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北の山にいる竜族の事情

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そもそも寒い場所に爬虫類ってどうなのよって言ったら、それを竜族に言ったら殺されるぞと言われた。
猿と人間は違うだろと言われ、私は小猿と言われても怒らなかったと言ったら、そういう問題じゃないと説教された。
分かってます。分かってますから正座は許して。
ちょっと言いたかっただけなんですってば。


黄色に近いオレンジの髪に黄金色の瞳のクラウス君が、王都内にある拠点の宿まで走ってきた。
かなり慌てているらしく、髪と目の色を変えるのを忘れている。一緒にいたマイコさんが慌ててクラウス君にフードをかぶせていた。
宿の人が慌てている。お客さん達だけじゃなく、通りすがりにクラウス君を見てしまった人たちが皆「あの麗人は誰だ」と大騒ぎだ。
イケメンすぎるのも大変ねって言ったら、オルが美の神の加護持ちだといってた。
ただでさえイケメンなのに?と思ったけど、美の神は美しいものが好きだそうな。
それってどうなんだろう。まぁ良いけど。

「東はアズマ帝国いる兄さんがなんとかしてくれる。精霊の森は『元勇者』と『聖女』が見てくれてる。南は先代王妃サクヤ様が一時的に王権を握って指示出すみたい」

「え、そんなの事して大丈夫なの?」

「サクヤ様はあの国で神扱いなんだよ。現国王も極度のマザコンだし問題ないと思うよ」

ちょ、国王が極度のマザコンで問題ないって、不安しかないんですけど!
私の不安をオルが感じ取ったらしく、後ろからキュッと抱きしめてくれる。ホンワカした気持ちになれて嬉しいのだけど、耳を甘噛みするのはやめれ。色々ヤバいから。

「んん!……オルは自重しろ。君の大事な人が色気だだ漏れ顔になってるから。知らないよ」

「分かった。後にする」

「そうしとけ」

後でも嫌だよ!今日はゆっくり寝たいんだよ!……無理か……オルだし。
そんなオルはその精悍な顔に甘い笑顔を浮かべていたのを、一転させ緊張感溢れる空気を纏い、低いバリトンボイスでクラウス君に問う。くそ格好良いな。

「で、肝心の竜族はどうなっている?」

「長と連絡がつかない」

「北はお前の領地だろう?代官からも連絡はとれないのか?」

「そうなんだ。あいつの風で情報がつかめない筈は無いんだけど……」

クラウス君の美しく整った顔は憂いを帯び、大人なキラキラ王子オーラの威力がすごい。近くにいるマイコちゃんは大丈夫なのかと見てみると、ダメだった。ぽーっとした真っ赤な顔をしてらっしゃる。
それでもメモ帳らしき物にすごく書き込んでいるので、それもすごいと思う。

「エンリさんは?」

「ふぇ?私?……んー、私は竜族を知らないし、シナトベもここの神様じゃないからなぁ。直接行って調べるしか……」

「それはダメだ!」

「オル?」

「危険すぎる。竜族は強い」

オルが私を思いっきり抱きしめる。うぎゅ、苦しい、やめれ。

「さすがにそれは言えないよ。自分の領地の事は自分で解決するさ」

うーん、それにしてもなぁ……。

「やっぱやだよオル。友達が困ってるのに見てるだけなんて」

「エンリ……」
「エンリちゃん、でも……」

私は一般人だけど、この世界で反則みたいな力を持っている。それはオルのパートナーになるからというのもあるのかもだけど「オルの側にいる為には、力を持たなきゃいけない」からって事なんじゃないかな。

だって、オルは……伝説の、救国の騎士なんだから。

「オル、私は『私の力』の意味を考えると、危険でも行かなきゃいけないと思う」

私は。

「オルの側にいるために」

躊躇わない。













「我らが御方は決意したか」

「おお、血がたぎるのう」

「世界を渡ってしまった時は奴らを憎んだけど、これで良かったのかもね」

「弱い世界で神は力を振るえません」

「いつ呼んでくれるかなぁ」

「穢れの先の御方。きっと我らを導いてくださる」

八百万の声は静かに熱気を帯びて、その日を待っている。






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