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三世紀だよ。全員集合?

諸葛家の育児法は、近代的なもののようです。

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 その日の夜……。

「だから、琉璃りゅうりのすることは、なるべく自由にさせてあげて欲しいんだ」

 ぐずぐずぐずる琉璃を寝かしつけた孔明こうめいは、食堂となっている部屋で南方からもたらされた『茶』と言う乾燥した葉を湯に入れて煮出した薬湯を飲みながら、月英げつえいと#均__きん__に、母親が子供に言い聞かせるように語りかける。

 当時のお茶は、茶碗に茶葉をそのまま入れ、お湯を注ぎ、茶葉ごと飲む。
 喫茶ではなく、薬湯の一種だったからである。
 そして、この時代に茶葉が流通の始めだったため、様々なものを入れていた。

「琉璃は解っていると思うけれど、戦場で育ってる。違う。戦場に放り出された……子供なんだよ。月英や私達の常識は、あの子には常識ではないんだよ。だから、それを間違っているとか思わずに『これはこうしてみると良い』って学ばせるの。叱ると怯えたり萎縮すると思うんだよ。『凄いね! 偉いね! お利口だね!』って言うと喜ぶから。大袈裟でもいいよ。そうしてね? 『でも、こうやってみるのもいいんじゃないかなぁ』とか『こうしてみようよ』って促すの。琉璃は今、何でも初めて見る、聞く、触るっていう感じの、何もかもが目新しい赤ん坊みたいなものだからね。何でも見たい、やりたい、お手伝いしたいって思ってるから」

 月英と均は苦く、独特の味をした茶はハチミツや干した果物等を次々入れているが、孔明は勿体ないとそのまま口にする。

「で、でもな……」

 一人っ子で、兄弟のいない月英は琉璃にどう接していいか解らない為に、渋い顔になる。

「怖いんだよ~。ふにゃふにゃしてて。転んだらとか、オレの作業部屋に入って、怪我とか嫌だし……ぐわぁぁ……苦いっ。どうやったら蜜無しで飲めるんだ? 孔明っ!」

 実家から持ち込んだハチミツの入った壺や小さく刻んだ乾燥果実の入った器から、茶器に次々いれていく月英。
 元々甘党であるが、どうしても茶葉の入ったままの茶は飲めない。

「どうやったらって、普通ですよ。薬ですから、苦いのは仕方ないでしょう」
「葉まで食ってる! 絶対お前おかしい! 味覚が変だ!」
「ですから、葉も薬でしょう? 味見をして欲しいからとお父上から戴いてきたのは、月英じゃないですか。まぁ、薬効があるから味以外にも舌触り、後味なども報告でしょう? きちんと味見しておかないと売れませんよ」
「そ、それは、そうだが……」

 口ごもる。

「ですから、何もいれない方の報告は私が、甘口にした方を二人が報告しましょう」
「そ、そうさせてくれ……」

 頭を下げる。

 孔明は薬草を育てていることもあり、薬などの造詣が深い。
 その為、舌で味を確認することが多い。
 それよりも長年の貧乏性で、ハチミツや干した果実が、勿体なさ過ぎて口にするのが惜しいのだ。
 一応、月英がお試し品の茶と共に持ってきたものだが、自分が食べるなら、まだ痩せ細った琉璃に食べさせたい。

「う~ん、兄様。ご飯と混ぜてもいいんじゃない? 色々混ぜても美味しいかも」

 均は、孔明が色々準備していた物を黙々と口にしている。

「どれが美味しい? これからは琉璃の薬にも気を使いたいからね」
「う~んと、そうねぇ……」
「おーい! お前ら。茶は良い。それよりも、だ。琉璃はどーするんだ?」

 月英に、兄弟はくるっと振り返り、

「普段通り、ですよ?」
「そうそう。師匠、そんなにピリピリしなくても、普通にしてれば平気よ~? 姉様たちに比べれば、十分可愛い程よ、ねぇ? 兄様」
「均よりもましだな。琉璃はお利口だから」

孔明は、茶に再び干した果実を入れようとした月英から、器を引き寄せる。

「食べ過ぎですよ。琉璃の分が無くなるでしょう。終わりです」
「ま、待ってくれ! あと少し!」
「入れすぎては、味が解らなくなるでしょう。ダメです。ということで、今日はもう寝ましょう」

 孔明は、果実やハチミツなどを仕舞い込む。 

「では、明日から、琉璃のことはいいですね?」
「はーい」
「……オレのナツメ……」

 月英は拗ねつつも、最後に、

「……了解、でいいだろ」

と答える。

「では、よろしくお願いしますね」

 にっこりと笑い、立ち去る孔明。
 その後も、

「苦い!」

と言い続ける月英に、にっこりと兄と同じ笑みを浮かべた均は、月英の鼻をつまみ強引に流し込む。

「はい、終わり。今日は片付け私なの。何時までもぐずぐずしないで、ね、師匠?」
「ぐわぁぁ……鬼、鬼だ! せっかく、完璧な女装の方法を教えてやったのに……」
「これとそれとは別問題。さっき飲んでみて解ったけれど、時間が経つ程苦くなるのよ。早目に飲み干すのが一番なのよ。兄様はすぐに飲み干していたでしょう?」
「あっ!」

 目を丸くする。

「だから、これでおしまい。師匠、今日は作業部屋に籠るんでしょう? じゃぁ、頑張ってね」

 均は、食堂から追い出し、片付けを始めたのだった。
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