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そういや回復系がいないよね
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国境を越えてアズマ帝国に入る。カッポカッポしながら街道を馬車で行く。
そして私は現在、腰痛に悩まされていた。
「こっちきて体力上がって、レベル上げもしたよ」
「すまん」
「私、頑張ってるよ」
「知ってる。すまん。俺がわるい」
ひたすら謝るオルと、プンスカ激オコの私。
連日連闘で、すっかり私は腰を痛めてしまっていた。馬車の室内でゴロゴロしている。寝ても起きても痛いぞ、ちくしょう。
「ポーションでも飲むか?痛みは治ると思うぞ」
「ポーション!そういえばこのパーティに回復系がいない!」
「まぁそうだな。俺はずっとソロだったから気にしてなかったが…」
「八百万に回復系っているのかな……よし」
柏手(かしわで)をすると、魔法陣が浮き上がる。回復系、回復系……
【スクナビコナ】
魔法陣が光って出てきたのは、三頭身な手のひらサイズの男の子。ヒサコバナって両脇に八の字の髪型に、聖徳太子の時代っぽいデザインの白い着物を着ている。
「やっと呼んだかエンリ。大事なくて良かった」
「か、可愛い!!!!」
「や、やめよ!我は神ぞ!」
可愛さのあまり、つい頬をすりすりさせてしまった。慌てて謝ると赤くなったスクナビコナがいた。やっぱり可愛い。うずうず。
「あ、ごめんごめん、腰が痛くて呼んだんだけど、あと戦闘になった時も呼ぶかも」
「うむ。我はエンリと番いの武人を守るよう言われておる。回復は任せよ」
「え?ツガイの武人?」
「タケミカヅチとフツヌシから聞いた。神に負けぬ剣技の使い手だと、神々の間で評判になっておる。さすが八百万の神の愛し子であるエンリの番いだと」
「ははは……嫁決定は良いんだけど、オルは神様ネットワーク内で有名なのね……ところで何で私って八百万の神様たちに好かれてるのかしら?」
「それは我からは言えぬ。言える神は限られておる。色々な神を呼び出して聞いてみるが良い」
「えー、なんか気になるよー」
「神格というものがある。高い神格を持つものを呼べ」
ちぇ、ケチだなぁ。
それよりも、私が八百万の神を召喚できるのは、やっぱり理由があったんだ。どういう理由にしろ、なんかろくな理由じゃない気がするなぁ。
「せっかくだ、エンリの体調を整えよう」
スクナビコナは私の額に手を当てると、淡い光に包まれ温かい何かが流れてくるのを感じる。数秒もかからず「終わったぞ」と言われた。
うわ、すごい、体がめっちゃ軽い。馬車の旅は慣れたつもりだったけど、やっぱ疲れてたのかもしれない。上機嫌で御者台にいるオルも回復するよう頼んでみる。
「あの武人を回復?必要ないぞ?」
「へ?だって夜もあまり寝てないし、ずっと御者してるんだよ?」
「ここの世界の神の加護がついてるようだな。常時回復されてるようだぞ。……これは反則ではないのか?」
「……まぁ、この世界は強い魂じゃないと生き残れないからね」
「また呼べ。エンリ」
そう言って消えた小さな神様は、オルのチートっぷりを一部明らかにして帰っていった。
私も常時回復してもらったほうが良いのか?
アズマ帝国の首都……帝都にはもうすぐ着く。
できる限り準備してきたつもりだけど、魔王を宗教にしてる奴らって一体……なんか宗教自体を否定しないけど、盲信してる人達は怖い。宗教で戦争になるくらいだ。怖い怖い。
「よし、着替えるか。俺らは新婚旅行中で帝都観光に来た」
「はい。旦那様」
「……鼻血出そう」
「ちょ、早くも設定が仇となってる!?」
オルが顔を真っ赤にして、口に手を当てて震えている。しっかりして旦那様!!
私はさっき買ったアジアンエロい服。オルは紺の着物の上から、複雑な刺繍が入った革鎧を左胸と肩に着けている。下は白のゆったりとしたズボンに黒の革靴だ。
はい。格好良いです。
帝都ではオルの顔を知られていないから視線は集中しないと思いきや、美筋肉で美丈夫なオルを見ない女性なんていないでしょう。
人の視線を意識しながら、帝都の入り口の検問で門番と話すオルは、どこぞの剣士様なのかと噂されておりますね……ううむ。やはりオル様は美中年なのよねぇ。
「エンリ」
こっち来いと手をくいくいっとされて、私に向かって甘く蕩けるような笑みを浮かべるオル様。
トテトテ側に行く途中で、お嬢さん方の熱い吐息が四方八方から聞こえます。あーうー。
「これが嫁のエンリです。通って大丈夫ですか?」
「あ、はい、ど、どうぞ」
門番さんがなぜかオドオドしている。きっとオルに威圧されたんだろう可哀想に……。
馬車に戻ってオルはため息をつく。
「まったく、エンリを呼ぶまで俺のツレだと信じてもらえなかった。あいつエンリを口説こうとしてやがって……やっちまうか」
「や」に「殺」が入りそうだ!落ち着いてオル!
獣のように逆立っているオルを宥めつつ、私達はアズマ帝国の帝都に無事(?)到着したのであった。
そして私は現在、腰痛に悩まされていた。
「こっちきて体力上がって、レベル上げもしたよ」
「すまん」
「私、頑張ってるよ」
「知ってる。すまん。俺がわるい」
ひたすら謝るオルと、プンスカ激オコの私。
連日連闘で、すっかり私は腰を痛めてしまっていた。馬車の室内でゴロゴロしている。寝ても起きても痛いぞ、ちくしょう。
「ポーションでも飲むか?痛みは治ると思うぞ」
「ポーション!そういえばこのパーティに回復系がいない!」
「まぁそうだな。俺はずっとソロだったから気にしてなかったが…」
「八百万に回復系っているのかな……よし」
柏手(かしわで)をすると、魔法陣が浮き上がる。回復系、回復系……
【スクナビコナ】
魔法陣が光って出てきたのは、三頭身な手のひらサイズの男の子。ヒサコバナって両脇に八の字の髪型に、聖徳太子の時代っぽいデザインの白い着物を着ている。
「やっと呼んだかエンリ。大事なくて良かった」
「か、可愛い!!!!」
「や、やめよ!我は神ぞ!」
可愛さのあまり、つい頬をすりすりさせてしまった。慌てて謝ると赤くなったスクナビコナがいた。やっぱり可愛い。うずうず。
「あ、ごめんごめん、腰が痛くて呼んだんだけど、あと戦闘になった時も呼ぶかも」
「うむ。我はエンリと番いの武人を守るよう言われておる。回復は任せよ」
「え?ツガイの武人?」
「タケミカヅチとフツヌシから聞いた。神に負けぬ剣技の使い手だと、神々の間で評判になっておる。さすが八百万の神の愛し子であるエンリの番いだと」
「ははは……嫁決定は良いんだけど、オルは神様ネットワーク内で有名なのね……ところで何で私って八百万の神様たちに好かれてるのかしら?」
「それは我からは言えぬ。言える神は限られておる。色々な神を呼び出して聞いてみるが良い」
「えー、なんか気になるよー」
「神格というものがある。高い神格を持つものを呼べ」
ちぇ、ケチだなぁ。
それよりも、私が八百万の神を召喚できるのは、やっぱり理由があったんだ。どういう理由にしろ、なんかろくな理由じゃない気がするなぁ。
「せっかくだ、エンリの体調を整えよう」
スクナビコナは私の額に手を当てると、淡い光に包まれ温かい何かが流れてくるのを感じる。数秒もかからず「終わったぞ」と言われた。
うわ、すごい、体がめっちゃ軽い。馬車の旅は慣れたつもりだったけど、やっぱ疲れてたのかもしれない。上機嫌で御者台にいるオルも回復するよう頼んでみる。
「あの武人を回復?必要ないぞ?」
「へ?だって夜もあまり寝てないし、ずっと御者してるんだよ?」
「ここの世界の神の加護がついてるようだな。常時回復されてるようだぞ。……これは反則ではないのか?」
「……まぁ、この世界は強い魂じゃないと生き残れないからね」
「また呼べ。エンリ」
そう言って消えた小さな神様は、オルのチートっぷりを一部明らかにして帰っていった。
私も常時回復してもらったほうが良いのか?
アズマ帝国の首都……帝都にはもうすぐ着く。
できる限り準備してきたつもりだけど、魔王を宗教にしてる奴らって一体……なんか宗教自体を否定しないけど、盲信してる人達は怖い。宗教で戦争になるくらいだ。怖い怖い。
「よし、着替えるか。俺らは新婚旅行中で帝都観光に来た」
「はい。旦那様」
「……鼻血出そう」
「ちょ、早くも設定が仇となってる!?」
オルが顔を真っ赤にして、口に手を当てて震えている。しっかりして旦那様!!
私はさっき買ったアジアンエロい服。オルは紺の着物の上から、複雑な刺繍が入った革鎧を左胸と肩に着けている。下は白のゆったりとしたズボンに黒の革靴だ。
はい。格好良いです。
帝都ではオルの顔を知られていないから視線は集中しないと思いきや、美筋肉で美丈夫なオルを見ない女性なんていないでしょう。
人の視線を意識しながら、帝都の入り口の検問で門番と話すオルは、どこぞの剣士様なのかと噂されておりますね……ううむ。やはりオル様は美中年なのよねぇ。
「エンリ」
こっち来いと手をくいくいっとされて、私に向かって甘く蕩けるような笑みを浮かべるオル様。
トテトテ側に行く途中で、お嬢さん方の熱い吐息が四方八方から聞こえます。あーうー。
「これが嫁のエンリです。通って大丈夫ですか?」
「あ、はい、ど、どうぞ」
門番さんがなぜかオドオドしている。きっとオルに威圧されたんだろう可哀想に……。
馬車に戻ってオルはため息をつく。
「まったく、エンリを呼ぶまで俺のツレだと信じてもらえなかった。あいつエンリを口説こうとしてやがって……やっちまうか」
「や」に「殺」が入りそうだ!落ち着いてオル!
獣のように逆立っているオルを宥めつつ、私達はアズマ帝国の帝都に無事(?)到着したのであった。
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