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悪役令嬢幼女編
悪役令嬢はお邪魔する
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私は水色の戦闘服に身を包みスケッチブックを抱きかかえ馬車に揺られている。ところどころ道が舗装されていない上に長い時間座りっぱなしだったためお尻が少し痛くなってきた。
森を抜けるとだんだんと近づいていく真っ白なお屋敷に緊張が高まってくる。
「緊張しているのかな」
「ええ、それはもちろん。だって、誰かのお家に伺うなんて初めてなんですもの!」
しかもよりによってあのヴォルグ様のご自宅だ。緊張しないわけがない。
インヴィディア領とイズフェス領は森を挟んで隣合わせているため、朝早くに家を出れば昼ごろにはヴォルグ様のご自宅に着く。
車で走れば1、2時間で着くのだろうがあいにくこの世界では車はまだ開発されていない。私は車についての知識には乏しいので早く誰かが開発してくれることを切に願う。電車でも可。
馬車を降りるとリエン様が出迎えてくれた。
リエン様は私のお父様より少し背が高く、将軍だというだけあってガタイが良い。綺麗に整えられたひげがダンディさを醸し出していて素敵だ。
「よく来てくれたなクロウ。それでそちらのお嬢さんが?」
「エルヴェラール=フィオン=インヴィディアでございます。本日はお招きいただきありがとうございます」
私は猫を何匹か被り優雅な令嬢を装ってお辞儀をした。件のお茶会前の怒涛の叩き込みがかなり効いているかもしれない。ありがとう侍女ズ。鬼とか言ってごめん。
「なあクロウ。本当にお前の娘なのか…?信じられないくらいに礼儀正しいぞ」
「失礼だね」
リエン様はお父様を愛称で呼んでいるし、お父様とリエン様は軽口を叩き合えるほど仲が良いらしい。
「ああ、そうだ。私はリエン=アルマン=セーナ=イズフェスだ」
よろしくな、とリエン様がウインクをした。意外とお茶目な人なのかもしれない。
リエン様のセカンドネームってアルマンだったんだ。ゲームでは書かれていなかったし思わぬ収穫だ。
「しかしまあお前んとこの娘はいいなあ。おしとやかで礼儀正しくて。うちのは女傑とじゃじゃ馬娘と剣バカの朴念仁だからな」
剣バカの朴念仁はおそらくヴォルグ様のことだ。ヴォルグ様って一人っ子じゃなかったんだ。お姉様だろうか妹様だろうか。ヴォルグ様はなんとなく弟な気がする。
令嬢に対してじゃじゃ馬はわかるが女傑って一体どんな人なんだ。1人で熊でも狩る人なのだろうか。
「ヴォルグ様はそこまで朴念仁な方ではなかったように思いますわ。表情が豊かで可愛らしいと思いましたし、剣がお好きな男性って格好いいですわ」
「だってよ。良かったなヴォルグ」
庭園の柱の陰からヴォルグ様がひょっこり顔を出した。いつの間にそこにいたんだ。びっくりしたわ。
先ほどのお嬢様口調をヴォルグ様に聞かれていたと思うと妙に恥ずかしくなる。
だって、お茶会の時はヴォルグ様とはフランクな敬語で話していたんだもの。
森を抜けるとだんだんと近づいていく真っ白なお屋敷に緊張が高まってくる。
「緊張しているのかな」
「ええ、それはもちろん。だって、誰かのお家に伺うなんて初めてなんですもの!」
しかもよりによってあのヴォルグ様のご自宅だ。緊張しないわけがない。
インヴィディア領とイズフェス領は森を挟んで隣合わせているため、朝早くに家を出れば昼ごろにはヴォルグ様のご自宅に着く。
車で走れば1、2時間で着くのだろうがあいにくこの世界では車はまだ開発されていない。私は車についての知識には乏しいので早く誰かが開発してくれることを切に願う。電車でも可。
馬車を降りるとリエン様が出迎えてくれた。
リエン様は私のお父様より少し背が高く、将軍だというだけあってガタイが良い。綺麗に整えられたひげがダンディさを醸し出していて素敵だ。
「よく来てくれたなクロウ。それでそちらのお嬢さんが?」
「エルヴェラール=フィオン=インヴィディアでございます。本日はお招きいただきありがとうございます」
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「なあクロウ。本当にお前の娘なのか…?信じられないくらいに礼儀正しいぞ」
「失礼だね」
リエン様はお父様を愛称で呼んでいるし、お父様とリエン様は軽口を叩き合えるほど仲が良いらしい。
「ああ、そうだ。私はリエン=アルマン=セーナ=イズフェスだ」
よろしくな、とリエン様がウインクをした。意外とお茶目な人なのかもしれない。
リエン様のセカンドネームってアルマンだったんだ。ゲームでは書かれていなかったし思わぬ収穫だ。
「しかしまあお前んとこの娘はいいなあ。おしとやかで礼儀正しくて。うちのは女傑とじゃじゃ馬娘と剣バカの朴念仁だからな」
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「ヴォルグ様はそこまで朴念仁な方ではなかったように思いますわ。表情が豊かで可愛らしいと思いましたし、剣がお好きな男性って格好いいですわ」
「だってよ。良かったなヴォルグ」
庭園の柱の陰からヴォルグ様がひょっこり顔を出した。いつの間にそこにいたんだ。びっくりしたわ。
先ほどのお嬢様口調をヴォルグ様に聞かれていたと思うと妙に恥ずかしくなる。
だって、お茶会の時はヴォルグ様とはフランクな敬語で話していたんだもの。
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