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ちょっとツラ貸せよって、今更かよ!

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「んあ?」

うっすら目を開ける。何も見えない。白いだけ。
眩しいくらいの真っ白な空間。
あくびを噛み殺し、起き上がってみる。
テントで寝ていたはずなのに、気づけば知らない場所にいる。この状況は…

「うむ。こりゃアレですな、アレ」

「うん。アレだよ」

突然現れる黒髪の少年。
TシャツにGパン、一見普通の中学生のように見えるけど、瞳はルビーのような赤だ。

「つか、この『神様と話す』ってやつ、遅くない?普通はこの世界に来る前にやるもんじゃないの?」

「おっしゃる通り!」

どこから取り出したのか『正解!』と書かれた旗を振っている。
なんだか変に芸が細かいな。

「で。あなたが『渡りの神』?」

「うん。ガイアは地球で頑張ってるよ。あそこにはたくさん神がいるけど、地球を守っているのはガイアだけだからね」

「んで、これはどういうこと?私はなんで呼ばれたの?帰れるの?」

ちょっとムカムカしてきた。元凶を目の前にしたら誰でもそうなるよ。ムカムカ。

「えっと…怒らず聞いてね?
本当は君に事前に話をしたかったんだけど、君を移動させた時、思った以上に八百万っていうの?神様達が怒っちゃってー。
色々宥めたり君の楽しそうな様子を見せて、納得させるまで時間がかかっちゃった」

やおよろず…って、日本の神様ってことかな?
なんだろう、特に信仰心が厚いわけではないのだけど…愛されてる感ハンパねぇっす。

「呼んだ理由はステータスにあったでしょ?オルフェウスのお嫁さんにどうかなって」

「ホワッツ!?」

「だって好きでしょ?オルフェウス。そういう子を選んだしむにゃむにゃ(…オルフェウスの好みど真ん中な)むにゃむにゃ」

なんか後半むにゃむにゃ聞こえないけど、オル様のことは大好物…大好きだ。間違いない。

「そうそう!ステータスの説明しなきゃ!」

「それそれ!もう、そのせいで大変だったんだよ!」

「あ、加護とかつけてから言うのも申し訳ないんだけど、これもう地球帰っても外れないから。あはは」

「あははってアンタ!!…まぁそれは良いんだけど、とにかく説明してよ説明!!」

「それは良いんだ…あ、はい、説明ね。
まず年齢はHPとMPをサービスしたら若返っちゃった。この世界は苛酷だから体力はいくらあっても良いでしょ?」

確かに…しょっぱな熊に追いかけられたもんな。

「基本、魔法はイメージすればその通りになるよ。ほら、よくアニメとかでやってる感じで大丈夫。
空間魔法は亜空間に荷物を格納できる、一度行ったところに行ける、結界を作れる。
この辺りはこの世界でもある魔法かな。使える人少ないけど。
あとレベル上げれば、この魔法で元の世界に帰れるよー」

「マジっすか!!」

なんか軽いな!変な裏とか無いでしょうね…使うとムニャムニャになるとか…

「裏とか無いし。便利でしょ?」

あ、はい、スミマセン。

「召喚魔法は、君の場合八百万の神限定で呼べる。戦闘とかでも、いつでも呼び出してほしいみたいだよ?」

「えーと、便利?ありがたみ?」

「便利って…まぁとにかく使ってみてね。
それと錬成魔法は、材料さえあれば武器以外を作れる。
これ、めっちゃ便利だね。さすがガイアだよね」

ま…まさか…

それって…

「ブラが!あと女の子グッズが作れる!?」

これは本当に死活問題だった!
魔道具とか色々便利なものがあると思いきや、現代日本のような便利グッズとか、女性の必須アイテムとかそういうのが見当たらなくて…自分で作ろうにもそんな器用じゃないし…
マジ助かった!!ガイア様…まさに神!!

「良かったねー」

渡りの神はニヤリとすると、ふわりと浮かんで一回転した。

「そろそろ君の保護者が泣いちゃうかも…だから帰ってあげて。
しょっちゅう動くから応えられないかもだけど、なんかあったら呼んでね!」

「え、ちょっと、そんな、なんだか説明が雑だったんですけど!?」

「じゃーねー」

「ちょ、おい、ゴルァ!!」

周りがどんどん明るくなって、眩しくなって、目が開けられなく……



……



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