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その後……辺境の医術師の話と《蘇芳プロジェクト》

その後……ちぃちゃんの独り言2

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《ちぃちゃん目線》
赤ん坊の話

~*~~*~~*~

ゆいつむぎ。縁を結び、未来を紡ぐなんてどうだろう。この子たちにふさわしいと思う」

 えっへん!

と胸を張ってるが、じい様……何で、猫の着ぐるみなんだ?
 俺は一応、成人用はジャケットしか用意してないぞ。

とつい聞いてしまった。
 すると、

「おそろいも似合いますよと、もらったのだ。普段はパジャマにしているが、今日は慌てて着替えていない」
「姉さんだな……」

 兄の嫁作なのか……めちゃくちゃ才能あるのに、微妙に自分の欲望に忠実な人だ。
 しかも、ひ孫や玄孫までいるのに、着ぐるみ姿でカズール領から王都まで来る勇気がすごい。
 途中で着替えられるはずだが……どこかで面白がる輩がいたと見た。

「しかし……かわいいなぁ……男の子の方が淡い色の髪で、もう一人は濃い色か……」
「男の子はシュウに似てるのかな? 女の子は隼人かなぁ?」

 涙ぐむ父さんの横で、ワクワクしてるシエラ叔父。
 まだ俺も抱いてないし!
 それに迂闊すぎるシエラ叔父に、まだ小さい二人を抱かせるのは絶対ダメだ。

「パパ! 赤ちゃんここにいるの?」

 声が聞こえる。
 振り返ると、パジャマのまま、現れた俺の子供たち。
 彩映の両手を、千夏と風深がそれぞれ握っている。
 出産の予定より少し早かったから、三人はぐっすり寝ていたのだ。

「あ、千夏、彩映、風深。ママと会った?」

 ゆっくりと話しかける。
 今はボードを持ち歩いていない。
 でも、読唇術の練習中の彩映にも、きっとわかってもらえるはずだ。

「うん。ちょっと眠たそうだったから、すぐに出てきたよ」

 千夏が答える。
 風深は微妙な顔だ。
 まぁ、最近ちょっと赤ちゃん返りしていたからな……長い間末っ子だったし、しばらく見守ってみよう。

「えっと、パパ。赤ちゃん、男の子と女の子ってほんと?」

 おいでおいでと手招きする父さんが、彩映を抱き上げたので、俺は風深を抱いて、ベビーベッドの上からよく見えるように覗き込む。

「こっちの淡い髪の色の大きい子が男の子。風深の弟。こっちのちょっと小さい子が妹。ちっちゃいだろ?」
「ねえ、パパ。なんで透明な箱の中にいるの?」
「妹がちょっと小さいんだ。もしかしたら肺……息をするのが苦しいかもしれないから、この透明な膜はそのサポートをするものだって。二、三日様子を見て、大丈夫だったらママの部屋に移るよ」
「……心配だね」
「うん、風深。パパは、風深にすぐにお兄ちゃんになってって言わないよ。代わりに、パパがお仕事の時、ママが困ってたら手助けしてほしいんだ。ほら、千夏はトレーニングや今度カズールにお勉強に行くからね?」

 栗色の風深の髪を撫でる。

「パパは、千夏と風深と彩映が大好きだから」
「……うん!」
「でも、知ってるかな? 風深は兄弟の中で一番大きかったんだよ?」

 ゆっくり話す。

「千夏が2番目。一番小さかったのが……」
「この子?」

 風深は妹をさす。

「ううん、一番小さかったのは、彩映。もうちょっと小さかったよ」
「そうなんだ……初めて聞いた」
「そうだね~? 今度ママと一緒に話してみよう」



 それから、二人はそれぞれ、結と紬になった。
 それに、身体も何も問題ないと太鼓判をもらっている。
 風深はというと、赤ちゃん返りもほとんどなく、何かしら荷物を運んだり双子の着替えを持ってきたりしてくれるようになった。
 代わりに、赤ちゃん返りというか、甘えん坊になり、俺や日向夏について歩くようになったのは彩映だった。
 記憶は戻っていないようだと診察してくれた先生は言っていたけれど、何か不安になっているのかもしれないと、時々、俺が散歩に連れて行ったり、日向夏が子供達を預けて一緒にお昼寝をしたりすることにした。
 その心配は家族で前もって話し合っていたので、時々、月姉やレクたちも手伝ってくれた。



「ほんとに助かるわぁ……千夏はしっかりしてるし、風深も時々、『白湯かママに大丈夫なハーブティーを淹れてもらうね?』 って言うのよ。彩映も二人を見守ってくれるし、泣いてるって教えてくれるの」
「えっ? 俺は? 俺もパパしてるでしょ?」
「お風呂は二人一緒って難しいから、ちぃがいれてくれるのありがたいわ。あ、そういえば、今日ね? 結が彩映が声かけたら瞬きしたりして反応したの。彩映が喜んでたわ」
「へぇ……俺も、声かけてたら瞬きとかしてくれるかな」

 双子を少しの間預けて、二人でこういう風に話すのも楽しいし、これから楽しみだ。
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