9 / 27
第9話 コロコロ表情の変わる少年の正体は
しおりを挟む
「……そうなんだ……!」
その言動から、少し子供っぽく感じるシオンの口から。将来とか、仕事とかいう言葉が出てきて、華奈は少しおどろきました。ですが、自信たっぷりに話しているシオンを見て、かわいいけどかっこいいなと思って、大人しく話の続きを聞きます。
「俺は元が優秀だからな。こんな課題すぐに終わる! だから、変身してこの世界を飛び回って見学していたんだ」
シオンは、自分の見てきたものをうれしそうに話しだしました。
砂まみれの所にある、大きな三角の山のような物。神の家と呼ばれ、柱が何本も立っている大きな建物。この世界の誰も知らないらしいという海に沈んだ都市。
どれも興味をひかれる話だけれど……
「で……課題は? 課題って、宿題みたいな……テストみたいな物のことよね、もう終わったの?」
じっと見つめる華奈と、はっと何かを思い出したかのようなシオンの視線がぶつかりました。
シオンは、パッと目を離して、もごもごと何かを言います。ですが、声が小さすぎて聞こえず、華奈は聞き返しました。
「え? 今なんて……?」
「しょうがないだろ……一般の奴らと違って、城の外に出ることだって滅多になくて……。ましてやここは異世界、ワクワクが止まらなかったんだよ!」
「お城……? 貴方まさか王子様⁈」
その乱暴な物言いに、華奈はシオンが王子様だとは、とても思えませんでした。けれど、偉そうな雰囲気は『我儘王子』と感じることもできます。そう思って華奈が聞いてみると、
「悪いか。これでも第三王子だ。
俺は、将来兄上や姉上たちの力になれるような仕事がしたい。だからそのためにも、良い成績を納めてどんな職でもこなせるようになりたいんだ」
開き直ったように、シオンはそう言いました。
「じゃあ、良い成績を納めたいと思っていたのに、珍しい場所にお墨付きでようやく出ることのできた王子様は……ハイテンションになっちゃって課題の事も忘れて、大事な物を落としてしまった、と……?」
華奈は、自分がよりよく理解するために、シオンの状況を言葉にしてみました。
「…………そうだよ……それでペンダントを落としちまったんだよ!」
シオンは、そのものずばりと言われたからか、恥ずかしそうに顔を赤らめて叫びます。
その様子を見ながら、しまった、と華奈は思いました。そして、急いでもう一つ、気になった事を聞いてみます。
「変身して飛び回ったって言っていたけれど、鳥とかにも変身できるの?」
「……もちろんだ。この姿だってこの世界の人間というものに変身しているんだぞ」
先程の、後悔しているような恥ずかしそうな表情はどこへ行ったのか。あっという間に、再び自慢げに胸を張って、シオンは言いました。
華奈は、コロコロ表情が変わるシオンのことを、やっぱりカワイイなと思い、笑顔になります。そして彼の本当の姿に興味がわいて、さらに聞きました。
「じゃあ、本当はどんな姿なの?」
「見せてやりたいけど……そのために使える力が残っていない……。変身は、たとえ元の姿に戻るだけでも、この姿を保つよりずっとパワーが必要なんだ」
残念そうに、困ったように言うシオンを見て、華奈は改めて、自分がどんな事をしてしまったのかを理解しました。
それがどれだけ大変な事だったのかを――
「……ごめんなさい……そのペンダントが、私の願いを叶えてくれていたのね……」
「まぁ……知らなかったんだし、しょうがないだろ。こうやって返してくれたんだから、もういいよ」
そう言いながらシオンはペンダントをポンポン、となでました。
「……ありがとう……!」
申し訳ないと思う気持ちが大きいものの、シオンのその様子から、本当に怒ってはいないのだと感じ、華奈はそう伝えました。
その言動から、少し子供っぽく感じるシオンの口から。将来とか、仕事とかいう言葉が出てきて、華奈は少しおどろきました。ですが、自信たっぷりに話しているシオンを見て、かわいいけどかっこいいなと思って、大人しく話の続きを聞きます。
「俺は元が優秀だからな。こんな課題すぐに終わる! だから、変身してこの世界を飛び回って見学していたんだ」
シオンは、自分の見てきたものをうれしそうに話しだしました。
砂まみれの所にある、大きな三角の山のような物。神の家と呼ばれ、柱が何本も立っている大きな建物。この世界の誰も知らないらしいという海に沈んだ都市。
どれも興味をひかれる話だけれど……
「で……課題は? 課題って、宿題みたいな……テストみたいな物のことよね、もう終わったの?」
じっと見つめる華奈と、はっと何かを思い出したかのようなシオンの視線がぶつかりました。
シオンは、パッと目を離して、もごもごと何かを言います。ですが、声が小さすぎて聞こえず、華奈は聞き返しました。
「え? 今なんて……?」
「しょうがないだろ……一般の奴らと違って、城の外に出ることだって滅多になくて……。ましてやここは異世界、ワクワクが止まらなかったんだよ!」
「お城……? 貴方まさか王子様⁈」
その乱暴な物言いに、華奈はシオンが王子様だとは、とても思えませんでした。けれど、偉そうな雰囲気は『我儘王子』と感じることもできます。そう思って華奈が聞いてみると、
「悪いか。これでも第三王子だ。
俺は、将来兄上や姉上たちの力になれるような仕事がしたい。だからそのためにも、良い成績を納めてどんな職でもこなせるようになりたいんだ」
開き直ったように、シオンはそう言いました。
「じゃあ、良い成績を納めたいと思っていたのに、珍しい場所にお墨付きでようやく出ることのできた王子様は……ハイテンションになっちゃって課題の事も忘れて、大事な物を落としてしまった、と……?」
華奈は、自分がよりよく理解するために、シオンの状況を言葉にしてみました。
「…………そうだよ……それでペンダントを落としちまったんだよ!」
シオンは、そのものずばりと言われたからか、恥ずかしそうに顔を赤らめて叫びます。
その様子を見ながら、しまった、と華奈は思いました。そして、急いでもう一つ、気になった事を聞いてみます。
「変身して飛び回ったって言っていたけれど、鳥とかにも変身できるの?」
「……もちろんだ。この姿だってこの世界の人間というものに変身しているんだぞ」
先程の、後悔しているような恥ずかしそうな表情はどこへ行ったのか。あっという間に、再び自慢げに胸を張って、シオンは言いました。
華奈は、コロコロ表情が変わるシオンのことを、やっぱりカワイイなと思い、笑顔になります。そして彼の本当の姿に興味がわいて、さらに聞きました。
「じゃあ、本当はどんな姿なの?」
「見せてやりたいけど……そのために使える力が残っていない……。変身は、たとえ元の姿に戻るだけでも、この姿を保つよりずっとパワーが必要なんだ」
残念そうに、困ったように言うシオンを見て、華奈は改めて、自分がどんな事をしてしまったのかを理解しました。
それがどれだけ大変な事だったのかを――
「……ごめんなさい……そのペンダントが、私の願いを叶えてくれていたのね……」
「まぁ……知らなかったんだし、しょうがないだろ。こうやって返してくれたんだから、もういいよ」
そう言いながらシオンはペンダントをポンポン、となでました。
「……ありがとう……!」
申し訳ないと思う気持ちが大きいものの、シオンのその様子から、本当に怒ってはいないのだと感じ、華奈はそう伝えました。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる