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茶飲み友達ができた

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「例えば、お湯になると湯気が出るじゃない?それを手に当てると水になるでしょ?
湯気は冷えると水になる。水は熱すると湯気になる。ここまで分かった?」

「ええ、分かりましたわ」

「ブレンドは後からでも出来るから、まずは一つ一つ作って行こう。花と実と種を用意して……」

紫縦ロール……ヘンリエッタさんは、持ってきた花を取り出し出す。
そこで私は密かに作っておいた「アロマオイル精製機」を出す。(名称適当)

熱する鍋と、蒸気を集めて管を通して冷却して落とすようになっている。それぞれに火の術式と氷の術式を組んであるのだ!(クラウス君が組んだ)
器具の部分は錬成魔法で作ったから、初めての共同作業ですよ。
ちなみに、クラウス君とあーでもないこーでもないとやってた日の夜は、オルの相手が大変だった……そんな私の、昼夜問わず努力した結晶の精製機なのである。ぐはぁ。

で。

あれから何度もヘンリエッタさんの来襲があったけど、その度にオルは殺気を放ち、王都は何度も危機に瀕した。
私は前回極めた「お色気作戦」で応戦するも、私の経験値不足からネタが切れてきて……そろそろヤバいと思ってた頃、私がつけていたアロマオイルにヘンリエッタさんが食いついてきた。
ヘンリエッタさん達、貴族で流行っている香水とは違うナチュラルな香り。それを極めればオルを振り向かせることが出来るのではないか……と。

で。

私の手持ちのアロマオイルが無くなってきたのもあり、じゃあ作っちゃえってなって。
ちょこちょこ私達の拠点にしている宿に集まるようになって、今に至る。

「これでオルフェウス様も振り向いてくれますわ!」

「えー、オルは私大好き人間だよ?しかも適性職業にオルの嫁って出てるくらいだよ?」

「な、なんですのそれ!ずるいですわ!」

「ずるいって言ってもなぁ、それにオルにどんな匂いが好きかって聞いたら、私の匂いだって言うし」

「あなたの匂い?ちょっと嗅がせなさいよ!」

「ちょ、やめ、くすぐったいよぉ!」

私の首あたりを、くんかくんかしてくるヘンリエッタさん。や、まじ、くすぐったいってば!

「…………おい。何やってんだ」
「なにこの百合百合しい状況」

相変わらず、私に近づく人間には無差別に殺気を放つオルと、呆れ果てたクラウス君が部屋に入ってきた。

「オル!クラウス君!もう、ヘンリエッタさんが私の匂いを嗅ぐんだよぉ」

「何でそんな事に」

「オルが私の匂いが好きって言うから…」

「オルフェウス様!お好みの匂いであると聞きましたの!」

オルはツカツカ私の所に来ると、そのままグイっと顎を持たれて深いキスをされる。

「なっ!?ななな何を!?」
「……またかよ」

真っ赤になってパニクるヘンリエッタさんと、無になるクラウス君、そして私は絶賛羞恥プレイ中です。誰か助けて。
オルのびくともしない大胸筋を懸命に叩く。くそう!もっとレベルを上げてやる!

「んん、んむぅ、ぷはぁ!ちょっとオル!」

「ん、エンリの匂いが強くなった」

「はい?」

戸惑う私の耳元でオルが囁く。

「昨日も夜も、めちゃくちゃいい匂いがした。すげー興奮した」

…………はぁ!?

って、何かい?それって私が……発情……むにゃむにゃって、分かるオルの鼻は犬並みか!!
こんな事、ヘンリエッタさんに説明できないよ!!

「分かりましたわ!!」

「「マジか!!」」

私とクラウス君がつっこみ、オルは我関せずで私の頭を撫でています。
ヘンリエッタさんが真面目な顔で、こちらを見て言いました。

「つまり、エンリさんの食生活や普段の状態を観察していたら、わたくしも匂いが近づけるかもしれませんわ!!」

「はぁ?」

「明日からは、お茶の時間に必ず伺いますわ!いらっしゃらない時は自習しますわ!」

「はぁ…」

何だかよく分からない理論で話が進んでいる。オルは安定の私を愛でる作業に余念がない。
無の表情で状況を見てたクラウス君が、さすがに意見を述べてくれた。

「ねぇヘンリエッタ嬢、オルを諦めるという発想はないの?俺は甘々なモノを見せつけられて、すぐさま帰りたいくらいなのに」

ごめん。クラウス君。

「オルフェウス様以上の方なんていらっしゃいませんわ!何度も来ている縁談も断ってますし、一応許嫁も居りますが、やり取りもないので解消されたと思いますの!」

ちょ、何か今すごい事をサラリと言ってませんでした?あとオルはいつまで私の頭を撫でてるの?
そう言えば……ヘンリエッタさんはオルとクラウス君の同級生で。クラウス君はオルの八つ下で。
ヘンリエッタさんって大体三十代前半?
クラウス君は見かけ二十代前半に見えるけど、年齢的には結構おっさんなんだな。

あれ?
この世界って、成人が十五歳くらいって聞いたけど、そうなるとヘンリエッタさんって……

「明日のお茶の時間にまた来ますわね!」

颯爽と縦ロールを揺らし去っていくヘンリエッタさんに、私は他人事とは思えない憐憫の情を抱くのでした。
そしてオルは私の頭を禿げ散らかす気なのでしょうか。


ドアが閉まると、クラウス君のため息がやけに大きく響きました。




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