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まずは一歩2
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家に帰った京は自分の部屋で三島さんのクローバーを修理するために、ビーズセットをとり出した。
まずはビーズの数を確認しなくてはいけない。
ビーズセットの中から小皿を何枚かとり出す。そして色ごとにビーズを分けて数えた。足りない分は京が持っているもので似たものを使うことにする。使うのは緑色のひし形に似たビーズだ。
京はクローバーの作り方がのっている本を出してきて、床に広げる。
「まずは……ワイヤー百センチ」
布製のメジャーで長さを測り、百センチのところで切った。次にビーズをとおす。
「輪っかになるようにして。次は……」
京は本を見ながら四つ葉のクローバーをつくる。
とちゅうでばんごはんに行ってからもどってくる。作業を再開して、ワイヤーをいろんなビーズにとおしているうちに、一つ目の葉っぱができた。時計を見るともう十時になっていた。一度手をとめて、勉強机の上に置いてあるカレンダーを確認する。
「明日からゴールデンウィークか。三日間休みで、次に行くのが金曜日。それで明日と明後日の二日間キャンプに行くから、集中して作れるのは一日だけ」
正直つくったことがないものを、たった一日で仕上げるのは大変だ。それでも京はなんとかしたかった。
きっとあのクラスなら、ばかにしてくる子などいない。だからがんばりたいのだ。三島さんのために、京自身のために。
京は二枚目の葉っぱをつくりはじめた。
しばらくするとドアをノックする音がした。「入るわよ」という言葉のあとにお母さんがドアを開けた。
「京、いい加減寝なさい。明日起きれないわよ」
「はあい」
京は仕方なく作業をやめ、歯磨きをしてからベッドに入った。
二日間のキャンプは楽しかったけれど、ふとビーズのことが気になり早く帰りたいと思うときもあった。しかしお父さんはキャンプ好きだとよくわかっているので、早く帰りたいとも言えなかった。
キャンプから帰ってくると、京はすぐに四つ葉のクローバーの修理を再開した。とちゅうだった二枚目の葉っぱを完成させる。
次の日の朝から、京はビーズをはじめた。次に三枚目の葉っぱづくりにとりかかる。三つ目にもなると慣れてきて、最初に比べて早くつくれるようになった。集中力が切れてきたころに、お昼ごはんを食べ、四枚目の葉っぱをつくる。明日までに完成させて、三島さんに渡したいのだ。
京は食事のとき以外はずっと手を動かし続けた。そして夕方の六時。ワイヤーを処理する。くきがついた、四つ葉のクローバーが完成した。
「やった、できたっ」
京はいろんな角度から四つ葉のクローバーを点検する。問題なさそうだ。
「よかったー、完成して」
京は小さなふうとうに、完成した四つ葉のクローバーを入れてランドセルにしまった。すると急に眠気がおし寄せてきて、ベッドにたおれるとそのまま眠ってしまった。
さらに次の日の金曜日、京は教室に着きランドセルを片づけると、三島さんの席にむかう。三島さんはほかの子とおしゃべりをしていた。
「三島さん、これ」
京は小さなふうとうを渡した。三島さんは首をかしげながら「開けていい?」と尋ねてきた。京はうなずく。三島さんは小さなふうとうを開け、中身を出すと目を丸くした。
「元にもどってる。なんで……?」
三島さんが不思議そうに京を見る。京は心臓がばくばくするなか、説明した。
「それ、わたしのおばあちゃんがくれた本にのってたの。だから直せるかもって思って」
「え、小川さんビーズできるの?」
三島さんの問いにぎこちなくうなずく。すると三島さんは目を輝かせた。
「すごいっ。お母さんは好きなんだけど、あたしはこういうの全然できないんだ」
三島さんは「見て見て」とほかの子に回していた。
「それ、テグス……ビニールのひもじゃなくって、ワイヤーっていう金属のひも使ってるから、前よりほどけにくいと思う」
京は三島さんに伝えた。
「小川さん、本当にありがとうっ」
三島さんの笑顔が見られて、京はとてもうれしくなった。
ゴールデンウィークも終わった、次の週の土曜日。京はほうかちゃんと約束をして、『モリス』にきた。
「わたしね、ビーズつくれたんだ」
京はほうかちゃんに三島さんのことを話した。するとほうかちゃんは拍手をして「おめでとうっ」と言ってくれた。
「じゃあ、これからまたいろいろとつくるの?」
「うん。そうしたいなって思ってる。ほうかちゃん、今までわたしに合わせてくれてありがとう。わがまま言ってごめんね」
「全然。それにここでつくりながら、いろいろ話せるの楽しいし」
「ありがとう。わたしね、これからビーズでいろいろつくれるの、かくさないでいようと思う。だから、もしほうかちゃんさえよかったら……、学校でも遊ばない?」
するとほうかちゃんの表情が明るくなった。
「うんっ。もちろんだよ」
「えへへ、ありがとう」
二人はにこにこと笑い合った。
もう一度、ビーズを楽しんでみよう。きっと今なら、あのクラスやほうかちゃんとなら、いろんな『初めて』を楽しいって思えるだろうから。
京は久しぶりに『初めて』を楽しみたいと思えた。まずはビーズの楽しさを思い出すために、花がつらなったブレスレットをつくることにする。
あることを思いついた京は、ほうかちゃんに尋ねた。
「ねえ、ほうかちゃんって何色が好き?」
「えっとねえ……オレンジ色」
「わかった」
京はオレンジ色のビーズを探した。数は十分ありそうだ。
「どうしたの? 急に」
「なーいしょ」
「えー、なになに?」
ほうかちゃんに何度も尋ねられたが、京は答えなかった。
オレンジ色のビーズを四つ、白いビーズ一つをワイヤーにとおす。ワイヤーをいろんなところにとおし、さらにオレンジ色のビーズを二つ追加すると、一輪の花ができあがった。その後いくつも花ができ、つらなっていく。そんな風にいくつも花をつくり、ときどき長さを確認した。時計を見る。あと三十分で門限になってしまう。早く完成させたい。
いつの間にか、京は話もせずに花をつくっていた。つらなった花を手で一番広いところに合わせる。できた。
ワイヤーの余った部分を切ると、ほうかちゃんの肩を小さくつついた。
「これ、あげる」
それはさっきまでつくっていた、花のブレスレットだ。
「すごいっ、かわいい。でもいいの?」
「うん。その……もらってほしくって。引っ越してきて、最初に友達になってくれたから。ありがとう」
ほうかちゃんは目をぱちくりさせたあと、うれしそうに笑った。
まずはビーズの数を確認しなくてはいけない。
ビーズセットの中から小皿を何枚かとり出す。そして色ごとにビーズを分けて数えた。足りない分は京が持っているもので似たものを使うことにする。使うのは緑色のひし形に似たビーズだ。
京はクローバーの作り方がのっている本を出してきて、床に広げる。
「まずは……ワイヤー百センチ」
布製のメジャーで長さを測り、百センチのところで切った。次にビーズをとおす。
「輪っかになるようにして。次は……」
京は本を見ながら四つ葉のクローバーをつくる。
とちゅうでばんごはんに行ってからもどってくる。作業を再開して、ワイヤーをいろんなビーズにとおしているうちに、一つ目の葉っぱができた。時計を見るともう十時になっていた。一度手をとめて、勉強机の上に置いてあるカレンダーを確認する。
「明日からゴールデンウィークか。三日間休みで、次に行くのが金曜日。それで明日と明後日の二日間キャンプに行くから、集中して作れるのは一日だけ」
正直つくったことがないものを、たった一日で仕上げるのは大変だ。それでも京はなんとかしたかった。
きっとあのクラスなら、ばかにしてくる子などいない。だからがんばりたいのだ。三島さんのために、京自身のために。
京は二枚目の葉っぱをつくりはじめた。
しばらくするとドアをノックする音がした。「入るわよ」という言葉のあとにお母さんがドアを開けた。
「京、いい加減寝なさい。明日起きれないわよ」
「はあい」
京は仕方なく作業をやめ、歯磨きをしてからベッドに入った。
二日間のキャンプは楽しかったけれど、ふとビーズのことが気になり早く帰りたいと思うときもあった。しかしお父さんはキャンプ好きだとよくわかっているので、早く帰りたいとも言えなかった。
キャンプから帰ってくると、京はすぐに四つ葉のクローバーの修理を再開した。とちゅうだった二枚目の葉っぱを完成させる。
次の日の朝から、京はビーズをはじめた。次に三枚目の葉っぱづくりにとりかかる。三つ目にもなると慣れてきて、最初に比べて早くつくれるようになった。集中力が切れてきたころに、お昼ごはんを食べ、四枚目の葉っぱをつくる。明日までに完成させて、三島さんに渡したいのだ。
京は食事のとき以外はずっと手を動かし続けた。そして夕方の六時。ワイヤーを処理する。くきがついた、四つ葉のクローバーが完成した。
「やった、できたっ」
京はいろんな角度から四つ葉のクローバーを点検する。問題なさそうだ。
「よかったー、完成して」
京は小さなふうとうに、完成した四つ葉のクローバーを入れてランドセルにしまった。すると急に眠気がおし寄せてきて、ベッドにたおれるとそのまま眠ってしまった。
さらに次の日の金曜日、京は教室に着きランドセルを片づけると、三島さんの席にむかう。三島さんはほかの子とおしゃべりをしていた。
「三島さん、これ」
京は小さなふうとうを渡した。三島さんは首をかしげながら「開けていい?」と尋ねてきた。京はうなずく。三島さんは小さなふうとうを開け、中身を出すと目を丸くした。
「元にもどってる。なんで……?」
三島さんが不思議そうに京を見る。京は心臓がばくばくするなか、説明した。
「それ、わたしのおばあちゃんがくれた本にのってたの。だから直せるかもって思って」
「え、小川さんビーズできるの?」
三島さんの問いにぎこちなくうなずく。すると三島さんは目を輝かせた。
「すごいっ。お母さんは好きなんだけど、あたしはこういうの全然できないんだ」
三島さんは「見て見て」とほかの子に回していた。
「それ、テグス……ビニールのひもじゃなくって、ワイヤーっていう金属のひも使ってるから、前よりほどけにくいと思う」
京は三島さんに伝えた。
「小川さん、本当にありがとうっ」
三島さんの笑顔が見られて、京はとてもうれしくなった。
ゴールデンウィークも終わった、次の週の土曜日。京はほうかちゃんと約束をして、『モリス』にきた。
「わたしね、ビーズつくれたんだ」
京はほうかちゃんに三島さんのことを話した。するとほうかちゃんは拍手をして「おめでとうっ」と言ってくれた。
「じゃあ、これからまたいろいろとつくるの?」
「うん。そうしたいなって思ってる。ほうかちゃん、今までわたしに合わせてくれてありがとう。わがまま言ってごめんね」
「全然。それにここでつくりながら、いろいろ話せるの楽しいし」
「ありがとう。わたしね、これからビーズでいろいろつくれるの、かくさないでいようと思う。だから、もしほうかちゃんさえよかったら……、学校でも遊ばない?」
するとほうかちゃんの表情が明るくなった。
「うんっ。もちろんだよ」
「えへへ、ありがとう」
二人はにこにこと笑い合った。
もう一度、ビーズを楽しんでみよう。きっと今なら、あのクラスやほうかちゃんとなら、いろんな『初めて』を楽しいって思えるだろうから。
京は久しぶりに『初めて』を楽しみたいと思えた。まずはビーズの楽しさを思い出すために、花がつらなったブレスレットをつくることにする。
あることを思いついた京は、ほうかちゃんに尋ねた。
「ねえ、ほうかちゃんって何色が好き?」
「えっとねえ……オレンジ色」
「わかった」
京はオレンジ色のビーズを探した。数は十分ありそうだ。
「どうしたの? 急に」
「なーいしょ」
「えー、なになに?」
ほうかちゃんに何度も尋ねられたが、京は答えなかった。
オレンジ色のビーズを四つ、白いビーズ一つをワイヤーにとおす。ワイヤーをいろんなところにとおし、さらにオレンジ色のビーズを二つ追加すると、一輪の花ができあがった。その後いくつも花ができ、つらなっていく。そんな風にいくつも花をつくり、ときどき長さを確認した。時計を見る。あと三十分で門限になってしまう。早く完成させたい。
いつの間にか、京は話もせずに花をつくっていた。つらなった花を手で一番広いところに合わせる。できた。
ワイヤーの余った部分を切ると、ほうかちゃんの肩を小さくつついた。
「これ、あげる」
それはさっきまでつくっていた、花のブレスレットだ。
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「うん。その……もらってほしくって。引っ越してきて、最初に友達になってくれたから。ありがとう」
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