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緑の精霊王と紅の狼
エレナと伯父甥
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そのまま馬車は動き始める。
速度は早めだ。
先程御者と話し合った結果、やはりというか当然、二度目の休憩はなくなった。
思ったよりもティアの体調が悪化していることと、エレナも本人は理解できていないがかなり痩せて弱っている。
それに、この馬車を守っているクリスの護衛たちの意見もあり、先に進んで安全なラーシェフ公爵邸に入るべきだとなった。
その為にもと、長距離を走ってもらう馬に、餌と水にくわえ、回復のポーションを与えたクリスである。
走り出してしばらくして、山道から草原、畑の広がる場所に移動したのを確認し、少し遅めの昼食に入る。
クリスは中から合図をしているので、御者は馬を制御しつつ、護衛も交代で飲み物と携帯用食料を口にする。
馬車の中の3人も、残っていたサンドイッチと馬車に常備されている何かあったとき用の携帯食を食べることになった。
一応、食の細いエレナを考えて、サンドイッチだけではなく、缶詰のシロップに漬けられたフルーツと少し冷えたハーブティー。
しかし食べる前に、リーが自分のポーチから小さな瓶をクリスに手渡す。
「エレナ姫に飲ませるようにね。食べたものを吐いたら体力が落ちるから」
「そうだね。エレナ。食べる前に飲んで。それだけで違うから」
蓋の開け方に戸惑うエレナに、もう一度受け取り蓋を外すクリス。
そして、飲み薬を飲み干して、一口大にしてもらったサンドイッチを手にして食べ始めた。
「サンドイッチだけど小さいのばかりだけど足りる?」
一応、不意に馬車が揺れて落としたりしないよう折りたたみのテーブルを組み立て、その上に広げたエレナの食事を確認する。
伯父が、
「沢山置かないように。少なめというより、小さく、個数を増やして」
とくどくどいうので、サンドイッチは自分の分の三等分にした一切れを三分の一に切ったものを、種類ごとに一切れずつ並べておいたが、3種類のサンドイッチである。これで足りるのか不安になった。
「はい! 中にいっぱい入ってます! ありがとうございます」
「いや……そうかな?」
「はい。いつも朝晩私たち薄いスープ一杯だけで、固いパンを半分ずつ……それでも、給料から制服代と一緒に引かれてしまうので、勿体無くて……休みの日に山とかに行って、食べられる木の実とかをとって、食べてました。部屋が厨房のそばだったので余ったものを分けて食べたり……」
「はぁ? 給金っていくらだったの?」
リーは尋ねる。
「えっと、1日銅貨一枚で、ひと月制服代と食費を兼ねた額を二人で銅貨10枚ずつ取られます」
「ぼったくりとほぼタダ働きじゃないか! しかも強制的!」
「それじゃお金ほとんど貯まらないだろう……」
リーとクリスは険しい顔で呟く。
「二人で貯めたお金は半分ずつ分けて持ってきました。それで、元々仕事を辞めたらティアは恩人である発掘のおじさんを探しに行くんだって言ってて……私もストフさまたちに会えたらって思って、それまでついていこうかなって……でもその前に会えるなんて思いませんでした」
えへへ。
嬉しそうにほおを緩めたエレナは2個目のサンドイッチに手を伸ばす。
飢餓寸前のはずだがエレナはがっついたりせず、食事はゆっくり目である。
食事のマナーはこれからだろうが、多分、リーと別れる前にある程度ミリアムにマナーを教わっていたティアがエレナに教えていたようである。
三つ目を食べ終わる頃、クリスは声をかける。
「まだ食べる?」
「あ、サンドイッチ? というのはいいです。この……」
「あぁ、デザート? はい」
一口サイズに切られたデザート……フルーツのシロップ漬けは、子供のデザートだけでなく病み上がりの人の栄養補給に最適である。
缶なので長期保存ができるのもありがたい。
それに甘味などはほとんど食べられた試しのないエレナは、スプーンで嬉しそうに食べ、シロップも飲み干した。
しばらくすると、満腹になり眠気が襲いかかる。
何度も瞬きをして、起きていようと思ったものの、強い刺激にあくびを噛み殺す。
「あぁ、眠くなったみたいだな」
馬車の振動でよろけるエレナを抱きしめて、クリスはポンポンっと背中を叩く。
「もう少ししたらラーシェフ領に着く……けど、屋敷までは遠いから寝とくといい」
「でも……」
「大丈夫。安全だから」
しばらくして寝入ったエレナを抱いたまま、エレナの故国を根絶やしにするというコソコソ話をする伯父甥の姿は同じような悪人ヅラだったことは言うまでもない。
速度は早めだ。
先程御者と話し合った結果、やはりというか当然、二度目の休憩はなくなった。
思ったよりもティアの体調が悪化していることと、エレナも本人は理解できていないがかなり痩せて弱っている。
それに、この馬車を守っているクリスの護衛たちの意見もあり、先に進んで安全なラーシェフ公爵邸に入るべきだとなった。
その為にもと、長距離を走ってもらう馬に、餌と水にくわえ、回復のポーションを与えたクリスである。
走り出してしばらくして、山道から草原、畑の広がる場所に移動したのを確認し、少し遅めの昼食に入る。
クリスは中から合図をしているので、御者は馬を制御しつつ、護衛も交代で飲み物と携帯用食料を口にする。
馬車の中の3人も、残っていたサンドイッチと馬車に常備されている何かあったとき用の携帯食を食べることになった。
一応、食の細いエレナを考えて、サンドイッチだけではなく、缶詰のシロップに漬けられたフルーツと少し冷えたハーブティー。
しかし食べる前に、リーが自分のポーチから小さな瓶をクリスに手渡す。
「エレナ姫に飲ませるようにね。食べたものを吐いたら体力が落ちるから」
「そうだね。エレナ。食べる前に飲んで。それだけで違うから」
蓋の開け方に戸惑うエレナに、もう一度受け取り蓋を外すクリス。
そして、飲み薬を飲み干して、一口大にしてもらったサンドイッチを手にして食べ始めた。
「サンドイッチだけど小さいのばかりだけど足りる?」
一応、不意に馬車が揺れて落としたりしないよう折りたたみのテーブルを組み立て、その上に広げたエレナの食事を確認する。
伯父が、
「沢山置かないように。少なめというより、小さく、個数を増やして」
とくどくどいうので、サンドイッチは自分の分の三等分にした一切れを三分の一に切ったものを、種類ごとに一切れずつ並べておいたが、3種類のサンドイッチである。これで足りるのか不安になった。
「はい! 中にいっぱい入ってます! ありがとうございます」
「いや……そうかな?」
「はい。いつも朝晩私たち薄いスープ一杯だけで、固いパンを半分ずつ……それでも、給料から制服代と一緒に引かれてしまうので、勿体無くて……休みの日に山とかに行って、食べられる木の実とかをとって、食べてました。部屋が厨房のそばだったので余ったものを分けて食べたり……」
「はぁ? 給金っていくらだったの?」
リーは尋ねる。
「えっと、1日銅貨一枚で、ひと月制服代と食費を兼ねた額を二人で銅貨10枚ずつ取られます」
「ぼったくりとほぼタダ働きじゃないか! しかも強制的!」
「それじゃお金ほとんど貯まらないだろう……」
リーとクリスは険しい顔で呟く。
「二人で貯めたお金は半分ずつ分けて持ってきました。それで、元々仕事を辞めたらティアは恩人である発掘のおじさんを探しに行くんだって言ってて……私もストフさまたちに会えたらって思って、それまでついていこうかなって……でもその前に会えるなんて思いませんでした」
えへへ。
嬉しそうにほおを緩めたエレナは2個目のサンドイッチに手を伸ばす。
飢餓寸前のはずだがエレナはがっついたりせず、食事はゆっくり目である。
食事のマナーはこれからだろうが、多分、リーと別れる前にある程度ミリアムにマナーを教わっていたティアがエレナに教えていたようである。
三つ目を食べ終わる頃、クリスは声をかける。
「まだ食べる?」
「あ、サンドイッチ? というのはいいです。この……」
「あぁ、デザート? はい」
一口サイズに切られたデザート……フルーツのシロップ漬けは、子供のデザートだけでなく病み上がりの人の栄養補給に最適である。
缶なので長期保存ができるのもありがたい。
それに甘味などはほとんど食べられた試しのないエレナは、スプーンで嬉しそうに食べ、シロップも飲み干した。
しばらくすると、満腹になり眠気が襲いかかる。
何度も瞬きをして、起きていようと思ったものの、強い刺激にあくびを噛み殺す。
「あぁ、眠くなったみたいだな」
馬車の振動でよろけるエレナを抱きしめて、クリスはポンポンっと背中を叩く。
「もう少ししたらラーシェフ領に着く……けど、屋敷までは遠いから寝とくといい」
「でも……」
「大丈夫。安全だから」
しばらくして寝入ったエレナを抱いたまま、エレナの故国を根絶やしにするというコソコソ話をする伯父甥の姿は同じような悪人ヅラだったことは言うまでもない。
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