫茶を出すのは辞めたので今年は女子も男子も坊主でお願いします。

 桂はシフト制で交換しますが、マイ坊主カツラが欲しい人はトンキで買ってきといてください。マイ坊主カツラには予算はおりません」
 と委員長が言い放つ。
 いや、これ女子も坊主カツラ被るって何よ!?お笑いじゃない!!

 基本女子は女子が被ったカツラを使い回すようだ。男子も同様だが、

「きゃー、魚住くんの使った坊主カツラ次に使いた~い!!」
 と女子達は魚住坊主カツラを所望のようだ。

 いや、待って、魚住が坊主になるところまではいいんか!?あんたら憧れの王子様が坊主カツラ被ってても好きとかなかなかだわ。

 女子グループも別れて早速坊さんの袈裟みたいなヤツの採寸を計り始めた。
 私の番になり、女子達が手際よく計った。

 本当に皆坊主に納得しているのがもうおかしい。ここ、異世界じゃ無いわよね!?

 坊主喫茶なので渋い湯飲み茶碗や和菓子がメニューの中心となっている。オブジェに何故か変な仏像まで持ってきた奴がいる。


 BGMが般若心経で、うどんや蕎麦を注文したお客さんには海苔で坊主がハートを作ると言う訳のわからないサービスをする事になった。

「お客さんへの呪文はお経風に棒読みで『オイシクナアレ~ナンマイダー』とかでよろしくお願いします」
 と副委員長が無茶苦茶を言うが別に反対者がいない!
 いやおかしいだろ!突っ込みたいが皆黙っているから言えない!!

 そもそも般若心経と南無阿弥陀仏って宗派違わない!?いいの!?そんなニワカで!?そりゃたかが文化祭だからそんなこだわらなくてもいいけど、仮にもし万が一本物の住職さんが客に来ていたらどうすんのよ!?怒られるわよ!!?

 と私は脳内で突っ込んでいたけど誰も何も言わないからもう放っておいてとりあえず準備を始める事になった。

 とりあえず飾り用の花を黙々と教室の隅っこで1人で作っていると魚住達の陽キャ達は盛り上がっており楽しそうに
 絵の具で看板作りや畳を運んできて

「雰囲気あるしその辺に百人一首とか並べとく?」

「いいね!」

「きゃー魚住くん流石ー!!」

 けっ。


 そうこうしているうちに何日か過ぎてようやく坊主衣装ができてきた。
 魚住達が早速着ている。
 しかし意外な事に坊主でもイケメンだからか他の男子達がジャガイモ過ぎるのかは知らないが魚住は案外坊主でもカッコよく決まっていた!!

 それに女子達はスマホ連写で撮りまくり

「きゃー!魚住くんお坊さんバージョンでも全然いける!!」

「かっこいーー!!」

「いやーー!素敵ーーー!!」
 と黄色い声が飛んだ。
 しかも偵察に来た他のクラスの生ゴミ、恵比寿柚乃も隙間からハアハア言いながらスマホを連写していた。キモッ!

 花づくりが終わると当日のくじ引きで私は午後からのシフトで坊主の格好をしながら校内をチラシを持ち練り歩く恥ずかしい客引きの役になってしまった!せめて接客要員が良かった!!

 校内中に笑われながら見られるじゃん!!しかも郊外から来てる客にも!!柚乃にもおそらく見られて爆笑されるだろう。こう言うのは男子がやれよ!!

 アパートに帰ってシクシク泣いてると魚住が

「お嬢様、お祖父様が当日お嬢様の文化祭観にこられるそうです!良かったですね!」

「ぎ、ぎゃーー!!な、なんでお祖父様がっ!!バカなの!?なんでよ!!
 連絡したの!?」

「はい、喜んでましたよ。お祭り好きですしね、お祖父様」

 ひいいいいい!!あんのじじい!!来んなあああ!!身内にも坊主姿見られるなんて嫌過ぎる!

「いや、上手くいけば逃げられるわね!私チラシ係だし!お祖父様が帰るまで隠れ切ってみせるわ!!」
 と私は決めた!

「いや、美玖様がチラシ係だと伝えてるから黒服たち総出で探し出し、写真撮ると張り切っていました。隠れても無駄だと思う」

「なんでよっ!!くっそ!あのじじい!逃走中かよ!!」

 と悔しくなる私!どうせなら賞金つけろよ!!

「俺もお嬢様も午前は暇だから一応一緒に行動するぞ」

「えっ!?」
 な、なんで急に!?いつもなら放っておくのに!?

「文化祭は郊外から来る客が多い。お嬢様を暗殺しようとする闇のものが紛れてくるかもしれないからなぁ。小檜山財閥の娘を誘拐とかあり得るから」

 ええっ!?

「それを言うなら私午後から1人でチラシ配りなんだけど、坊主の格好して」
 と言うと魚住は

「それなら大丈夫だ。まさか小檜山財閥のお嬢様が坊主のアホみたいな格好してチラシ配りしてるとか誘拐犯も思わないだろう!
 坊主カモフラ作戦だ。他にもチラシ係は何人かいるし、パッと見辺りのお嬢様坊主を引く可能性も下がる。

 黒服たちもその為に全力でお嬢様を探すだろうし」

「お嬢様坊主ってなんかやだわ」

「因みに高清水くんのところは【優しいお化け屋敷】をするらしい」

「いや、なんなのその【優しいお化け屋敷】って!!?めちゃくちゃ気になってきた!!」

「まぁ当日のお楽しみですな」
 と魚住はパンフを見て笑った。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

秘密部 〜人々のひみつ〜

ベアりんぐ
ライト文芸
ただひたすらに過ぎてゆく日常の中で、ある出会いが、ある言葉が、いままで見てきた世界を、変えることがある。ある日一つのミスから生まれた出会いから、変な部活動に入ることになり?………ただ漠然と生きていた高校生、相葉真也の「普通」の日常が変わっていく!!非日常系日常物語、開幕です。 01

ボイス~常識外れの三人~

Yamato
ライト文芸
29歳の山咲 伸一と30歳の下田 晴美と同級生の尾美 悦子 会社の社員とアルバイト。 北海道の田舎から上京した伸一。 東京生まれで中小企業の社長の娘 晴美。 同じく東京生まれで美人で、スタイルのよい悦子。 伸一は、甲斐性持ち男気溢れる凡庸な風貌。 晴美は、派手で美しい外見で勝気。 悦子はモデルのような顔とスタイルで、遊んでる男は多数いる。 伸一の勤める会社にアルバイトとして入ってきた二人。 晴美は伸一と東京駅でケンカした相手。 最悪な出会いで嫌悪感しかなかった。 しかし、友人の尾美 悦子は伸一に興味を抱く。 それまで遊んでいた悦子は、伸一によって初めて自分が求めていた男性だと知りのめり込む。 一方で、晴美は遊び人である影山 時弘に引っ掛かり、身体だけでなく心もボロボロにされた。 悦子は、晴美をなんとか救おうと試みるが時弘の巧みな話術で挫折する。 伸一の手助けを借りて、なんとか引き離したが晴美は今度は伸一に心を寄せるようになる。 それを知った悦子は晴美と敵対するようになり、伸一の傍を離れないようになった。 絶対に譲らない二人。しかし、どこかで悲しむ心もあった。 どちらかに決めてほしい二人の問い詰めに、伸一は人を愛せない過去の事情により答えられないと話す。 それを知った悦子は驚きの提案を二人にする。 三人の想いはどうなるのか?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

タイムトラベル同好会

小松広和
ライト文芸
とある有名私立高校にあるタイムトラベル同好会。その名の通りタイムマシンを制作して過去に行くのが目的のクラブだ。だが、なぜか誰も俺のこの壮大なる夢を理解する者がいない。あえて言えば幼なじみの胡桃が付き合ってくれるくらいか。あっ、いやこれは彼女として付き合うという意味では決してない。胡桃はただの幼なじみだ。誤解をしないようにしてくれ。俺と胡桃の平凡な日常のはずが突然・・・・。 気になる方はぜひ読んでみてください。SFっぽい恋愛っぽいストーリーです。よろしくお願いします。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

雪町フォトグラフ

涼雨 零音(すずさめ れいん)
ライト文芸
北海道上川郡東川町で暮らす高校生の深雪(みゆき)が写真甲子園の本戦出場を目指して奮闘する物語。 メンバーを集めるのに奔走し、写真の腕を磨くのに精進し、数々の問題に直面し、そのたびに沸き上がる名前のわからない感情に翻弄されながら成長していく姿を瑞々しく描いた青春小説。 ※表紙の絵は画家の勅使河原 優さん(@M4Teshigawara)に描いていただきました。

処理中です...