妖恋模様

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美少年の正体

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5人前の食事をペロリと食べた私を見て火口くんがもはやモアイみたいな顔になっている。

「…凄っ!凄い食欲ですね?いつもこんな食事を?」

「うん!いくら食べても太らないんだ!いいでしょ!!」

「嘘やろ!?」
と思わず口にした関西弁が面白い。

「ああ、関西弁使って良いよ!そっちのが慣れてるんでしょ?」

「え…いやでも…」

「遠慮すんなよーー!自分の家だと思ってさー寛いでー!!」
とにこにこした。

「はぁ、ほんならまぁ…」
ともそもそと食事をした。
それからこの家のルールを決める。

とりあえずプライベートにはお互い干渉しない事と食事や家事は火口くん担当でこれ以上てんやものやハウスクリーニングやらは呼ばなくて良いと念を押された。

ご飯は一緒に食べる方針で。リビングも好きに使っても良い。

「あれ?火口くんの担当多くない?なんか悪いなぁ」

「ええんです!!なんか心配になるしこれで!」
と言う。何故か必死だ。

「そう?なら助かる。家賃はいらないよ。むしろ私が払うべき」

「いえ!そこはきっちり!!払わせてもらいます!!それに奈良輪チーフは俺に払わなくてもええです!こんな家に住まわせてもらえるんやから!」
なんて良い子だろう!前の家政婦はきっちり金を搾り取って盗んで逃げたのに!

「うっ!わかった!!それじゃ、今日からよろしく!」
と握手し、火口くんは何か疲れたように笑った。


同棲してから数日経つが相変わらずこの人の食事量は凄い。平気で10杯くらいご飯をおかわりするし。

家事は普通にできないらしく散乱した服がたまにリビングに落ちていて、それが下着であわあわした。

しかも食事はたまに俺の顔を見てくる。

「顔がいい!食が進む!!」
と言いつつガツガツ食う。どこにそんな収まるねん!と突っ込みたいが我慢!
耳と尻尾はなんとしても隠さねば。
それでもプライベートの与えられた部屋に鍵をかけて寛いでポワンと狐姿に変わってしまう。

はあ…。

そんな生活にも少し慣れてきた朝に異臭がして俺は起きた。
焦げ臭い!!

急いで身支度をしてキッチンに行くと黒焦げのフライパンに黒い焦げ跡と暗くて恐ろしいオムレツらしきものがあった。

「ご、ごめん…なんか…火口くんがいつも簡単に作ってるから…私もできそうな気がして……でも…ダメだった…あはは…」

「……」
そう言うと奈良輪チーフがそれをゴミ箱へと捨てようとしたので思わず手首を掴み止めてしまう。

腕は細く簡単に折れてしまいそうだ。いつもあんなにたくさん食べてるのに。

「どど、とうしたの?」

「あ、いや…少し味見を」

「正気!?」
とチーフが驚く。

「折角作ったんだし一口食べてみます」
と言い泣きそうなチーフの頭を少し撫でた。

とは言え、何故捨てなかった俺!!
と言うように目の前の黒オムレツが異臭を放ちながらこっちを見ているようだ。

「胃薬は用意したよ?」
とテーブルの上に胃薬とお水をスタンバイしながらチーフが言う。

大丈夫。たかが焦げたオムレツだ!
何とか気合を入れて食べれば!この人だって一生懸命作ったんだろうし。
その証拠に奈良輪チーフの指に沢山の絆創膏がある。
俺はにこりと笑いいざ!とスプーンを黒い山に入れてすくう。

あっ、ご飯も黒い。異臭が何か違う。一体何の試練なんだ?でも頑張って口に入れた。

するとバチンと脳天を刺激され舌が痺れ驚き震え俺は目の前が暗くなる…。
や…

「ヤバイ……」
意識を保てな…。

ボワンと煙に包まれたような感じがして俺は完全に気絶してしまった!



「は!?」
倒れた火口くんが何故か目の前で犬になった。白金の艶々フワフワの可愛らしい犬だ!!
こんなペット欲しかった!!

いやいやいやいや!
違うでしょ?
人間が犬になったんだよ?目の前で。
しかも私の作った黒オムレツを食べて。

「し、死んだ??」
火口くんが犬であれなんであれピクリとも動かないのでヤバいと思った!!
しかし、このまま獣医に連れて行く!?
で、でももし途中で人間に戻ったらどうしよう?

私はどうしようと慌てた。
そっと毛並みを触りお腹をさする。
どうしようどうしよう!

「し、死んじゃダメ!!」
するとビクンと動きカハッと物体を吐き出した。

それから虚な赤い目でこちらを見て固まる。

「ひ、火口くん?」

「…………」
ガタガタと怯え出した。
なんだかとても可哀想になり私はそのまま火口くんを抱き上げて撫でた。

「よしよし、大丈夫だよ。生きてて良かった」
と言うと火口くんが

「…チーフ…お、俺…俺は…」

「びっくりしたー。火口くん…ワンちゃんだだたのねー」
と言うとついに突っ込まれた。

「いや!犬ちゃうわ!狐や!!」
と。
しかしその後人間の姿に戻った。耳と尻尾がしっかりと生えた私得でしかない可愛くて美しい生き物がそこにいた。

「…俺…人間やないんです………ごめんなさい…ごめんなさい…お、俺…で、出ていきます…」
と泣きそうになる。

「なんで?そしたら私飢死しちゃうよ!もう火口くんのお料理しか口に合わない!!」
と言うと彼は怯えて

「でも…俺は妖やし…怖ないの?」

「…?なんで?あんな可愛いワンちゃんなら歓迎だよ?モフモフできるし!」
するとキョトンとする。

「い、言わないんですか?俺…人間やないのに!」

「言うって誰に?」

「……なんやあんた…ほんまおかしい…」
と火口くんは安堵して耳と尻尾が引っ込んだ。

「……ここにいてもええの?」
と言うので私は頭を下げた。

「私の目の保養とモフモフの為に是非!後、お料理とかも!!あ、さっきは本当にごめんなさい!料理は封印したのについ、いつも作ってくれるから私でも火口くんを喜ばせたらって…でもやっぱり無理だったよ…今度高級レストランに連れてくから!」

「い、いや!ええですもう!だ、黙っててくれるんやったらもうええから!!」
と火口くんは慌てた。

「うん!もちろん言わないよ!でも驚いたな。妖?ってお話の中とかの存在かと思ってた!!凄いね!!他にもいるの?」

「……俺らみたいなのは人間に隠れて混じって生きとる…。見つかったら…どうなるか…」

「隠れて…か。大変なんだねー。でもなんか凄いよね。他の妖にも会ってみたいないつか」
と言うと火口くんは私をジッと赤い目で見つめた。

そ、そんな見つめられると照れちゃう!!

「ありがとう…いつか…奈良輪チーフ……凛花さんならきっと会えるわ……」
と言うと火口くんは美少年スマイルを繰り出しドキドキと胸が高鳴った。

「はううう!!」
とつい変な声を出してしまい火口くんが

「ど、どうしたんです?」
と心配したのだった。

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