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家族になろうってこと?

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わたくし森野えんりは…
異世界で憧れの騎士『オルフェウス・ガードナー』に出会い…
冒険者としてパーティを組もうと言われ…
お互いのラブラブな気持ちも確認し…
そして…
そして…


エンリ・ガードナーとして登録することになりました!!


って、おおおおおおおおおおいっっ!!!!

ちょ、オル先生、私はなぜガードナーを名乗ることになっちゃってるんですか!?
冒険者ギルドの中にある一室にて、私は盛大にパニクっていた。アワアワする私を不思議そうに見るオル。ちょ、何キョトン顔してるんすか。アンタのせいで私は絶賛挙動不審デスよ!?

「どうしたエンリ、何かおかしい所があるのか?」

どうしたもこうしたもないデショ!
真っ赤な顔になってるであろう私は、震える手でオルにパーティ申請書を渡す。

「あん?これのどこが…ぶっほ!!がはっ!!」

あ、むせてる。
様子のおかしい私達を見て、心配そうなギルド職員さん。
いや、たぶんだけど君が原因だと思うよ?オルは真っ赤な顔で咳き込んでるし、先にパニクった私は冷静になるのも早かった。

「あーびっくりした。オルがごりごり迫ってるのかと思ったわー」

「げほげほ…んなわけねぇだろ。そりゃいずれはと思ってるけどよ」

「いずれ…」

やっと引いた顔の熱が復活してしまった。いずれ…エンリ・ガードナー…えへへ…
照れつつ喜ぶ私を見て、オルは甘く微笑んで私の腰を引き寄せる。

「よし。このまま登録しようぜ。いいだろエンリ」

「ほえぇぁ!?」

「俺はもうエンリから離れる気はねぇし、エンリ以外とどうこうする気もねぇ。お前がこれからどうするか縛るつもりはなかったが、この世界にいる限りは俺の女であってくれ」

「オル……」

私を抱きしめたオルは、そのまま耳元で話し続ける。
腰に響くバリトンに意識が持っていかれそうになるのを必死に堪える私。

「お前が帰ることも止めねぇよ。それでも、俺にはエンリだけだ」

あ……もう……らめぇ……

「ん!んんん!!」

ギルド職員さんの咳払いで意識が覚醒する。やっべ!危なかったよ!やっべ!!
オルが舌打ちしてるけど、ここは冒険者ギルドですから。イチャつくのダメ。絶対。

「すみません。オルフェウス様は正式なパーティを組まれたことが一度も無く……うちの職員が先走って用意してしまったようです」

「いや、それはそれで…」

ギルド職員さんグッジョブ的な事を言ってる場合じゃないでしょオル。私はOK出してませんからね。
え?ダメなの?って、そんな悲しげな顔で見たって…見たって…イケメンおじさまの憂い顔が、私を萌え殺そうとしています。ええ、確かに萌えたぎっております。

うん。嬉しいよ。オルのお嫁さんってことでしょ?嬉しくないわけない!
でも…でも…

「分かった、とりあえず保留だ。一度宿に戻るぞエンリ」

「え?あ、はい…」

私の手を引いて、ギルドを出るオルに困惑する私。
怒ってる?私がハッキリしなかったから?
広い背中が冷たく見えて、急に悲しくなって視界がぼやける。いかんいかん、こんな事で泣いてる場合じゃない。オルの話を聞かなきゃ。

「オル、怒った?」

「怒ってねぇよ」

「パーティ、組まないの?」

「そうじゃねぇ。俺は自分にイラついてるだけだ」

「え?」

オルは私の手を引っ張って、そのまま抱きしめる。

「エンリを縛ろうとする俺が、情けなくてよ…みっともねぇだろ?」

「そんなことない、私が迷ってたから…」

抱きしめる腕に力が入る。私からオルの顔が見えない。

「私にとって、オルは憧れで、大好きな人で、何時間でも語れるくらいにオルが素敵な人だって知ってる。でもオルは私を知らないし、もし嫌われたらと思うと…」

「それは違う!!絶対無い!!」

慌てたように抱いてた私を離すと、オルは顔を真っ赤にして叫んだ。
ん?なぜ真っ赤?

「俺は、初めて会った時からエンリに惹かれてた。すげぇ俺好みの女だし、適正に俺のパートナーとかあるし、こんなオッサンを憧れとか、好き…とか…。だぁっ!!とにかく俺はお前に惚れてるんだよ!!」

「ふえぇぇ!?」

オルに負けず、私の顔も真っ赤だ。
そして拍手喝采が……え?

「救国の騎士が若い子を口説いてるぞ!」
「なんかうまくいったっぽい!?」
「女の子が可愛いな…巨乳ゲホゴホ」
「黒髪がお揃いで、お似合いの二人だわぁ」
「よっ!!仲良くしろよ!!」



ちょ、ここ、往来のど真ん中!!
いやああああぁぁぁ恥ずかしいいぃぃぃ!!!!


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