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ぐはぁ!!テディベアへの愛は永遠です!!

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 3人が……特に亮の膝で、きゃっきゃとはしゃぐ琉璃に、瑾瑜は、

「あの子は……」
「私の妹だよ。瑾瑜兄さん」

気だるげに、それでいて女装はバッチリの月英は、微笑む。

「良く似てるでしょ?」
「いや、月英は、美女顔だが、あの子は童顔。作りも違うが……」
「良いじゃないの!!」
「可愛ければすべてよし!!」

 瓜二つの美女というより、きりっとした顔立ちのオリンピック強化選手姉妹である紅瑩と晶瑩は、兄を蹴り飛ばし、

「で?で?月英。亮はどう?」
「いちゃいちゃデレデレしてる!?」

晶瑩と同じ年で、紅瑩は先輩である月英は、

「そうね。見た通りよ?」

と、膝の上で、目に留まったぬいぐるみを見上げるようにしてニコニコと見せる琉璃に、微笑む亮。

「あの通り。それに不眠症でしょ?亮って。でも、時々二人でうたた寝してるわよ。遊びすぎたのか、すよすよ寝てる琉璃を抱いて」
「あらあら……亮があんな顔をするなんて」
「良いわねぇ……若いって」
「何言ってるのよ。どこのおばさま!?嫌よ?同じ年の晶瑩がそんなことを言うと、私のこの努力している美貌が……」

 月英は頬に手を当てる。

「本当に、老けたんじゃないでしょうね!?」
「失礼だわ!!もうっ!」

 拗ねる二人に、クスクスと、義母の瑶樹が笑う。

「二人とも、月英さんは冗談をいっただけよ。貴方たちの美しさは私が保証してよ!!自慢の娘ですもの!!」
「お母様には負けるわ、私は」

 とりたてて美女……ではないのだが、瑶樹は可憐で優雅で美しい。
 妖艶ではなく快活さと暖かさのある女性である……が、

「まぁ……!!せ、先輩でしたの!?す、すみません!!この子達にかまけていて!!」

瑠璃がドレスの裾を直しつつ立ち上がる。

「久しぶりね!!瑠璃。ぬいぐるみ好きも変わっていないわ」
「すみません……どうしても、ぬいぐるみを見ると我を忘れてしまって……」

 赤くなった頬を押さえる。

「会長と、娘と遊んでも良いと言われて、でも、ぬいぐるみにかまけてしまって……駄目ですわね」
「娘さん?」
「はい。娘の琉璃です。……本当は、麗月の娘ですわ。麗月が逝ってから……何度か引き取りたいと……夫に訴えたのですけれど……」

 表情を陰らせる。

「その夫も……幾度も浮気に、私の宝石や主催者の方から預かっている装飾、バッグ、靴にドレスを持ち出しては……」
「まぁ……!!」
「……私事ですけれど……もう駄目だと……家を出てきましたの。そうしたら、行方不明だった琉璃に……この子に会えましたの」

 琉璃を見て涙ぐむ瑠璃に、瑶樹は、

「あの麗月の娘……そうだったの!!」
「えぇ……この子は麗月の娘であり、私の娘ですわ」

瑠璃は、瑶樹とその回りの3人の男女に、優雅に頭を下げる。

「ご挨拶が遅くなりまして、申し訳ありません。私は瑠璃と申します。貂蝉とは、仕事上の名前です。瑠璃と呼んでくださいませ」
「こ、こちらこそ、ご挨拶が遅れ、申し訳ありません!!」

 瑾瑜は、立ち上がり挨拶をする。

「諸岡瑾瑜と申します。一応……」
「歴史文化学に、文学の学者様ですわね。この間、読ませていただきましたわ。『歴史と小説、伝承の変化』について……とても読みやすくて、素晴らしかったですわ」
「あ、ありがとうございます!!知って戴いているとは、思ってもみませんでした」

 珍しく顔や首筋まで赤くなり照れる青年に、

「いいえ。あの本は分かりやすくて、私は、時々舞台に出ますけれど……とても、歴史的に解りづらいものがあって、難しくて……悩んでおりましたの。でも読んでみて、それを台本と、歴史の本と比べることによって、ここはこう演じればと、ためになりましたわ!!」

微笑むと、二人の姉妹を見て、

「まぁ!!諸岡様のお二人ですわね!!凄いですわ!!あの集中力に瞬発力……小柄なのに、相手に氣圧せず真っ直ぐ前を見て、挑む姿!!凛々しいですわ!!」

きゃっきゃとはしゃぐ姿は娘とそっくり……と言うよりも、女学校の凛々しい先輩に目を輝かせる後輩のようである。
 美女である……月の女神のような美女が、ミーハーだったことに、姉妹は唖然とする。

と、はっと我に返ったのか、

「ご、ごめんなさい……私、本当はダメダメなモデルなのよ……もう少し、その姿らしく凛々しい存在に……とか言われても良く解らなくて……仕方がないので、瑶樹お姉さまと麗月に、貴方はこういう風に振る舞うと良いわとか……でも、どうしても、ぬいぐるみ集めとかはやめられなくて……」
「ぬ、ぬいぐるみですか?」
「そうなの。自分で作りたいけれど、器用ではなくて……気に入ったぬいぐるみとか……買いたくても、買えないでしょう?このイメージを壊すからって……だから泣く泣く諦めていたら……目の前に!!あぁぁぁ!!私!!この子達の為なら、何だってやりますわ!!」

ものすごい勢いに気圧される二人に、瑶樹は苦笑しつつ、

「この子は昔からそうなのよ。こんなに凛とした風情の美女なのにこの性格だから……ライバルとか、そういうものは思えなかったわ……」
「ららら、ライバルって……お母様!?」

晶瑩の問いかけに瑠璃は、

「お姉様、言ってませんでしたの?」
「どうせ、新人モデルの中の一人だもの……」

苦笑する瑶樹に瑾瑜は、

「あれ?知らなかったの?母上は元々モデルで、死んだ母の幼馴染み。で、母の葬儀の時に来て、皆どよめいてたでしょ?」
「あぁ……そう言えば!!」
「亮がボーッと均を抱っこしてたのを、抱き上げてあやしていた姿を、カメラマンが……」

幼い頃の事を思い出した二人に、瑾瑜は首をすくめる。

「あの、母上のキャリアを捨てて、一介のサラリーマンに嫁ぐって大騒ぎになったよ。結婚式にもわんさか押し掛けてたでしょ?」
「あら?あれは、瑾瑜さんと紅瑩さんと晶瑩さんが有名な兄弟だったからじゃない?」

 瑶樹に、瑾瑜は、

「そんな訳ありますか。母上の名前が大々的に広まったでしょうに……それに、そう言えば……金髪で青い瞳の女性と……瑠璃さま来てましたよね!?」
「えぇ。もう一人が麗月……私の親友で、琉璃の母親……もう、亡くなったけど……」

 目を伏せ寂しげな女神の吐息に、婚約者もいるのだが、一瞬気が遠くなった瑾瑜に、今日の秘書から二言三言話を聞いていた承彦は立ち上がる。

「そろそろ、皆が到着する頃……いこうかの。琉璃。お父様と行くかな?亮と行くかな?」
「お、おにーちゃん!!おにーしゃんと行く!!」

 一番気に入ったらしい大きな熊を抱いて、満面の笑みを浮かべる娘に、

「残念だのぉ……お父様は、琉璃をすぐに嫁にやらねばならんのかの……寂しい」
「お父様。琉璃はまだ8才ですよ」

突っ込む月英に、

「お父様よりも、亮が良いと言ったではないか……」

愚痴りつつ、瑠璃に近づき、

「瑠璃どの、娘をとられた父を慰めてくれんか?」

クスクスと笑うと、

「私も同じですわよ。琉璃を嫁に出したら、二人で泣きましょう……」
「そうだの」

承彦のエスコートに、瑠璃は優雅に付いていく。
 女装中の月英は元直が、瑾瑜は義母、亮は琉璃を抱っこして、妹の玉樹を連れていく。

「えぇぇ……姉さんたちを僕が!?」

 ブーブーとブーイングを言う均を、姉二人が両側からごんごんと殴り付ける。

「うるさい!!」
「黙って行くのよ!!亮と琉璃ちゃんのベストシーンを見逃したくないわよ!!」

 姉二人は、恋愛のれも出たことのない、弟の溺愛する少女に興味が湧いていたのだった。
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