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転生者の少女の章

料理はあんまり得意じゃないけどこういうのは得意だよ!

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 一応色々無双したいこともない。
 まぁ、美味しいものはガッツリ食べたいけれど、まず、お母さんは料理は上手です。
 そっちに力を入れることはないね。
 でも、この地域カズールは海に面していない地域なので、海産物がお高いようだ。
 代わりに野菜は多いし、河の流れを利用して北のマルムスティーン領から定期的に運ばれてくるお肉は種類が豊富。
 家畜だけでなく、増えすぎた魔獣のお肉もありがたくいただいている。
 ちなみに家畜も元々魔獣を飼い慣らして牧畜にしたものだそうだ。
 マルムスティーンは乗獣を育てる技術なども優れているから、一石二鳥らしい。
 ちなみに魔獣の一種の二本足に翼のドラゴンも食べられるそうだ。
 でも、野生のものなのでちょっと生臭くて筋っぽいらしい。
 父さんは遠征中に狩ったそうで、勿体無いから捌いて食べたそうで文句を言っていたので、

「血抜きした? 一応、血抜きしっかりして、その後、内臓を傷つけないようにお腹をきっていくと臭みは少ないよ? 内臓は腸くらいは使えるけど残りは処分した方がいいと思う。血は腸詰めにして、茹でて食べるとレバーみたいなんだって。お肉はすぐ食べるより、熟成させたら美味しいらしいよ? 熟成させられないなら、燻製にするといいみたい」
「くんせい?」
「うん」

 それをそのまま父さんは、誰かに教えたらしい。
 しばらくして、どこかから綺麗な布で仕立てられたワンピースをもらいました。



 そして、簡単にこの国を説明しようと思う。
 イメージ的に、アシエルという地球のような星に一番大きな、ユーラシア大陸のようなアシールという大陸があり、その殆どがシェールドという国が占めている。
 シェールドには、主要な地域が六つの地域があって、東側の海に面した肥沃な農業地域がマガタ領。
 南の強い風が吹く砂漠や険しいゴツゴツとした山が続く乾燥地域がファルト領。
 北が深い森林と川、冬が長く真っ白な雪の世界が続くマルムスティーン領。
 中心部は二つの地域になり、ファルト領に接する中南部が遺跡や草原が広がる温暖な地域のヴェンナード領。
 ヴェンナード領とマルムスティーン領に挟まれ、大河アンブロシアスと金の森に沿うように作られた王都シェールダム。ここは水の都で、豊富な水を使った水運で荷が行き来する。
 そして、アンブロシアスの上流には二つの支流があり、一つはマルムスティーン領に続くユーザーがあるのだが、もう一つは途中から南西に流れが変わる竜河。
 竜河の側にあり、不思議な迷いの原や風の鳥平原、竜の谷に囲まれた小さな街があるカズール領。

 私の住むカズールの街は、広大なシェールドでも一番小さな辺境伯領の中心街だ。
 カズール領は主な街がカズールの街とカルスの街の二つ、小さな村が点在するくらいで、それ以外は難攻不落でドラゴンの住む谷や、人の膝の高さの草が生い茂っているだけだというのに、入るといつのまにか方向感覚を失い、悪き心を持つものは意志を持つ大地が納得するまで延々と歩かせることもあるらしい。
 ちなみに、昔父さん曰く、

「この奥には、王族の墓地があるとか、もしくは転移陣があるとか聞いているよ」
「転移陣?」
「うーん、本当かどうか知らないけど、グランディアと繋がってるところがあるそうだ。マルムスティーン侯爵の叔父上……えっと、お前は覚えてるかな? 先代のうちの伯爵。その人のお父さんが外交官として転移陣を使ってグランディアに行ったと聞いてる」
「……先代って……リオンお兄さんとレーヴェお兄さんとエージャのお父さん?」
「そう、白の破壊魔神とも言われたリュシオン閣下だ」

 白の破壊魔神……?
 胡散臭げに父を見ると、やれやれと首を振る。

「あの人なぁ……。お前が知ってる頃は病気もあって、ものすっごくおとなしかったんだよ。若い頃は結構キレやすいし、口悪いし、乱暴で喧嘩っ早くて……俺が騎士団にいた頃はめちゃくちゃ扱かれてたんだよ。暇みては新人の俺たちの練習に付き合って暴れてたから……それでもあの顔でモテるし……まぁ、かなりやばかったらしい。特に有名なのは、10歳の時に、ちょうど先先代の伯爵だったリュシオン閣下の母上が亡くなった頃に、親族に黙って剣を握って家出して、とある悪事の噂のあった貴族とその周辺を一人で潰しまくり、慌てて連れ戻した父親や祖父たちがちょっと目を離したら、今度は王宮に突撃してあちこち破壊して……ダメだってことでチェニア宮に閉じ込めたら、そこにあった国宝級の秘宝をいくつか損傷させた後、とあるもの壊そうとして、父上が号泣したらしい。『やめてぇぇ! 他のものはいいけど、私のセティの大事にしてたものを壊したら、もう生きてられない~!』って」
「……秘宝の方が重要じゃない?」
「次元がぶっ飛んだ先代伯爵の父上曰く、秘宝は時間を巻きもどしゃ何とかなるっていうことらしいが、世界でも例を見ないほどの愛妻家だった彼の方は、セティーナ様……先先代様の身につけていたドレス、装飾、靴、武具は国宝以上のものらしい」
「……? お父さん、時間の巻き戻しって普通できないよね?」
「普通はな。まぁ、術力や魔力のほぼない俺にはわからないが、マルムスティーン家の人間ならそれほどでもないらしい。ご父君……つまり、先代クルス侯爵閣下は、ご本人曰く平凡だが、学位や術師としてのランクは全部2位。ついでにその仕事をしつつ、王族の王子王女の家庭教師、外交官として他大陸を飛び回り、その合間に実家のマルムスティーン領や、この領のことについて采配していたらしい……ご本人は普通のことと思っていたらしいが、陰の宰相とも言われていたそうだ」
「……ヤバい人じゃない?」
「うん、怒らせたらヤバい方だそうだ……でも、親父……お前のじいちゃんや、大叔母上の知り合いなんだが、二人に聞くと、真面目すぎで、結構ストレスを溜めがち、時々それを破裂させるために、先先代のマルムスティーン侯爵が術師の訓練場に送り込むが、間に合わなかったときは、隕石が王宮に落ちて天井に大穴が開いたり、シェールディアの人工湖はあの人が大地の陥没を起こしてその後雨が降ってしまったらしい」
「……ははは……ダムいらないじゃん」

 前世なんて、ダムを作るのにダイナマイト使ったりしてるはずなのに……。

「ダム?」
「うん、えっと、川の上流を堰き止めて、水を溜めておく場所かな? ほら、竜河とかユーザーは水量豊富だけど、南の乾河は雨の多い時期だけ氾濫して、それ以外は全然水がないでしょ? だから、粘土だと劣化するから、丈夫な石にその間に水を通さない詰め物をして、それでもかなりの圧力がかかるから、圧力分散するために色々計算して、溜めておくだけじゃ意味がないから流れる部分……取水口を作って……多分川底は水が染みてすぐに枯れてしまうと思うから、その部分を染みにくい石を並べて最低限の水を確保して、高温で蒸発もすると思うから蒸発しにくいようにところどころに河を渡る橋風の蓋を作って……、水を確保するべきだと思います!」
「……うん、わかった。そういう要望、俺が兄貴やじいちゃんに伝えとく。だからどんなものっていうのを絵に描いてみてくれないか?」
「うん!」

 いつのまにか、乾河にダムや小さい人工湖が作られ、少しずつ乾燥から地域が救われていることは私は知らない。
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