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第1章〜起

35過ぎてから

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 35歳を過ぎてから結婚できる男性は3パーセント、女性は2パーセント。

だとあった。
 妹弟に聞くと、

「元々結婚願望薄かったし、姉ちゃんが結婚したら、うちが父さんと母さん面倒みないかんなーって」
「俺は、まぁ、あったけど……仕事上、正社員が難しいって契約やったやろ?昔は保険自分で払いよったし……怪我も、器具も自分持ちや。収入はいいって言っても、ガソリン代も出してくれんのぜ~?建設会社の下請けの下請けのまた下請けや。捻挫や脱臼程度で休んだら給料ないわ。しかも、隣の県に毎日高速乗って走るんで?うちらの県は高速高いんや。高速代も基本しか払ってくれへん」

と弟はぼやく。

 ちなみに弟は大工である。
 一応資格も持っているので、棟梁のすぐ下で指示を与えるのだが、給料は変わらない。
 ついでに、大工になる後輩が年々減って行くので、自分より年上の父より若い人と仕事をする。
 そうすると、体力のない途中で仕事がなくなり、入社した人の分も働かざるを得ないため、腰痛と膝の痛みとは10年来の友人である。

「そんなんで結婚できんわ。一応は向こうに、俺の事情話して、まっとってくれと言ったけどな……待たせるんもいかんと思って……相手は姉ちゃん達がおってもかまんって言うてくれたんやけど……」



 弟はシスコンである。
 でも、あんな環境でよくまだまともに育ったものである。

「まぁ、家が滅んでも家の墓に入らんでもかまんやんか。共同墓地に入ろや」
「でも、本当に結婚体質やないねぇ、うちらは」
「姉ちゃんは騙されてばっかりや。優しすぎるんで?」
「怒ると怖いけど、その怒る部分がかなりずれとるし……」
「ほんとほんと」

 妹はブラコンではなくシスコンである。

 昔は妹は弟をほぼ無視、放置だったのだが、最近、私が関わると、共同戦線を張り、数倍の仕返しをするようになった。
 余りの結束力に父が頭を抱えているらしい。

「大丈夫。姉ちゃん。結婚せんでも将来姉ちゃんらを面倒見てやるわ」
「……まぁ、姉ちゃんと住めるならかまんよ」
「おい、二人とも!料理ができんけん、姉ちゃんにさせる気やろ!」
「洗濯と掃除はするし」
「俺の休みの日は来るまで遊びに行こうや」



 姉弟は趣味も癖も知っているので、仲がいいのかもしれない。
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