上 下
5 / 20

14歳と16歳②

しおりを挟む
そうしてお義兄様が学園に戻る前日、私は言葉通り朝からお義兄様にべったりされた。
足はだいぶ良くなったのか膝に乗せられ

「やった!膝に乗せれた!!」
と無邪気に喜んでいたし、お義兄様に服もこれを着るようにと用意されたものを着た。蒼いドレスだ。

「可愛いね、僕のお人形さんアリス…。そうだリボンも結ばないと…」
と頭にまた蒼いリボンを付けられた。

「完成!とても可愛いね!!」
と言うお義兄様は嬉しがっている子供みたいだ。

「お義兄様…ありがとうございます」
そい言うしか無い。刺激してはダメ。でも…

「お義兄様…お父様のお墓には寄って行かないんですか?戻る前に」
帰ってきてから私と過ごしていたお義兄様がピクっとした。

「……そうだね…忘れてた…」

「え!?」
お父様の事を?どうして…あんなに良くしてくれたのに忘れてたって!?やはり殺したから!!?自分が毒を盛ったから!!?
急に憎しみが湧いてきた。酷いわ!!お父様が可哀想じゃない!!

「アリスどうしたの?」
よくもどうしたのなんて聞けるわね!!
しかしお義兄様の次の言葉で私は唖然とする。

「ようやくお義父様を殺した犯人わかったよ?ずっとジョルジュと調べてたんだ」
そう言ったのに私は目を見開いた。

「え!?……お義兄様がお父様を殺したんじゃ…」
するとキョトンとした。

「?僕が?何で?」

「だって、私に縁談が来るのを嫌がってお父様を邪魔に思って毒を盛って…」
と言うとブンブン首を振る。

「違うよアリス。僕はお義父様を殺してない。犯人は別にいる。君は思い違いをしてる。お義父様をやったのはメイドのラミナ・ル・デーリヒだよ。あれの親族に君に婚約を申し入れてお義父様が断ったことから腹いせに殺害し僕に罪を被せようとした。

そうだアリス、君、お義父様のメッセージを見たんでしょ?ヨレヨレの文字で書かれた…。あれね、偽物だよ。あれもラミナの工作だよ。彼女の部屋のゴミから練習したヨレヨレの文字で書いた紙が見つかった。メッセージの文字と同じものさ」

「そ、そんな!!」
私は驚く。ラミナはあの日確かに

『このメッセージを旦那様がやっと書いて…』
喋れもしないお父様をいい事に私はすっかり信じていたと言うの?

「ラミナの家は王宮薬師の家系で伯爵家だそうだよ。有事の際に使える危険な薬草も自分の家の温室で育ててるみたいだった。調べたらその毒草と盛られた毒が一致したんだ。死ななくても全身麻痺症状が残り起き上がれない。そのうちに弱り死ぬ…そういう毒なんだ」

「どうして私に教えてくれなかったのですか!?」

「確証が持てるまでアリスを不安にさせたくなかったしアリスを守るためにペンダントをあげて噂を流した。アリスに触れたら呪われると…。アリスの食事はそれから毎回毒が入ってないか調べる事にジョルジュに頼んだ。数回に一度入ってた。

僕は毎週君に変わりないか手紙を書いた。体調は大丈夫だよね?」
と聞かれ私はお義兄様の手紙も怖いと思っていた事を恥じた。

全部誤解だったの?いや、でもこ、この髪は??
流石にないでしょ!?するとお義兄様は木箱を見てため息を吐く。

「迷惑?なら捨てていいよ…。嫌われるなら…。というか僕なんて嫌われて当たり前。ふふ。ごめんね。困らせるつもりはないんだよ……。婚約だって僕の醜い嫉妬で今まで蹴散らしてきたせいでアリスが狙われた。アリスが死んじゃったら何にもならないのに…。

ごめんね、アリス。もう犯人は見つけたからこれからラミナもその親族も罰せられると思うよ。僕が余計な事をしたせいで命を狙われてごめんね…」
私を膝から下ろすとお義兄様は首につけられた石を外した。

「これで自由だよ。僕の愛しいお人形さん…。好きにこれから好きな人を作って幸せになってね」
そう言って悲しそうに口元を歪めた。
そして部屋から私を追い出した。

「お義兄様!?」
すると扉の向こうでお義兄様は叫んだ。

「ごめん…ごめんなさい!!ごめんなさい!!僕は気持ち悪いんだ!!気持ち悪いんだ!もう近付かないで!!僕はもうおかしいんだ!!

傷つけたくないから離れて嫌って!!」
そう言うと静かに泣き出す声がした。

「お義兄様!!誰もお義兄様を気持ち悪いだなんて……」

「思ってるよ…他の人もペンダントの事を信じて僕の事狂気の男として見ていた。君も。僕でさえそう思う。

ふふ、大丈夫だよ…アリス…。ちゃんとお義兄様がちゃんとした人を婚約者に推薦するからさ」

「お義兄様私は…」

「謝らなくていいから行け!!」
そう怒鳴られ私は扉から離れて行くしか無かった。

お父様…。私…間違ってた?どこで?疑問を持って信じてあげられなかった。お義兄様は一人ぼっちだと言った。子供の頃に虐待で植え付けられ確かに性格は怖がりになり私を気に入り執着はしたけど…ずっと影から私の事を守ってくださってたなんて知らなかった。

翌日お義兄様は私に挨拶した。

「じゃあね、アリス。楽しい休暇だったよ」
そう言い、いつもの挨拶のキスはせずチラリと髪の隙間から見える蒼い目は光を失ったように曇っているように見えた。

何故か心が物凄く痛みだす。泣き出したいような気持ちだ。お義兄様の馬車は遠くなり学園に戻ったお義兄様からはそれから手紙らしきものは届かなくなり冬季休暇になってもお義兄様は寮から戻らなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪戯ばかりを私にする幼なじみは、周りを巻き込んでいるのに家族は信じてくれず、うんざりしていたら婚約者が仕返しをしてくれました

珠宮さくら
恋愛
幼なじみの悪戯でアストランティアは、酷い目にあわされてばかりいた。それなのに家族は信じてくれず、イライラが募っていたアストランティアだったが、ようやく理解してくれる者が現れ、それどころか仕返しまでしてくれることとなったのだが……。 ※全3話。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈ 学園イチの嫌われ者が総愛される話。 嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。

フリー朗読台本

𝐒𝐀𝐘𝐀𝐊𝐀
エッセイ・ノンフィクション
これは、私の心に留まる言葉たち。 この言葉たちを、どうかあなたの声で生かしてあげて。 「誰かの心に残る朗読台本を。」 あなたの朗読が、たくさんの人の心に届きますように☽・:* この台本は、フリー朗読台本となっております。 商用等、ご自由にお使いください。 Twitter : history_kokolo アイコン : 牛様 ※こちらは有償依頼となります。 無断転載禁止です。

【完結済】呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。

まりぃべる
恋愛
異世界に来てしまった女性。自分の身に起きた事が良く分からないと驚きながらも王宮内の問題を解決しながら前向きに生きていく話。 その内に未知なる力が…? 完結しました。 初めての作品です。拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。 これでも一生懸命書いてますので、誹謗中傷はお止めいただけると幸いです。

“代わりに結婚しておいて”…と姉が手紙を残して家出しました。初夜もですか?!

みみぢあん
恋愛
ビオレータの姉は、子供の頃からソールズ伯爵クロードと婚約していた。 結婚直前に姉は、妹のビオレータに“結婚しておいて”と手紙を残して逃げ出した。 妹のビオレータは、家族と姉の婚約者クロードのために、姉が帰ってくるまでの身代わりとなることにした。 …初夜になっても姉は戻らず… ビオレータは姉の夫となったクロードを寝室で待つうちに……?!

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます

はな
BL
佐藤雪には恋人がいる。だが、その恋人はどうやら周りに女の子がたくさんいるハーレム状態らしい…どうにか、自分だけを見てくれるように頑張る雪。 果たして恋人とはどうなるのか? 主人公 佐藤雪…高校2年生  攻め1 西山慎二…高校2年生 攻め2 七瀬亮…高校2年生 攻め3 西山健斗…中学2年生 初めて書いた作品です!誤字脱字も沢山あるので教えてくれると助かります!

処理中です...