46 / 68
番外編を集めてる^_^ ねこネコ(=^ェ^=)
番外編……彩映とボク
しおりを挟む
ボク……えっと、普段はオレって言っているけど、本当はまだボクが言いやすいんだよね。
改めて、ボクは千夏。
《ちなつ》でも《ちか》でもない。
ボクには父さんと母さんと、弟の風深、そして、一番大事な彩映がいる。
父さんは黙ってるとかっこいいんだけど、母さんの前ではデレデレ甘々。
まぁ、父さんは小さい頃から母さんが好きで、他の人には目も向けなかったらしい。
しかも母さんをいかに愛でるか、いかに可愛く装うかを研究するためだけに騎士の勉強をしつつ、遠縁のレイル家のデザイナー姉妹に頼み込み、型紙の起こし方、縫製、初歩のデザインを学んだ。
そして、ボクの伯母さんになる、セイ伯父さんの奥さんには……。
「なんで、パパはボクにこう言うパジャマ着せたがるんだろう……」
絶望的な気持ちで、ベッドの上に並べた夜着を見下ろした。
一応ボクは、この年の男の子にしては高い方。
ほら、成長期になるまで、同年代の女の子の方が大きいって言うものね?
それに、彩映の兄だったアイツは、ボクより一つ上だけど上にも横にも大きかった。
アイツ……ちょっとワガママだったけど、悪い子じゃなかった。
頭良いと思ってた。
おじいちゃんになる彗おじさんに持ってる色似てたから、ちゃんとこれは良い、これはダメって教えてたらよかったと思うんだ……妹はあのオバサンに似てバカだけど。
うん、あのオバサン……ものすっごく嫌い。
パパは人を傷つけるとか、武器を持つ意味をこれからきちんと理解しなさいって言ってた。
小さい頃の、おもちゃの取り合いのケンカのようなものじゃない。
血は出るし痛い。
悪口も人の心を傷つける。
それを理解しないまま大きくなったらダメ。
特に彩映は一方的に手をあげられたり、言葉の刃をこれでもかってふるわれた。
愛情も与えられなかった。
抜け殻みたいになった。
記憶もなくなって……ボクを初めて会う、知らない人のように見た。
哀しい……苦しい……。
それに、もう絶対泣かせない。
ボクが一生そばにいるって決めた……んだけど……。
「これは……ないよね?」
情けなくなった。
白いモコモコふわふわの着ぐるみパジャマ。
ちなみに、同じ色のフードには丸いつのが2本。
……これってヒツジ?
これを着なさいって言うのかな……ボク、今度王宮にあるヴィクトール大学院附属の基礎研究科……初等科に入るんだけど……。
一応、この基礎研究科って進学クラスで、ボクは医術を学ぶつもりなんだけど……。
父さんだって昔はよく着せ替えさせられて……微妙だったって言ってたのに……。
しばらく考えたけど、昼の服で寝るのも嫌だなぁ……寝るだけだしいいか。
横になって寝ていると、ボクの部屋の扉が開いたみたい。
みたいというのは……しょっちゅう父さんが部屋に来るから。
子煩悩で母さんを愛してる父さんは、この国でも有名。
いつものこと……と思っていると、
すんっ、すんっ……と、鼻をすする声が聞こえてパッと目を開けた。
お気に入りのうさぎを腕に抱いた彩映が、ベッドのそばに歩いてきてる。
「ちなちゃん……ふえぇ……」
「どうしたの?」
ボクは慌てて起き上がる。
あぁ、ボクはものすっごく彩映の涙に弱いんだ。
耳が聞こえない……ボクの声が伝わらないのがとってももどかしい。
手を伸ばしてギュッと抱きしめる。
ボクと同じようなパジャマを着てるのに、全身冷え切ってて、震えてる。
慌ててベッドに寝かせてボクごと毛布と布団に包む。
「黒い……女の人……の夢……」
抱きしめた腕の中、怯え切った震える声。
あぁぁ……あのオバサンの夢……。
「大丈夫だよ。父さんと母さんがいる。そんなオバサン来るなってボクが追い払うから!」
聞こえてないのは分かってる。
でも、君には伝えないと……。
耳元で何度も繰り返す。
「大丈夫……? 本当?」
伝わった?
「うん、本当!」
大好きな彩映……可愛い彩映。
ボクが絶対、守る。
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
「おーい……起きなさい。千夏」
「……おはよう、父さん。おやすみなさい……」
「千夏、朝練は?」
「ボク、今日は嫌」
オレ……千夜が毎朝苦労していることがある。
オレには二人の息子と可愛い娘がいる。
そのうち長男が……
「起きなさいって。遅刻するよ」
「いい……ボク、彩映と寝る……」
「起きろって、それに彩映はぬいぐるみじゃない。ぎゅーぎゅー抱くんじゃありません!」
「やだぁ……彩映はボクの。パパにもあげない」
長男の寝起きが非常に悪い。
ついでに、寝ぼけてるのか、本心か……いや、これは本心だな。
しっかり目が覚めたら、自分のことは《オレ》だもんな……。
「今のうちに起きなさい。後でなんでちゃんと起こしてくれなかったのって言われても、父さん知らないからね?」
「うん……いい」
「本当にいいんだね?」
「……」
くぅくぅ……
寝息を立てている可愛い子供達に、まぁ、いいかと毛布を直したのだった。
その後、ヒツジのパジャマを着て熟睡中の二人の映像を見て身悶える千夏がいたのだった。
一応、オレや日向夏が撮ったものではないことだけ断っておく。
改めて、ボクは千夏。
《ちなつ》でも《ちか》でもない。
ボクには父さんと母さんと、弟の風深、そして、一番大事な彩映がいる。
父さんは黙ってるとかっこいいんだけど、母さんの前ではデレデレ甘々。
まぁ、父さんは小さい頃から母さんが好きで、他の人には目も向けなかったらしい。
しかも母さんをいかに愛でるか、いかに可愛く装うかを研究するためだけに騎士の勉強をしつつ、遠縁のレイル家のデザイナー姉妹に頼み込み、型紙の起こし方、縫製、初歩のデザインを学んだ。
そして、ボクの伯母さんになる、セイ伯父さんの奥さんには……。
「なんで、パパはボクにこう言うパジャマ着せたがるんだろう……」
絶望的な気持ちで、ベッドの上に並べた夜着を見下ろした。
一応ボクは、この年の男の子にしては高い方。
ほら、成長期になるまで、同年代の女の子の方が大きいって言うものね?
それに、彩映の兄だったアイツは、ボクより一つ上だけど上にも横にも大きかった。
アイツ……ちょっとワガママだったけど、悪い子じゃなかった。
頭良いと思ってた。
おじいちゃんになる彗おじさんに持ってる色似てたから、ちゃんとこれは良い、これはダメって教えてたらよかったと思うんだ……妹はあのオバサンに似てバカだけど。
うん、あのオバサン……ものすっごく嫌い。
パパは人を傷つけるとか、武器を持つ意味をこれからきちんと理解しなさいって言ってた。
小さい頃の、おもちゃの取り合いのケンカのようなものじゃない。
血は出るし痛い。
悪口も人の心を傷つける。
それを理解しないまま大きくなったらダメ。
特に彩映は一方的に手をあげられたり、言葉の刃をこれでもかってふるわれた。
愛情も与えられなかった。
抜け殻みたいになった。
記憶もなくなって……ボクを初めて会う、知らない人のように見た。
哀しい……苦しい……。
それに、もう絶対泣かせない。
ボクが一生そばにいるって決めた……んだけど……。
「これは……ないよね?」
情けなくなった。
白いモコモコふわふわの着ぐるみパジャマ。
ちなみに、同じ色のフードには丸いつのが2本。
……これってヒツジ?
これを着なさいって言うのかな……ボク、今度王宮にあるヴィクトール大学院附属の基礎研究科……初等科に入るんだけど……。
一応、この基礎研究科って進学クラスで、ボクは医術を学ぶつもりなんだけど……。
父さんだって昔はよく着せ替えさせられて……微妙だったって言ってたのに……。
しばらく考えたけど、昼の服で寝るのも嫌だなぁ……寝るだけだしいいか。
横になって寝ていると、ボクの部屋の扉が開いたみたい。
みたいというのは……しょっちゅう父さんが部屋に来るから。
子煩悩で母さんを愛してる父さんは、この国でも有名。
いつものこと……と思っていると、
すんっ、すんっ……と、鼻をすする声が聞こえてパッと目を開けた。
お気に入りのうさぎを腕に抱いた彩映が、ベッドのそばに歩いてきてる。
「ちなちゃん……ふえぇ……」
「どうしたの?」
ボクは慌てて起き上がる。
あぁ、ボクはものすっごく彩映の涙に弱いんだ。
耳が聞こえない……ボクの声が伝わらないのがとってももどかしい。
手を伸ばしてギュッと抱きしめる。
ボクと同じようなパジャマを着てるのに、全身冷え切ってて、震えてる。
慌ててベッドに寝かせてボクごと毛布と布団に包む。
「黒い……女の人……の夢……」
抱きしめた腕の中、怯え切った震える声。
あぁぁ……あのオバサンの夢……。
「大丈夫だよ。父さんと母さんがいる。そんなオバサン来るなってボクが追い払うから!」
聞こえてないのは分かってる。
でも、君には伝えないと……。
耳元で何度も繰り返す。
「大丈夫……? 本当?」
伝わった?
「うん、本当!」
大好きな彩映……可愛い彩映。
ボクが絶対、守る。
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
「おーい……起きなさい。千夏」
「……おはよう、父さん。おやすみなさい……」
「千夏、朝練は?」
「ボク、今日は嫌」
オレ……千夜が毎朝苦労していることがある。
オレには二人の息子と可愛い娘がいる。
そのうち長男が……
「起きなさいって。遅刻するよ」
「いい……ボク、彩映と寝る……」
「起きろって、それに彩映はぬいぐるみじゃない。ぎゅーぎゅー抱くんじゃありません!」
「やだぁ……彩映はボクの。パパにもあげない」
長男の寝起きが非常に悪い。
ついでに、寝ぼけてるのか、本心か……いや、これは本心だな。
しっかり目が覚めたら、自分のことは《オレ》だもんな……。
「今のうちに起きなさい。後でなんでちゃんと起こしてくれなかったのって言われても、父さん知らないからね?」
「うん……いい」
「本当にいいんだね?」
「……」
くぅくぅ……
寝息を立てている可愛い子供達に、まぁ、いいかと毛布を直したのだった。
その後、ヒツジのパジャマを着て熟睡中の二人の映像を見て身悶える千夏がいたのだった。
一応、オレや日向夏が撮ったものではないことだけ断っておく。
0
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
死に戻り公爵令嬢が嫁ぎ先の辺境で思い残したこと
Yapa
ファンタジー
ルーネ・ゼファニヤは公爵家の三女だが体が弱く、貧乏くじを押し付けられるように元戦奴で英雄の新米辺境伯ムソン・ペリシテに嫁ぐことに。 寒い地域であることが弱い体にたたり早逝してしまうが、ルーネは初夜に死に戻る。 もしもやり直せるなら、ルーネはしたいことがあったのだった。
『聖女』の覚醒
いぬい たすく
ファンタジー
その国は聖女の結界に守られ、魔物の脅威とも戦火とも無縁だった。
安寧と繁栄の中で人々はそれを当然のことと思うようになる。
王太子ベルナルドは婚約者である聖女クロエを疎んじ、衆人環視の中で婚約破棄を宣言しようともくろんでいた。
※序盤は主人公がほぼ不在。複数の人物の視点で物語が進行します。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる