上 下
3 / 20

13歳と15歳

しおりを挟む
それから3年経った。
お義兄様はだいぶ勉強やらマナーを頑張っていた。大人にも慣れてきたみたい。

でも私にはべったりだ。私のあげたクマは初めて貰ったプレゼントとして綺麗に飾られているし!
私の事をとても気に入ってくれたのか膝に乗せ可愛がられた。心なしか抱きしめる力が強くない?

レイモンドお義兄様は次の年に都市部の学園に3年間入寮する事になっている。

今日も温室で私はお義兄様とお茶をしているが膝に乗せられ後ろから抱きしめられているのだ。
何故かうっとりした顔のお義兄様。

「お義兄様?もう15ですわよ?成人も近いのに妹離れしないといけませんわ」
と言うとお義兄様は

「妹?………ああそうだね。僕の可愛いお人形さん…」
と言うので

「私はお人形ではありませんのよ?」
と言うと虚な目になり

「…お人形さんも僕のこと捨てるの?僕のこと嫌いなの?」
と言うから私は慌てる。ダメだ。お義兄様の心の傷が開いちゃう!
仕方ないので私は

「うう、そ、そんなことはありませんわ!私お義兄様を捨てたり嫌ったりしませんわよ?」
と言うとお義兄様は長い前髪の下の口元を緩め

「ふふふ…ありがとうアリス…。僕の可愛いお人形さん。大好き。大好きだよ!一生離れないでね!」
なんて言われ頰にキスをされるのだ。
少々やり過ぎだわと思いつつも心に傷を負ったり身体にも傷が残っているお義兄様をこれ以上傷付けたくなく私は大人しくお人形さんになった。
まぁ、来年学園に行けばお義兄様にもきっと良い人が見つかるかもしれないわ。

お義兄様は最近お父様が持ってきた婚約者候補の姿絵をいくつか渡されていた。私への溺愛を少し心配しているのだろう。
しかしお義兄様は頑なに断っていた。

「嫌だ…僕は一人でいい…!!」

「そうは言ってももう15歳で成人も手前だろう?婚約相手は見つけなきゃダメだよ?レイモンドはうちの跡取りだろう?」
と言うとお義兄様は

「お義父様には感謝しております…。でも婚約者は僕が心に決めた人がいいのです!」
と言うのでお父様は

「誰かそんな人がいるのかい?パーティーで知り合った?」
と聞くと首を振り照れながら

「……僕のお人形さんです!!アリスです!」
と言うのでお父様は頭を抱えて

「レイモンド…ダメだよ…。アリスはお前の妹なんだ…アリスにも別の婚約者を…」
と言うとお義兄様は睨んだ。

「……やだ…僕からまた取り上げるの!!?僕には何も無いのに!!また!!何もかも取り上げて…鞭で打つんだ!!腫れて血が出て虫が来て!!笑われる!!怖い!!暗い!!辞めてーーー!!!」
やばい!お義兄様のいつもの発作だ!!
こうなるとお父様も

「レイモンド…しっかりなさい!!レイモンド!!大丈夫かい!?安心しなさい!お前を苦しめるものなんかない!!」

「はあっ!!はあっっ!ううう…げえ…!…はぁはぁ!!ふううあう!!」
とお義兄様は息を整え始めた。身体からは滝みたいに汗が出ている。お義兄様に呪いのように染み付いた過去は消えてなかった。
お義兄様は毎週カウンセリングのようなものを受けているけどそれでも私が離れたりすると不安になるようになってしまったのだ。

「こんなんで入寮できるのかしら?」
と不安だ。
私はいつまでお人形さんで居ればいいのかしら?
それでもお義兄様は勉強中は物凄い集中を見せた。

終わったら私と遊べると言うのも有るけど、お義兄様は侯爵家に来た頃は最低限の教養しかなく、伯爵家では本さえ自由に読ませて貰えなかったらしい。侯爵家に来てからは綺麗な表紙の本を片っ端から読んでいる事が多いし近頃はちゃんと跡取りの勉強もしているみたい。
家庭教師にもちゃんとマナーも教わった。吸収が良くお義兄様は直ぐに覚えた。

終わると私の所へきてまたべったりだ。
私は婚約の話が出るとお義兄様が泣くので断り続けたり夜会などでもお義兄様は常に隣にいてダンスを申し込まれても人が変わったみたいに

「妹は気分が悪いので」
と平気で嘘をつき肩を痛いくらいに掴まれ周りを牽制するのだ。ドレスもお義兄様が必ず蒼いドレスを贈った。
お父様が注意すると発作でおかしくなるしどうにもならなかった。

お父様は

「まぁ、レイモンドか入寮したらその間にアリスの婚約者を決めてしまえばいいか。アリス済まないね。もう暫く辛抱しておくれ」
とお父様は笑ったが…お義兄様が16歳になり入寮手前で食卓の席で血を吐いて倒れてしまった。

婚約者探しどころでは無くなりお父様は病棟へ移り治療することになった。かなり致死性の高い毒が盛られており犯人はわからない。

お父様は身体に麻痺が残り自由に喋れなくなり動けなくなっているが、ある日私がお見舞いに行くと紙になんとか書いたヨレヨレの文字で

(アリス…レイモンド…に…気を付けなさい…あの子が…毒…)

そう書かれていた。
そしてお父様はそれから暫くして息を引き取ってしまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました

ミズメ
恋愛
 感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。  これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。  とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?  重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。 ○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。

水鳥楓椛
恋愛
 わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。  なんでそんなことが分かるかって?  それはわたくしに前世の記憶があるから。  婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?  でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。  だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。  さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

処理中です...