なんでこんなとこに?

刹那玻璃

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緑の精霊王と紅の狼

オイオイ……

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「……はい、兄さま。私に何かいうことありませんか?」

 車のついた椅子に座った、片眼鏡のふわふわとした印象の青年がリーを見る。
 全体の雰囲気と言い、顔立ちも繊細で美しい印象の青年。
 少年のままのリーと年相応のクリスを文官として成長させたらこの青年になった感じである。

「久しぶり~フェル。童顔というより可愛い顔を何とか威厳を持たせようと、頑張ってるみたいだねぇ~……似合わないけど」
「……兄さま? 一応言っておきますが、私と兄さまは母さま似で、ついでに言うと、兄さまの方が私より身長体重毒舌劣ってますよ? 見た目だけ10代、筋肉も減って身体は老化してますか?」
「嫌だなぁ~。筋肉量は増えないように制限してるんだよ。僕はミューみたいに身長も体重もないんだから~。身長も伸びすぎると発掘に支障が出ます」
「まぁ、ミューは群を抜いて長身ですからね。この私も片腕で抱えて歩けますもん」

 ひょろっとした印象のフェルは首をすくめる。

「お姫様抱っこ? いいなぁ~さっすがぁ!」
「……兄さま。新しい解毒剤を作るために私が調合した毒を、治験のためにのんでくれます?」
「やだよ~ちなみに僕は、世界中の毒の九割は若い頃に自分で試す羽目になったから~。苦しいし辛かったもんね。これ以上飲みたくありません」
「コンプリート目指しましょう! 大丈夫です。兄さま死にませんよ」

 ふわふわしている割に毒舌家である。

「という、冗談は置いておいて」
「……フェル伯父貴。ブラコン拗らせてるからなぁ」

 クリスは遠い目になる。
 フェルはツンデレで、大好きな兄に何故か毒を吐きまくる。
 ついでに現在の夫人にもそれが発動し、兄と弟の拳での語らいで修正され、結婚にこぎつけた。
 夫人に対してはツンは激減したらしいが、兄には今まで通りらしい。

「で、そのお嬢さん方はどなたです?」

兄の腕に抱かれている痩せこけた少女をみる。

「僕の琥珀ちゃん。こっちはクリスの婚約者のエレナ姫だよ?」
「兄さまの琥珀ちゃんって、誘拐しました? ダメですよ? 見た目詐欺ですが、兄さまはしっかり50代のおっさんです。ご家族の元にお返ししましょう」
「そういえばさぁ……フェル」
「話しスルーしないように」

 スルースキルを持つ兄に噛みつこうとしたフェルに、リーは被せにかかる。

「ねえねえ、ティアラーティアっていう名前知らない?」
「は? 確か、紅の狼の一族の末裔ですよ。ほら、ミューの奥方のアリアの姪です」

 リーは弟の顔を見つめる。

「え? ミューの奥方のアリア殿の姪?」
「えぇ。王宮か連れ出されて、母親であるアリアの姉上と一緒に行方不明になっているそうです」
「……えっと、紅の狼って、確か……伯爵家だよね?」
「潰されてますよ。冤罪で。残っているのがアリアとその親子だけです」

 クリスに抱き上げてもらって現れたエレナはただ震えながら聴き入っていたのだった。
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