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伝説の騎士の話

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伝説の騎士『オルフェウス・ガードナー』は、十年前の大戦で勇者の仲間として共に魔王を倒し、世界を救った『救国の騎士』としても名を馳せている。
精霊と聖女の祝福を受けた『銀髪の勇者』と世の理を全て見通すと言われる『万能の魔法使い』と並べるには力不足かと、何も知らない人々は彼を過小評価しがちである。
だがそれは大きな間違いであり、彼を侮って痛い目を見た輩は数多くいる。
そして、彼の半生は常識を超えるものがあったことをここに記したい。

彼は平民として生まれ、教会で洗礼を受けた際『多神の加護』を受けたとされる。
神の加護を受ける人間は少なくはないのだが、大体が一神である為、彼の加護に村は大騒ぎとなる。
加護の神は軍神、剣神、力神などと言われているが定かではない。
勇者と目されるも、精霊の加護が無かった為『類稀な少年』だと認識される。
その村を統治する領主の庇護のもと、最高の教育や武芸を身につけて育つことになる。
十二才で村を飛び出し、日々の糧を得るべく冒険者となる。
冒険者でいう最高ランク『Sランク』になったのは彼が十五の時だ。その数年後、とある町を邪悪龍が襲い、単独で撃破したことから、国から特別に『SSランク』という新しいランクが作られ、それに認定される。
充分な報酬をもらった彼は、その後流浪の剣士となり各国で活性化する魔物の討伐隊に加わる。
それから二十五の年まで『最強の剣士』『殲滅の黒』など、二つ名で呼ばれることとなる。
(黒とは、彼の持つ黒髪からきているようだ)

彼の多大なる功績によって、国から名誉男爵を叙勲され『ガードナー』の家名を受ける。
そして数年後、彼は勇者と共に魔王討伐に参加することとなる。
それは本編で語っていた話であり、この本では『伝説の騎士・オルフェウス・ガードナー』の、魔王討伐より十年後から語りたいと思う。



==============================



「…っかぁーーー!!」

まるで一杯ビールを飲んだかのように声を出す私。
『銀髪の勇者シリーズ』の本編が終わってしまったので、意気消沈していたけれど…こんな美味しい続編が待っていたのなら、許す!許すぞ!苦しゅうない!
金曜の夜、缶ビールと枝豆を買い、家まで我慢できず本を開いてしまった。
児童書だから人前で堂々と読めないけど、夕方の公園は人も少なくて、街灯のそばにベンチもあるし…で、つい冒頭部分を読みふけってしまった。

だって…

だって…

最強の騎士、オルフェウス・ガードナーですよ!

勇者は十代だし、魔法使いは年齢不詳。
だったら三十路の騎士様はどストライクなわけで…。
しかも、魔王を倒して十年後だから、騎士は四十くらいでしょ?
挿絵を見ると黒髪短髪に青い瞳、体がムキムキの筋肉に包まれてて、切れ長の瞳は鋭く剣士としての強さ…みたいな、危ない感じがもう…!!
三十路半ばの私としては、四十路のおじさまにキュンキュンするわけですよ!!

ぽやんと頬を赤らめつつ妄想に耽る。
はっきり言って今、相当ヤバい顔をしていると自分でも分かる。

「…っと、家じゃないところで妄想してたら、職務質問されちゃうわー。早く帰って続き読まなきゃ」

慌てて立ち上がる私。
今日は金曜日。ビール良し。つまみ良し。

「しゅっぱーーーつ!!」

と、ウキウキ公園を出た直後。






私は、意識を失った。






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