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巫女の憂いを除く者
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幽霊!?
目の前にいる白く透けたやけにグラマラスな美女が、ゆらりと靄を揺らしてクラウス君へ向けていた視線をオルに向けてきた。
『おお、オルフェウス殿まで。そしてそこの女子は伴侶かの?』
「ああ、俺の、よ、嫁だ」
私の腰を引き寄せて、相変わらずぎこちなく紹介するオル。安定の可愛さだ。
「先見の巫女! お前は生きているのか!? 他の竜族は!?」
クラウス君が勢い込んで問いかけるも、白い美女は悲しげに俯く。
『今は生きてもいないが死んでもいない。一種の呪いをかけている状態じゃ。我ら竜族が無理やり邪竜化させられそうになっての』
「邪竜化!?人工的にそんな事が……」
『出来るんじゃろうな。魔王の遺産……残滓の力ならば』
全員に緊張が走る。
魔王の遺産とは、以前銀髪の勇者と共にいた聖女が狙われた時に使われた力だ。その時は私も聖女に力を貸した。なんせオルの姪御さんだったし、妹みたいな存在に思えたしね。
魔王の力は強い邪の力だ。
勇者は魔王を制したけど、その戦いで魔王は多くの邪を放った為、今でも戦いの残滓が残っている土地もある。国が回収しきれてないものを見つけ出したか、あるいは……
『あの者らは竜族全てを邪竜化せんとし、我はそれを止めるべく一族に呪いをかけた。水晶化の呪いを』
「それは……治るの?」
皆が口を開かない中、私は恐る恐る問いかける。クラウス君もマイコちゃんも、オルでさえも黙ったままだ。
『邪を無くすまで、このままじゃろう。水晶で浄化はしておるが、あの灰色の輩は魔王の遺産で多くの邪を撒きよった。この辺りはネズミ一匹怯えて来ぬよ』
美女巫女さんは悲しげにゆらゆらと揺れる。
『今すぐとはいかぬが、いつか我らが解放される日が来よう。何百年かかるか分からぬが、我はそれを見守っておるから安心せい』
邪の力で汚染されたここら一帯が正常に戻る日がいつになるのか……そして竜族も汚染されている。
まったくもって、あのクソ忌々しい灰色はゴミ以下だ。
クラウス君は血を流すくらいに拳を握りこんでいる。マイコちゃんが泣きながらその拳を開こうとしていて、オルはただ目をつぶって立っていた。
……あ。
「私達は大丈夫なの? 邪の力に汚染されたりとか」
『竜族は精霊に近い。邪なものに汚染されやすい体質じゃが、住処が清廉である限り影響はないのじゃ。敵は何故かそれを知っており、山自体を汚染しおった」
なるほど。
鼻から息を吸い、口からゆっくり息を吐く。
私の空気が変わったのが分かるのか、オルが私に何か言おうとして止めるのが分かった。うん。相変わらず私の事を分かってるよね。
二礼二拍手一礼し、そのまま集中すること数秒、幾何学模様の魔法陣が二つ展開されて私の周りが光り出す。
『これは……神力!?』
美女巫女さんが驚いた声を出し、クラウス君が静かにというゼスチャーをしているけど、もう大丈夫だよ。
【カムナオビ】【オオナオビ】
出てきた二神は、和な服装ではなく何故か白いツナギだった。顔はすごいイケメンで切れ長な瞳のメガネ男子と、ホストみたいな髪型のやはり切れ長の瞳の男子……どないやねん。
『穢れの向こうの御方、我らを喚んだか』
『イヅノメが居ないようだが……ああ、巫女は居るのか』
直毘の二神は、本当はイヅノメという巫女神を合わせて三柱だ。でも今回巫女の役割は美女巫女さんがいるから二神で喚び出したのだけど……
『穢れの向こうの御方、イヅノメが泣いておる。土産を頼む』
「ごめんね。お菓子いっぱいあげるから」
『助かる』
「ねぇエンリさん、この人……神様達は?」
私がナオビ達とやり取りしていると、クラウス君がおずおず聞いてきた。
「ああ、この二神は穢れを祓う神様達だよ。本当は巫女神も合わせて三柱なんだけど、今回は美女巫女さんがいるから、ここの山の神に取り持ってもらおうと思って」
『美女……わ、我の事か? 山の神とは……山の核の事で良いかの?』
「この世界ではそうなるのかな、それを意識しててね」
心なしか頬を赤らめているように見える美女巫女さん。白い幽霊みたいだから分からないんだけどね。
「エンリ、危険は無いんだな?」
「大丈夫だよオル。頑張るのは神様達だから」
『案ずるな武の者。御方には何者も寄せつけぬ』
『御方には良からぬものは寄せつけぬ』
「じゃあ、お願いね!」
私がにっこり笑うと、何故かカムナオビもオオナオビも真っ赤になり、オルは苦虫を噛み潰したような顔になった。
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目の前にいる白く透けたやけにグラマラスな美女が、ゆらりと靄を揺らしてクラウス君へ向けていた視線をオルに向けてきた。
『おお、オルフェウス殿まで。そしてそこの女子は伴侶かの?』
「ああ、俺の、よ、嫁だ」
私の腰を引き寄せて、相変わらずぎこちなく紹介するオル。安定の可愛さだ。
「先見の巫女! お前は生きているのか!? 他の竜族は!?」
クラウス君が勢い込んで問いかけるも、白い美女は悲しげに俯く。
『今は生きてもいないが死んでもいない。一種の呪いをかけている状態じゃ。我ら竜族が無理やり邪竜化させられそうになっての』
「邪竜化!?人工的にそんな事が……」
『出来るんじゃろうな。魔王の遺産……残滓の力ならば』
全員に緊張が走る。
魔王の遺産とは、以前銀髪の勇者と共にいた聖女が狙われた時に使われた力だ。その時は私も聖女に力を貸した。なんせオルの姪御さんだったし、妹みたいな存在に思えたしね。
魔王の力は強い邪の力だ。
勇者は魔王を制したけど、その戦いで魔王は多くの邪を放った為、今でも戦いの残滓が残っている土地もある。国が回収しきれてないものを見つけ出したか、あるいは……
『あの者らは竜族全てを邪竜化せんとし、我はそれを止めるべく一族に呪いをかけた。水晶化の呪いを』
「それは……治るの?」
皆が口を開かない中、私は恐る恐る問いかける。クラウス君もマイコちゃんも、オルでさえも黙ったままだ。
『邪を無くすまで、このままじゃろう。水晶で浄化はしておるが、あの灰色の輩は魔王の遺産で多くの邪を撒きよった。この辺りはネズミ一匹怯えて来ぬよ』
美女巫女さんは悲しげにゆらゆらと揺れる。
『今すぐとはいかぬが、いつか我らが解放される日が来よう。何百年かかるか分からぬが、我はそれを見守っておるから安心せい』
邪の力で汚染されたここら一帯が正常に戻る日がいつになるのか……そして竜族も汚染されている。
まったくもって、あのクソ忌々しい灰色はゴミ以下だ。
クラウス君は血を流すくらいに拳を握りこんでいる。マイコちゃんが泣きながらその拳を開こうとしていて、オルはただ目をつぶって立っていた。
……あ。
「私達は大丈夫なの? 邪の力に汚染されたりとか」
『竜族は精霊に近い。邪なものに汚染されやすい体質じゃが、住処が清廉である限り影響はないのじゃ。敵は何故かそれを知っており、山自体を汚染しおった」
なるほど。
鼻から息を吸い、口からゆっくり息を吐く。
私の空気が変わったのが分かるのか、オルが私に何か言おうとして止めるのが分かった。うん。相変わらず私の事を分かってるよね。
二礼二拍手一礼し、そのまま集中すること数秒、幾何学模様の魔法陣が二つ展開されて私の周りが光り出す。
『これは……神力!?』
美女巫女さんが驚いた声を出し、クラウス君が静かにというゼスチャーをしているけど、もう大丈夫だよ。
【カムナオビ】【オオナオビ】
出てきた二神は、和な服装ではなく何故か白いツナギだった。顔はすごいイケメンで切れ長な瞳のメガネ男子と、ホストみたいな髪型のやはり切れ長の瞳の男子……どないやねん。
『穢れの向こうの御方、我らを喚んだか』
『イヅノメが居ないようだが……ああ、巫女は居るのか』
直毘の二神は、本当はイヅノメという巫女神を合わせて三柱だ。でも今回巫女の役割は美女巫女さんがいるから二神で喚び出したのだけど……
『穢れの向こうの御方、イヅノメが泣いておる。土産を頼む』
「ごめんね。お菓子いっぱいあげるから」
『助かる』
「ねぇエンリさん、この人……神様達は?」
私がナオビ達とやり取りしていると、クラウス君がおずおず聞いてきた。
「ああ、この二神は穢れを祓う神様達だよ。本当は巫女神も合わせて三柱なんだけど、今回は美女巫女さんがいるから、ここの山の神に取り持ってもらおうと思って」
『美女……わ、我の事か? 山の神とは……山の核の事で良いかの?』
「この世界ではそうなるのかな、それを意識しててね」
心なしか頬を赤らめているように見える美女巫女さん。白い幽霊みたいだから分からないんだけどね。
「エンリ、危険は無いんだな?」
「大丈夫だよオル。頑張るのは神様達だから」
『案ずるな武の者。御方には何者も寄せつけぬ』
『御方には良からぬものは寄せつけぬ』
「じゃあ、お願いね!」
私がにっこり笑うと、何故かカムナオビもオオナオビも真っ赤になり、オルは苦虫を噛み潰したような顔になった。
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