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王都への道には一日千秋の思いが詰まってる

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「オル様ぁー」

「様はヤメロ」

「オルくん、オルたん、オルっぺ、オル太郎、オルヌンティウス」

「色々ツッコミてぇが、とりあえず最期のは何なんだよ」

「エンリスが最初王様に激怒して処刑になるんだけど、オルヌンティウスが身代わりになるんだ。そんでそれを阻止すべくエンリスは走るのよ」

「へぇ、良い話だな」

「まぁ、走る羽目になったのは、エンリスが飲んで騒いでどんちゃんしたから、約束の時間に遅れそうになって、さらにオルヌンティウスを見殺しにしようとモタモタしてたせいなんだけど」

「最低だなエンリ」

「私じゃないし!てゆか名前は仮名だし!」

乗り合い馬車にゆらゆら揺られて、私達は今、王都に向かっている。
私のおかしなステータスを確認してからの翌日、オル様は私を王都へ連れて行く宣言したのだ。

だがしかし!
私は仮にも社会人。あまりにもお世話になり過ぎではなかろうかと反論するも、オル様からお叱りを受ける。

「そんな意味不明なステータスの人間を、ふらふらさせておけねぇよ。俺一応 『元・王国騎士』だからよ」

騎士というのは、私たちの世界でいう警察みたいなものらしい。
あと、勇者が魔王を倒したけど、魔物はまだ出てくるそうだ。
私一人で王都に行くなんて自殺行為だと言われた。
森で私が襲われた熊もマッドベアという魔物だって言うし…怖いよこの世界。

んで。

今の私達は、ゆらゆら揺られて馬車の旅なのです。はぁ。
歩きより、良いんです。良いんですけどね。
座る所が木でできてるんで、振動でお尻が四つに割れそうなのですよ。六つもイケるかも。
腹以外にシックスバックは要らない。

「ねぇ、オルオル」

「何だそのふざけた呼び方は」

「あとどれくらいかかる?」

「早くてあと五日くらいだろう」

なぁーにぃー!?
それはヤバい。ガチでヤバい。
男なら黙って空気椅子!で凌げるでしょうが、私はか弱い女の子…(今何か聞こえたけど無視)…
このままじゃ、私、耐えられないよう…(お尻が)



野営の準備に取り掛かる人達。
私が手伝えることが少なく、とりあえず火の番を仰せつかった。
乗り合い馬車には、護衛代わりの冒険者さん達が乗っていて、ランクもそれほど高くない仕事とのこと。
魔物が出ることはすくないけど、万が一の事もあるから夜の見張りとかをしてくれるそうだ。

「オルオル~」

「それに固定なのかよ、勘弁してくれ」

「さっきの話なんだけどさ、短くする方法とかないの?」

「無理だな」

「だって、慣れてないんだもん。長いと痛くなっちゃう」

「どこが?」

「言わない!恥ずかしい!」

オル様はニヤリと笑う。ちくしょう。そんな顔もカッコ良くてずるい。

「何度か乗れば慣れる。我慢しろ」

「痛いのやだ」

「しょうがないな、薬使うか?」

「……うん。使う」

ふと気づくと、周りの注目を集めていた。生温かい目で見られてる。
うわ、恥ずかしい!お尻が痛いのバレた!
オル様から薬を奪うように受け取って、慌てて自分たちのテントに入った。
恥ずかしい…しばらくテントから出れないよぅ…

外から冒険者さん達の声が聞こえる。

「兄ちゃん、女の子には優しくしてやれよー」

「ん?ああ、分かってる」

「慣れるまで我慢とか、鬼かよ」

「は?」

「何度か乗れば慣れるってもんじゃねーだろー?兄ちゃんとの体格差を考えてやれ」

「なっ、ちょっと待て!お前ぇら違うからな!?」

「仲良くしろよー」

「違う!違うんだって!!」

なんか知らないけど、オル様が慌ててるな…。
ま、いっか。
いじわるして薬をなかなか出してくれなかったし。
冒険者さん達、ぐっじょぶ!



うう、薬効くかなぁ……
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