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第一部 星誕
第十二話 命の代償
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帰京から二日後、犀星が、正式に自分の家人として役所に玲陽の所在を届け、事務処理を済ませる半日ほどの間に、緑権によって、宮中にはすっかり玲陽の噂が広がっていた。
緑権は五亨庵に従事する仲間二人に話しただけである。しかし、そこは耳ざとい者の多い宮中、瞬く間に、噂に尾ひれががついて、大変な騒ぎになっていた。
特に、宮仕えの女性たちの間では、二つの大きな派閥が誕生した。
一方は、元々、歌仙親王の心を掴もうとしていた者たち、もう一方は、新たに現れた不思議な風貌の美青年に興味を持つ者たちである。
どちらにも共通する問題、それは、果たして、歌仙親王と、犀陽という青年がどのような関係にあるのか、という点である。
宮中の貴人たちの間では、性別や年齢にこだわらない奔放な恋愛が盛んである。
そんな中において、歌仙親王は今まで、女性にも男性にも興味を示さず、稚児の東雨とも、年上で気の合う燕将軍とも、確たる関係は存在しなかった。噂はあくまでも噂に過ぎず、実際にそれを証拠づけるものはないまま、時だけが過ぎていた。誰にも確かめようはないが、犀星は誰とも肌を合わせたことがない。これが真実である。
そのような時に、故郷から見目麗しい異色の青年を連れてきたとなれば、彼女たちの胸中が穏やかであるはずもない。親王として、将来は妃を迎えることになるだろうと思いはしても、それは所詮、形だけのことであり、親王の心が青年のものであったなら、所詮惨めな一人寝の夜が続くだけ、結ばれぬも同じこと。
宮中庭園のあちらこちらで、女性たちが大声をあげたり、泣きじゃくったり、逆に激怒したり、と、ただならぬ雰囲気を作り出している中を、涼景は足早に通り過ぎようとした。
「燕将軍」
どこぞの婦人が、涼景を呼び止めた。
化粧で固めた女の顔は、涼景には皆、同じに見える。どこの誰かは知らないが、自分を呼び止めるくらいだから、それだけ身分の高い者なのだろう。これを、無碍にするわけにはいかない。
「わたくしに、何か?」
実は、彼が呼び止められるのは、今日、これが最初ではない。
皇帝へ帰還の報告をしてから、真っ直ぐ宮中を横切ろうとしている間、此度で四度目である。
「歌仙親王様がお戻りになられたとか」
しなを作りながら、女性は真っ赤な紅を引いた口で言った。
人でも食ってきたのか、と、涼景は内心侮蔑にも似た思いを抱いたが、瞬時に、それがひらめきに変わる。
「何でも、御国で親しかったご友人を伴っているというではありませんか」
なにやら探りを入れてくる婦人の話はそっちのけで、涼景は赤い口紅を見つめていた。
「黄金色の髪の、仙女のように美しい方だとか。その瞳は琥珀の如く輝き、澄んでいると……」
玲陽を例えるなら、ふさわしい文言に相違ないが、今の涼景は全く別のことを考えていた。
「燕将軍が道中を護衛なさったと、伺っておりますわ。ぜひ、ご紹介いただけないかしら」
「貴妃様、申し訳ございませんが、現在、あの方は体調を崩されておいでのため、どなたにもお会いにはなりません」
涼景は、表面だけは恭しく、本心には敬意のかけらもない口調で言い切った。
「急ぎますので、失礼」
さっさと婦人に拝啓すると、涼景は尚も足を早めて五亨庵に向かった。
犀星と玲陽の姿を見た婦人たちの胸中など、手にとるようにわかる。
女性同士の潰し合いは勝手にしてくれて構わないが、それが犀星たちの足元をすくうことにも繋がりかねない。
「宮中では目立たないように、と言っておいたのに……」
思わず、愚痴が出る。
どうやら、玲陽の登録の関係で録房(ろくぼう)へ行った際、目ざとい者たちに見つかり、そこから逃れるために急いだため、途中で玲陽が倒れ、それを犀星が抱きかかえて五亨庵に入った、ということらしい。
そんな姿を見られては、女たちが騒がないわけがない。
涼景は最後は駆け足で五亨庵に着くと、
「歌仙親王様はおいでか!」
両開きの重たい扉の前で叫んだ。入れ、と、中から犀星の声がする。今日はまだ休仕日だから、他の部下たちはいないはずだ。
涼景は扉を片方だけわずかに開けて、するりと中へ滑り込んだ。
「星、陽の容体は? 外は大変な騒ぎになっているぞ」
五行の力が最も強い中央の円形の石畳に、玲陽を横たえ、犀星は少しずつ、砂糖水を飲ませているところだった。
「やはり、限界か……録房からの帰りに倒れたとか?」
「ああ。貴妃たちが集まってきて、陽が何故か怯えてな。連れ出そうと急がせたのが悪かった」
涼景は慣れた手つきで脈を取ると、首周りを何箇所か触診する。さすがの犀星も、涼景にだけは玲陽を許している。
「水と塩、糖分だけで生きるには限界がある」
「涼景、どうしたらいい?」
「星、ちょっと……」
涼景は玲陽に会話が聞こえない場所まで犀星を連れていくと、さらに声をひそめた。
「俺は気が狂っているわけじゃない。冷静に考えて、辿り着いた答えだ。最善じゃないかもしれないが、試す価値はある」
「言ってくれ」
涼景は呼吸も浅い玲陽を遠目に見ながら、顔を歪めた。
「あいつが、今より劣悪でありながら、どうしてあの砦で生きながらえていたか、わかるか?」
「花の蜜、父上の飴、それから、あの滝の水の不思議な力とか?」
「それもあるかもしれない。だが、あそこであいつが口にしていたものが、もう一つある」
「…………男の精液か?」
荒れるか、と涼景は警戒したが、犀星は冷静だった。すでに玲陽を取り戻した今、犀星にも落ち着きが見られるようになっている。
「俺はあの夜、一度しか見ていないが、陽はどんなに体を病んでも、それだけは床を舐めてでも飲もうとしていた。あの時、玲博が言った、お前はこれで生きている、という言葉も気になる」
「……わかった。やってみる」
犀星はあっさり承諾した。もっと抵抗するか、と思っていた涼景は拍子抜けである。
「実は、叔母上にも言われているんだ。あいつが傀儡を飲み込んだ時は、そうするように、と」
「玲芳どのに?」
「俺の……じゃないと意味がない、と」
「とりあえず、応急処置だと思え。俺はもっと栄養価の高いものを思いついた。準備して、今夜届ける。後で籠をここへ寄越すよう手配しておく。邸宅で待て」
「ああ」
「頼んだぞ」
涼景が去ると、犀星は内側から閂をかけた。
そして、玲陽のそばにあぐらをかいて座ると、玲陽の頭を引き寄せ、膝の上に乗せた。
自らの下衣をはだけさせ、自分でもしたことのない行為を始める。
簡単なものかと思っていたが、妙にこそばゆく、思うようにはいかない。
敢えて玲陽に触れ、柔らかい髪を撫で、その甘い香りに没しようとするものの、緊張のせいか、不慣れなためか、一向に射精に至る気配はなかった。
歌仙で、玲陽と禁断の口づけを交わしたとき、自分は確かにそれ以上の興奮を覚えていたはずだ。
二日前、ここで抱き合った時にも、震えるような感覚が生まれた。
だが、今は、肉体的には正常であっても、心がそれに追いつかなかった。
玲陽の命がかかっている、と思うと、余計に気がそぞろになり、行為に集中することができない。焦りがさらに自身を萎縮させてしまう。自分で自分に触れる感覚では、全く興奮が呼び起こされない。
「なんで、こんなこともできないんだ……」
情けないような惨めな思いで、犀星は後悔した。
せめて、自身で慰めることくらい、覚えておくのだった、と今更ながらながら悔やんだが、どうしようもない。
「ん……」
うっすらと、玲陽が目を開いた。
意識がぼんやりしていたため、すぐには自分が置かれている状況がわからないらしい。
犀星も、なんと答えていいか、また、この姿勢を崩すべきか、答えの出ない問いを延々と考え続けていた。
「兄様」
ようやく、犀星が何をしようとしているのか察した玲陽は、悲しげに瞬いた。
「私のために……そのようなことまで……」
「すまない。うまく、できない」
正直に、犀星は謝った。
「いいんです」
玲陽が、ほとんど吐息だけで答える。
「兄様は、それで……」
「だが、叔母上にも言われている。それに、今のお前には、少しでも……その……」
「触れても、いいですか?」
犀星を遮って、玲陽は唐突に言った。
「うん?」
なんのことかわからず、犀星が問い返す。が、玲陽はそれには答えず、力の入らない手を懸命に伸ばして、犀星のものにそっと指をかけた。
その瞬間、ぞくりとする感覚が犀星の背筋に走る。
ただ触れること、それは自分でもしていたというのに、玲陽にされるだけで、これほど違うのか?
「お嫌なら、言って下さい。あなたを辱めてまで、私は生きていようとは思わない」
玲陽の目は、真っ直ぐに犀星を見つめていた。疲労が濃く現れているが、意識はしっかりしている。
「お前は……嫌じゃないのか…… 今まで、無理強いされ、苦しめられてきたというのに……」
「あれは、兄様じゃないです」
「それは、そうだが……」
「私は……兄様が……」
犀星は、玲陽の表情に、必死に何かに耐えている影を見た。それは、拒絶への恐怖。その恐怖を抱えながら、それでも、精一杯の勇気で玲陽は自分を求めてくれている……
「俺も……お前に全てを……俺にできることの全てを……」
うまく言葉が見つからず、うろたえつつも、犀星は自分の中心に熱と興奮とが集まってくるのを感じた。
これか…… これが、求めるということ?
玲陽は犀星の表情を伺い、少しでも嫌悪を感じているようならそこまで、と覚悟して、絡める指をそっと動かした。玲陽にとって、男性器に触れる行為は、無理に覚え込まされたものだ。自ら求めたことなどなく、したいと思ったこともあるはずがない。むしろ、見たくもない対象に他ならない。
だが、この時は、玲陽の中から生まれてきた明らかな欲望が、それを欲していた。
今まで、自分が経験してきたこととは、全く意味が違う。
心から慕う相手に触れ、その全てを手に入れたい。
誰も触れたことのない、犀星の体と感情の全てが欲しい。
自分の願望に鈍感な玲陽だが、嫌になる程、犀星を渇望する自分に気付かされる。
慣れていない犀星の中心をそっと撫で、温もりを感じるだけで自然と体が動く。
上半身を引きずるように犀星の脚の間に顔を寄せると、丁寧に根本から手で包み、力ないそれを勇気づけるように撫で、そっと唇で触れる。
びくん、と犀星が全身に力を込めて、衝動に耐えるのがわかる。息を殺し、目を潤ませてはいたが、それでも『嫌だ』とは言わない。
玲陽は犀星の様子を慎重に伺いながら、少しずつ動きを早め、反応してくるのを感じると、わざと音を立てて、数度、口付けた。
「ああっ!」
犀星の声とは思われない、色めいた高い叫びが、静かな空間に鋭く響く。
発した犀星自身も、それを初めて耳にした玲陽も、思わず真顔で見つめあった。
先ほどまでの、うわついた羞恥心や恐怖心は消え、二人で何かを発見して驚いた時のような、子供に返ったような瞬間だった。
数秒、二人とも互いを見て、呆然としていたが、やがて、どちらともなく破顔する。
くすくすと、犀星が笑い出す。玲陽も、小刻みに肩を震わせた。
「何を、怖がっていたんだろう」
犀星はそっと玲陽の額から、髪を指で掻き上げた。頭に沿って、丁寧に撫でる。
「きっと、同じことを、怖がっていたんです」
玲陽も、先ほどより明るい声で言った。
「嫌われなくない」
二人の言葉が、同時に重なる。
「不器用でごめんな、陽」
「私こそ、兄様が最初と決めていたのに……」
「……え?」
「私はずっと、こうしたかった」
玲陽は犀星のものに手を添えたまま、唇を寄せた。
「本当は、子供の頃、眠っているあなたに悪戯をしようとしたことがあったんです」
言いながら、柔らかい先端に、さらに柔らかい唇を当てる。
「でも、できませんでした。軽蔑されると思ったから……」
「そんなこと!」
犀星は玲陽が与える刺激に、急速に血が熱するのを感じながら、
「お前がしてくれていたら……俺はもっと早く……認めていた……お前……への……あっ!」
玲陽がそっと先端を舌で舐め、そのまま歯を当てないように咥え込む。
生まれて初めて与えられたその感覚に、犀星は思わず上体をのけぞらせた。倒れないように、体の両脇についた手も、悲しいほど、震えていた。
自分でどれだけ触れようと、何も変わらなかったというのに、相手が玲陽であれば、ここまで違う。
すでに犀星は言葉を紡ぐ余裕を無くし、ただ必死に呼吸を押し殺した。荒い息は隠しようがなかったが、嬌声だけは聞かれたくはなかった。
「んんっ!」
ぐっと堪えて、体の奥から湧き上がってくる何かに耐える。それは快感というより、激流のように意識を押し流して、平常心も冷静さも『自分らしさ』さえ、簡単に粉々にされてしまう衝動だ。
声を上げたい。苦しい呼吸で喘ぎたい。体がじっとしていることを許さず、のたうち回りたい。そして、陽の名を叫び、愛していると伝えたい!
その全てを、犀星は苦しみに耐えるように押し殺し、陽が動きやすいように、じっと堪えた。脚の筋肉が痙攣し、必死に力をこめていることがわかる。
玲陽は犀星の表情から目を離さなかった。自分の行為に、ここまで反応を見せる相手を、玲陽は知らない。自分を弄んできた者たちは、このように自分を感じてなどくれはしなかった。ただ、道具として、物として扱っただけだ。
だが、犀星は違う。自分を認め、自分に酔ってくれる。触れ方を変えれば、犀星の反応も変わる。慣れていない犀星にとっては、快感より困惑が大きいだろうが、それでも、今まで玲陽が見てきた相手とは、全く違っている。
犀星にも、玲陽にも、それは間違いなく、初めての経験であり、純粋に相手を求めて手を伸ばし、掴み取った時間だった。
犀星の奥から、熱いものが込み上げてくる。途端に、味わったことのない激しい快感が中心に集まり、限界が近いことを、さすがの彼も悟った。
これが、達するということ?
玲陽は咽喉に収まり切らないほど張り詰めた犀星を、それでも精一杯に深く受け入れた。嗚咽と吐き気しか感じたことのない行為が、愛しくてたまらないものに変わっている。
全く違うんだ。
玲陽は余裕のない犀星より、幾分冷静に考えていた。
本当に愛する人とのまぐわいは、これほど自分を積極的にさせ、喉奥の息苦しささえ心地よい。
このまま飲み干したい。
初めて、玲陽にそんな欲望が生まれた。
犀星が自分を想って迎えてくれる絶頂なら、その全てを受け入れたい。体が生きるために? 心を、生かすために!
犀星の体が大きくもがくように跳ねる。
「陽っ! ああっ! 何かが! はぁっ!」
絶叫はそのまま、艶ある声として高い天井に響き、玲陽はしっかりと犀星の腰に腕を回して顔を押し付けた。
玲陽の口内で何度も脈動を繰り返し、そのたびに、熱いほとばしりが喉の奥へ流れていく。繰り返し訪れる絶頂に、犀星は泣き叫ぶように頭を振って、玲陽の名を呼んだ。答えるように、玲陽も腰を抱く手で、背中をさすってやる。
やがて、玲陽はゆっくりと口を離した。白いものが、犀星の先端に垂れ、玲陽はそれを舌で丁寧に舐めとった。舌の上で、改めてその味を確かめて、玲陽は幸福そうに微笑んだ。
いつしか、酷く呼吸を乱し、床に倒れ込んでいた犀星の隣に寄り添い、玲陽はその涙のあとを指で拭う。
「昔から、兄様は泣き虫だから」
優しく、肩に手を置き、顔を覗き込む。
「星」
玲陽は、静かに名を呼んだ。
暖かなまどろみから目覚めるように、犀星はうつろな目を開くと、玲陽の胸に顔をすり寄せ、心地よさそうに息を整えていく。時折、ぴくりと絶頂の余韻が、今起きた出来事を思い出させるたびに、犀星ははにかむように微笑んだ。
誰が、こんな彼を想像しただろうか。
宮中での歌仙親王といえば、容貌こそ美しいものの、無愛想で人付き合いがなく、いつも冷ややかな雰囲気を帯びていて、近づき難い印象だった。決して人を悪く言うことも、陥れることもなく、むしろ、淡々と民衆のためになる政策の立案と実現に奔走する、政治家として頼れる存在ではあったが、涼景のような親しみやすさは見せなかった。
笑うどころか、微笑むことさえまれで、物腰は礼儀正しく(どうせ形だけだが)柔らかいが、確かな感情を見せる人物ではなかった。
唯一、犀星の笑顔を頻繁に見る人物がいたとすれば、それは涼景だけだっただろう。
その涼景ですら、このように甘える彼を知ることはなかった。
「疲れたでしょう」
玲陽は抱き寄せた犀星の耳元で囁いた。
「あんなに必死に押し殺さなくても、いいんですよ」
「……恥ずかしい」
自分の胸に顔を埋めたまま呟く犀星を、玲陽はどうして良いかわからなかった。
困ったわけではない。ただ、愛しさのあまり、自分自身に沸き起こってきた、性的な興奮への対応に窮した。
「陽……嫌じゃなかったか?」
顔を隠したまま、犀星は言った。
「お前は……その……こんなこと……したくないのに……やっと、あそこから抜け出したのに……」
「星」
再び名を呼ばれて、犀星はより強く、玲陽に腕を絡めた。
「とても、幸せです」
「陽?」
「今は、それ以上、言葉が見つからないの」
犀星の身体を掻き抱いて、玲陽は答えた。
「だから、何も聞かないでください」
「……うん」
犀星がゆっくりと眠りに落ちていく。それは情事の後のわずかな時間であったが、二人にとっては、今までの空白と寂しさを全て消し去るに十分な時であった。
緑権は五亨庵に従事する仲間二人に話しただけである。しかし、そこは耳ざとい者の多い宮中、瞬く間に、噂に尾ひれががついて、大変な騒ぎになっていた。
特に、宮仕えの女性たちの間では、二つの大きな派閥が誕生した。
一方は、元々、歌仙親王の心を掴もうとしていた者たち、もう一方は、新たに現れた不思議な風貌の美青年に興味を持つ者たちである。
どちらにも共通する問題、それは、果たして、歌仙親王と、犀陽という青年がどのような関係にあるのか、という点である。
宮中の貴人たちの間では、性別や年齢にこだわらない奔放な恋愛が盛んである。
そんな中において、歌仙親王は今まで、女性にも男性にも興味を示さず、稚児の東雨とも、年上で気の合う燕将軍とも、確たる関係は存在しなかった。噂はあくまでも噂に過ぎず、実際にそれを証拠づけるものはないまま、時だけが過ぎていた。誰にも確かめようはないが、犀星は誰とも肌を合わせたことがない。これが真実である。
そのような時に、故郷から見目麗しい異色の青年を連れてきたとなれば、彼女たちの胸中が穏やかであるはずもない。親王として、将来は妃を迎えることになるだろうと思いはしても、それは所詮、形だけのことであり、親王の心が青年のものであったなら、所詮惨めな一人寝の夜が続くだけ、結ばれぬも同じこと。
宮中庭園のあちらこちらで、女性たちが大声をあげたり、泣きじゃくったり、逆に激怒したり、と、ただならぬ雰囲気を作り出している中を、涼景は足早に通り過ぎようとした。
「燕将軍」
どこぞの婦人が、涼景を呼び止めた。
化粧で固めた女の顔は、涼景には皆、同じに見える。どこの誰かは知らないが、自分を呼び止めるくらいだから、それだけ身分の高い者なのだろう。これを、無碍にするわけにはいかない。
「わたくしに、何か?」
実は、彼が呼び止められるのは、今日、これが最初ではない。
皇帝へ帰還の報告をしてから、真っ直ぐ宮中を横切ろうとしている間、此度で四度目である。
「歌仙親王様がお戻りになられたとか」
しなを作りながら、女性は真っ赤な紅を引いた口で言った。
人でも食ってきたのか、と、涼景は内心侮蔑にも似た思いを抱いたが、瞬時に、それがひらめきに変わる。
「何でも、御国で親しかったご友人を伴っているというではありませんか」
なにやら探りを入れてくる婦人の話はそっちのけで、涼景は赤い口紅を見つめていた。
「黄金色の髪の、仙女のように美しい方だとか。その瞳は琥珀の如く輝き、澄んでいると……」
玲陽を例えるなら、ふさわしい文言に相違ないが、今の涼景は全く別のことを考えていた。
「燕将軍が道中を護衛なさったと、伺っておりますわ。ぜひ、ご紹介いただけないかしら」
「貴妃様、申し訳ございませんが、現在、あの方は体調を崩されておいでのため、どなたにもお会いにはなりません」
涼景は、表面だけは恭しく、本心には敬意のかけらもない口調で言い切った。
「急ぎますので、失礼」
さっさと婦人に拝啓すると、涼景は尚も足を早めて五亨庵に向かった。
犀星と玲陽の姿を見た婦人たちの胸中など、手にとるようにわかる。
女性同士の潰し合いは勝手にしてくれて構わないが、それが犀星たちの足元をすくうことにも繋がりかねない。
「宮中では目立たないように、と言っておいたのに……」
思わず、愚痴が出る。
どうやら、玲陽の登録の関係で録房(ろくぼう)へ行った際、目ざとい者たちに見つかり、そこから逃れるために急いだため、途中で玲陽が倒れ、それを犀星が抱きかかえて五亨庵に入った、ということらしい。
そんな姿を見られては、女たちが騒がないわけがない。
涼景は最後は駆け足で五亨庵に着くと、
「歌仙親王様はおいでか!」
両開きの重たい扉の前で叫んだ。入れ、と、中から犀星の声がする。今日はまだ休仕日だから、他の部下たちはいないはずだ。
涼景は扉を片方だけわずかに開けて、するりと中へ滑り込んだ。
「星、陽の容体は? 外は大変な騒ぎになっているぞ」
五行の力が最も強い中央の円形の石畳に、玲陽を横たえ、犀星は少しずつ、砂糖水を飲ませているところだった。
「やはり、限界か……録房からの帰りに倒れたとか?」
「ああ。貴妃たちが集まってきて、陽が何故か怯えてな。連れ出そうと急がせたのが悪かった」
涼景は慣れた手つきで脈を取ると、首周りを何箇所か触診する。さすがの犀星も、涼景にだけは玲陽を許している。
「水と塩、糖分だけで生きるには限界がある」
「涼景、どうしたらいい?」
「星、ちょっと……」
涼景は玲陽に会話が聞こえない場所まで犀星を連れていくと、さらに声をひそめた。
「俺は気が狂っているわけじゃない。冷静に考えて、辿り着いた答えだ。最善じゃないかもしれないが、試す価値はある」
「言ってくれ」
涼景は呼吸も浅い玲陽を遠目に見ながら、顔を歪めた。
「あいつが、今より劣悪でありながら、どうしてあの砦で生きながらえていたか、わかるか?」
「花の蜜、父上の飴、それから、あの滝の水の不思議な力とか?」
「それもあるかもしれない。だが、あそこであいつが口にしていたものが、もう一つある」
「…………男の精液か?」
荒れるか、と涼景は警戒したが、犀星は冷静だった。すでに玲陽を取り戻した今、犀星にも落ち着きが見られるようになっている。
「俺はあの夜、一度しか見ていないが、陽はどんなに体を病んでも、それだけは床を舐めてでも飲もうとしていた。あの時、玲博が言った、お前はこれで生きている、という言葉も気になる」
「……わかった。やってみる」
犀星はあっさり承諾した。もっと抵抗するか、と思っていた涼景は拍子抜けである。
「実は、叔母上にも言われているんだ。あいつが傀儡を飲み込んだ時は、そうするように、と」
「玲芳どのに?」
「俺の……じゃないと意味がない、と」
「とりあえず、応急処置だと思え。俺はもっと栄養価の高いものを思いついた。準備して、今夜届ける。後で籠をここへ寄越すよう手配しておく。邸宅で待て」
「ああ」
「頼んだぞ」
涼景が去ると、犀星は内側から閂をかけた。
そして、玲陽のそばにあぐらをかいて座ると、玲陽の頭を引き寄せ、膝の上に乗せた。
自らの下衣をはだけさせ、自分でもしたことのない行為を始める。
簡単なものかと思っていたが、妙にこそばゆく、思うようにはいかない。
敢えて玲陽に触れ、柔らかい髪を撫で、その甘い香りに没しようとするものの、緊張のせいか、不慣れなためか、一向に射精に至る気配はなかった。
歌仙で、玲陽と禁断の口づけを交わしたとき、自分は確かにそれ以上の興奮を覚えていたはずだ。
二日前、ここで抱き合った時にも、震えるような感覚が生まれた。
だが、今は、肉体的には正常であっても、心がそれに追いつかなかった。
玲陽の命がかかっている、と思うと、余計に気がそぞろになり、行為に集中することができない。焦りがさらに自身を萎縮させてしまう。自分で自分に触れる感覚では、全く興奮が呼び起こされない。
「なんで、こんなこともできないんだ……」
情けないような惨めな思いで、犀星は後悔した。
せめて、自身で慰めることくらい、覚えておくのだった、と今更ながらながら悔やんだが、どうしようもない。
「ん……」
うっすらと、玲陽が目を開いた。
意識がぼんやりしていたため、すぐには自分が置かれている状況がわからないらしい。
犀星も、なんと答えていいか、また、この姿勢を崩すべきか、答えの出ない問いを延々と考え続けていた。
「兄様」
ようやく、犀星が何をしようとしているのか察した玲陽は、悲しげに瞬いた。
「私のために……そのようなことまで……」
「すまない。うまく、できない」
正直に、犀星は謝った。
「いいんです」
玲陽が、ほとんど吐息だけで答える。
「兄様は、それで……」
「だが、叔母上にも言われている。それに、今のお前には、少しでも……その……」
「触れても、いいですか?」
犀星を遮って、玲陽は唐突に言った。
「うん?」
なんのことかわからず、犀星が問い返す。が、玲陽はそれには答えず、力の入らない手を懸命に伸ばして、犀星のものにそっと指をかけた。
その瞬間、ぞくりとする感覚が犀星の背筋に走る。
ただ触れること、それは自分でもしていたというのに、玲陽にされるだけで、これほど違うのか?
「お嫌なら、言って下さい。あなたを辱めてまで、私は生きていようとは思わない」
玲陽の目は、真っ直ぐに犀星を見つめていた。疲労が濃く現れているが、意識はしっかりしている。
「お前は……嫌じゃないのか…… 今まで、無理強いされ、苦しめられてきたというのに……」
「あれは、兄様じゃないです」
「それは、そうだが……」
「私は……兄様が……」
犀星は、玲陽の表情に、必死に何かに耐えている影を見た。それは、拒絶への恐怖。その恐怖を抱えながら、それでも、精一杯の勇気で玲陽は自分を求めてくれている……
「俺も……お前に全てを……俺にできることの全てを……」
うまく言葉が見つからず、うろたえつつも、犀星は自分の中心に熱と興奮とが集まってくるのを感じた。
これか…… これが、求めるということ?
玲陽は犀星の表情を伺い、少しでも嫌悪を感じているようならそこまで、と覚悟して、絡める指をそっと動かした。玲陽にとって、男性器に触れる行為は、無理に覚え込まされたものだ。自ら求めたことなどなく、したいと思ったこともあるはずがない。むしろ、見たくもない対象に他ならない。
だが、この時は、玲陽の中から生まれてきた明らかな欲望が、それを欲していた。
今まで、自分が経験してきたこととは、全く意味が違う。
心から慕う相手に触れ、その全てを手に入れたい。
誰も触れたことのない、犀星の体と感情の全てが欲しい。
自分の願望に鈍感な玲陽だが、嫌になる程、犀星を渇望する自分に気付かされる。
慣れていない犀星の中心をそっと撫で、温もりを感じるだけで自然と体が動く。
上半身を引きずるように犀星の脚の間に顔を寄せると、丁寧に根本から手で包み、力ないそれを勇気づけるように撫で、そっと唇で触れる。
びくん、と犀星が全身に力を込めて、衝動に耐えるのがわかる。息を殺し、目を潤ませてはいたが、それでも『嫌だ』とは言わない。
玲陽は犀星の様子を慎重に伺いながら、少しずつ動きを早め、反応してくるのを感じると、わざと音を立てて、数度、口付けた。
「ああっ!」
犀星の声とは思われない、色めいた高い叫びが、静かな空間に鋭く響く。
発した犀星自身も、それを初めて耳にした玲陽も、思わず真顔で見つめあった。
先ほどまでの、うわついた羞恥心や恐怖心は消え、二人で何かを発見して驚いた時のような、子供に返ったような瞬間だった。
数秒、二人とも互いを見て、呆然としていたが、やがて、どちらともなく破顔する。
くすくすと、犀星が笑い出す。玲陽も、小刻みに肩を震わせた。
「何を、怖がっていたんだろう」
犀星はそっと玲陽の額から、髪を指で掻き上げた。頭に沿って、丁寧に撫でる。
「きっと、同じことを、怖がっていたんです」
玲陽も、先ほどより明るい声で言った。
「嫌われなくない」
二人の言葉が、同時に重なる。
「不器用でごめんな、陽」
「私こそ、兄様が最初と決めていたのに……」
「……え?」
「私はずっと、こうしたかった」
玲陽は犀星のものに手を添えたまま、唇を寄せた。
「本当は、子供の頃、眠っているあなたに悪戯をしようとしたことがあったんです」
言いながら、柔らかい先端に、さらに柔らかい唇を当てる。
「でも、できませんでした。軽蔑されると思ったから……」
「そんなこと!」
犀星は玲陽が与える刺激に、急速に血が熱するのを感じながら、
「お前がしてくれていたら……俺はもっと早く……認めていた……お前……への……あっ!」
玲陽がそっと先端を舌で舐め、そのまま歯を当てないように咥え込む。
生まれて初めて与えられたその感覚に、犀星は思わず上体をのけぞらせた。倒れないように、体の両脇についた手も、悲しいほど、震えていた。
自分でどれだけ触れようと、何も変わらなかったというのに、相手が玲陽であれば、ここまで違う。
すでに犀星は言葉を紡ぐ余裕を無くし、ただ必死に呼吸を押し殺した。荒い息は隠しようがなかったが、嬌声だけは聞かれたくはなかった。
「んんっ!」
ぐっと堪えて、体の奥から湧き上がってくる何かに耐える。それは快感というより、激流のように意識を押し流して、平常心も冷静さも『自分らしさ』さえ、簡単に粉々にされてしまう衝動だ。
声を上げたい。苦しい呼吸で喘ぎたい。体がじっとしていることを許さず、のたうち回りたい。そして、陽の名を叫び、愛していると伝えたい!
その全てを、犀星は苦しみに耐えるように押し殺し、陽が動きやすいように、じっと堪えた。脚の筋肉が痙攣し、必死に力をこめていることがわかる。
玲陽は犀星の表情から目を離さなかった。自分の行為に、ここまで反応を見せる相手を、玲陽は知らない。自分を弄んできた者たちは、このように自分を感じてなどくれはしなかった。ただ、道具として、物として扱っただけだ。
だが、犀星は違う。自分を認め、自分に酔ってくれる。触れ方を変えれば、犀星の反応も変わる。慣れていない犀星にとっては、快感より困惑が大きいだろうが、それでも、今まで玲陽が見てきた相手とは、全く違っている。
犀星にも、玲陽にも、それは間違いなく、初めての経験であり、純粋に相手を求めて手を伸ばし、掴み取った時間だった。
犀星の奥から、熱いものが込み上げてくる。途端に、味わったことのない激しい快感が中心に集まり、限界が近いことを、さすがの彼も悟った。
これが、達するということ?
玲陽は咽喉に収まり切らないほど張り詰めた犀星を、それでも精一杯に深く受け入れた。嗚咽と吐き気しか感じたことのない行為が、愛しくてたまらないものに変わっている。
全く違うんだ。
玲陽は余裕のない犀星より、幾分冷静に考えていた。
本当に愛する人とのまぐわいは、これほど自分を積極的にさせ、喉奥の息苦しささえ心地よい。
このまま飲み干したい。
初めて、玲陽にそんな欲望が生まれた。
犀星が自分を想って迎えてくれる絶頂なら、その全てを受け入れたい。体が生きるために? 心を、生かすために!
犀星の体が大きくもがくように跳ねる。
「陽っ! ああっ! 何かが! はぁっ!」
絶叫はそのまま、艶ある声として高い天井に響き、玲陽はしっかりと犀星の腰に腕を回して顔を押し付けた。
玲陽の口内で何度も脈動を繰り返し、そのたびに、熱いほとばしりが喉の奥へ流れていく。繰り返し訪れる絶頂に、犀星は泣き叫ぶように頭を振って、玲陽の名を呼んだ。答えるように、玲陽も腰を抱く手で、背中をさすってやる。
やがて、玲陽はゆっくりと口を離した。白いものが、犀星の先端に垂れ、玲陽はそれを舌で丁寧に舐めとった。舌の上で、改めてその味を確かめて、玲陽は幸福そうに微笑んだ。
いつしか、酷く呼吸を乱し、床に倒れ込んでいた犀星の隣に寄り添い、玲陽はその涙のあとを指で拭う。
「昔から、兄様は泣き虫だから」
優しく、肩に手を置き、顔を覗き込む。
「星」
玲陽は、静かに名を呼んだ。
暖かなまどろみから目覚めるように、犀星はうつろな目を開くと、玲陽の胸に顔をすり寄せ、心地よさそうに息を整えていく。時折、ぴくりと絶頂の余韻が、今起きた出来事を思い出させるたびに、犀星ははにかむように微笑んだ。
誰が、こんな彼を想像しただろうか。
宮中での歌仙親王といえば、容貌こそ美しいものの、無愛想で人付き合いがなく、いつも冷ややかな雰囲気を帯びていて、近づき難い印象だった。決して人を悪く言うことも、陥れることもなく、むしろ、淡々と民衆のためになる政策の立案と実現に奔走する、政治家として頼れる存在ではあったが、涼景のような親しみやすさは見せなかった。
笑うどころか、微笑むことさえまれで、物腰は礼儀正しく(どうせ形だけだが)柔らかいが、確かな感情を見せる人物ではなかった。
唯一、犀星の笑顔を頻繁に見る人物がいたとすれば、それは涼景だけだっただろう。
その涼景ですら、このように甘える彼を知ることはなかった。
「疲れたでしょう」
玲陽は抱き寄せた犀星の耳元で囁いた。
「あんなに必死に押し殺さなくても、いいんですよ」
「……恥ずかしい」
自分の胸に顔を埋めたまま呟く犀星を、玲陽はどうして良いかわからなかった。
困ったわけではない。ただ、愛しさのあまり、自分自身に沸き起こってきた、性的な興奮への対応に窮した。
「陽……嫌じゃなかったか?」
顔を隠したまま、犀星は言った。
「お前は……その……こんなこと……したくないのに……やっと、あそこから抜け出したのに……」
「星」
再び名を呼ばれて、犀星はより強く、玲陽に腕を絡めた。
「とても、幸せです」
「陽?」
「今は、それ以上、言葉が見つからないの」
犀星の身体を掻き抱いて、玲陽は答えた。
「だから、何も聞かないでください」
「……うん」
犀星がゆっくりと眠りに落ちていく。それは情事の後のわずかな時間であったが、二人にとっては、今までの空白と寂しさを全て消し去るに十分な時であった。
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