宮廷画家は悪役令嬢

鉛野謐木

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悪役令嬢学園編

悪役令嬢は魔術書を手に入れた

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「あ、今日は学園生活初日だしガイダンスがあるからSクラス四人衆も強制参加ね。ガイダンスが終わったら部活紹介があってそのあとは解散。部活見学に行くも寮に帰るも自由だから」


そう言うとアレン先生は紙を配りだした。
紙の表には学園生活における諸注意が簡単に書かれており、裏には校舎の地図が書かれていた。


「その紙は今から配る魔術書に記録しておくこと」


魔術書はパソコンのスキャン機能がついたメモ帳のようなもので、記録したい紙媒体などを好きなページにかざすとそのページに転写される魔道具だ。
もちろんペンで直接メモを書き込むこともできる。
魔術書は所有者と所有者に許可された者以外が記録の内容を見ることができないような機能がついているためとても高価だ。
学生に配られるものは残念ながら容量がとても小さく機能もあまりついていないので小さい上に薄い。学園からの諸注意などを記録してしまえば容量が無くなってしまう。もちろん授業になんて使えない。
ならばなぜ諸注意や校舎内地図などが最初から印刷してある生徒手帳のようなものを配らずに魔術書を配るのか。
それにはきちんとした理由があった。


「おぉ……これが記録の日記」


そう、乙女ゲームのセーブやアイテムガチャの購入、ステータスの確認や攻略対象の好感度の上がり具合の確認をするための道具だ。
乙女ゲーム内では学園から支給された手帳という名前の道具だったが乙女ゲームユーザーの間では記録の日記や冒険の書と呼ばれていた。
私は乙女ゲーム内の設定が何かしらないか少しだけ期待しながら魔術書を開いた。
しかし、残念ながら「セーブをする」も「ガチャを回す」も「ステータス」も「好感度チェック」もなかった。
今まで通り自力で頑張るしかなさそうだ。


「全員記録し終えたみたいだね。それじゃ、第一体育館で全体ガイダンスがあるから各自向かうように。以上」


第一体育館は入学式をやったところだ。Aクラスの教室から一番近い階段から一階まで降りて左にまっすぐ行ったところにあるため案外近い。
もちろん私は近くの席を陣取りやがった攻略対象プラスヒロインに囲まれながら移動する羽目になった。


「エルヴェラールちゃんは何の部活に入るか決めた? 私は手芸部に入ろうかなって思ってるんだけど」


いきなりため口か。さすがヒロイン。私には無理だ。


「君さ、ちょっと失礼じゃない? エルヴェラール嬢は公爵令嬢で君はこの間まで庶民だった男爵令嬢だよね。言葉遣いに気をつけなよ」


待て、どこから湧いて来たんだアルムよ。私から一番遠い席にいたはずだよな。そして攻略対象のお前がなぜヒロインいびりをする。


「伯爵令息のアルム=ルイス=マクレーン様だって私に対する扱いが酷いですわ! 大ブーメランでしてよ!」


「その変な宮廷言葉やめてもらえるかな? そしてフルネームで呼ぶのもやめて。あとブーメランって何!」


兄弟揃って同じ返しとはさすが双子。


「というか私から一番遠い席にいたのにどうして一緒に移動しているんですかね私たち。マクレーン弟様ってそんなに私のことが好きなんですか?」


「マクレーン弟様って何! 普通にアルムでいいよ!」


私が好き~のくだりは否定しないのかよマクレーン弟様。
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