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アフターストーリー

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 宗生むねおは、小学校1年生になった。
 両親と一緒に入学式に行くのだが、

「ねおくん?怪我をしちゃダメよ? 」
「うん、大丈夫~! 」

 新しいランドセルに制服、靴に帽子。
 そして、幼稚園から小学校に行けるのだ!

「ねえパパ! お友達一杯出来るかなぁ? 」
「あぁ、宗生。あ、こら! 」

 スキップをしていた宗生が転んだ。
 みるみる泣き出しそうになったのだが、小さい手が差し出される。

「大丈夫?」

 顔をあげるとくるんと大きな丸い目の、ツインテールの女の子がしゃがみこんでいた。

「痛い? 大丈夫? あ! そうだ! 水音亜みねあおまじない知ってる~! 」
「おまじない? 」
「うん! 水音亜はね? 魔法使いなんだから! いたいのいたいのとんでいけ~! ほら! 痛くなくなったでしょ? 」

 自信満々に水音亜と言う女の子は言うが、膝は血がにじんでいる。


「……まだちょっと痛い……」

 べそをかく宗生に、水音亜は、

「じゃぁ、もうひとつおまじない~! 水音亜のお気に入りのワンコのバンソウコウ! 」

 不格好だが一所懸命貼ってくれた女の子を見上げ、宗生は笑う。

「ありがとう! 僕は宮田宗生。よろしく! 」
「水音亜は松川水音亜だよ? 」
「うん!」

 水音亜の手を握ると、フワッと何かが弾けた。

 見つめあった二人は、呟く。

「……友見名ゆみな……? 」
「……そうちゃん……? 」

 お互いを見つめる大きな瞳が潤み、二人は泣きじゃくった。
 それぞれの両親が、慌てて近付く。

「どうしたの? ねおくん、痛かったの? 」
「本当にありがとうございます。息子がはしゃいで転んでしまいまして……」
「いえ、うちの娘も、お転婆で……引っ張ったの? ダメでしょ?」

 わんわんと泣きじゃくる子供たちの手を離そうとするが、逆にぎゅっと握ったまま首を振る。

「……いやぁ~! 一緒! 」
「ヤダヤダ! 」

 手を離すことは困難と理解した親達は、子供たちを泣き止ませる。
 しばらくして泣き止んだ二人に、問いかけると、

「……マフラー」
「……一緒……」

 しゃくりあげつつ答える二人に、両親たちは、

「マフラーは季節が違うからね。学校の入学式に行こうね? 」
「ねおくんだったよね? 水音亜。一緒に手を繋いで行こうねって、ねおくん。水音亜と一緒に行ってくれる?」
「う、うん! 水音亜、行こう! 」

 手を繋ぎ直した二人は、笑いながら歩き出したのだった。



 ……これが、未来の話かどうかは……あなたの心の中で……。
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