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ぷるんじゃなくプリンです
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「わーちゃん、じゅるい!」
ぷんぷん!
拗ねるフィーアに、ヴァーロが、
「だって、ボクの名前はヴァーソロミューだもん。八文字だから八歩なんだよ~」
「じゅるい! ふぃーもいっぱいあゆく!」
フィーアは階段を一歩一歩登ると、上に立っていたヴァーロの足にしがみついて引っ張って訴える。
フィーアは最初勝っていて、最後あと四歩だったのだが、下にいたヴァーロに追い抜かされたのだった。
「じゅるい! トントンしゃきいっちゃめ!」
「えっと……フィーアちゃん。1番に到着したのはヴァーロくんだったけど、一番ジャンケンに勝ったのはフィーアちゃんだから、フィーアちゃんにもプレゼント出します!」
「ほんと? ねえたま!」
ヴァーロの足に抱きついたまま、琴葉を見上げる。
「うんうん。だから、ぷんぷんやめようね?」
「ほーら、フィーア。降りるぞ~。ジュースあるからな」
アルスが苦笑しながら近づき抱き上げる。
階段を降りていくと、一人待っていたソフィアが微笑む。
「お茶とジュースをどうぞ。コトハ。プリンも丁度出したところよ」
「ありがとうございます! ソフィアさん」
「プリン?」
「えぇ。蒸しプリンもいいのだけれど今日は、ゼラチンを使ったプリンなの」
お皿には何も置かれていないのだが、まず子供用の椅子に座らせたフィーアの前の皿をとり、持っていたグラスのようなものをひっくり返す。
そうすると、ぷるんとした黄色のものが現れ、フィーアとヴァーロが目を輝かせる。
「しゅごい! ぷるん!」
「すごいでしょう? 魔法みたいよね。そしてここに……甘いシロップと美味しいシロップ漬けの果物を飾って……出来上がりです!」
「しゅごい!」
スプーンを持たせてもらったフィーアは、ワクワクしている。
「魔法には少しお時間がかかりますので、魔法が解けないうちに食べてください~」
「だそうだ。フィーア、いただきます、しようか」
「ましゅっ!」
アルスに促され、大きい声でそういったフィーアは、スプーンで必死にすくおうとするものの蜜柑のシロップ漬けに逃げられる。
仕方ないなぁとアルスがフォークで手伝い、食べさせる。
「いいなぁ……」
「もうすぐだよ。えっと、ヴァーロくんはシロップとカラメルどっちがいいかな? カラメルはお砂糖を煮詰めたもので、ちょっと苦味があるんだ。果物を漬けていたシロップにする?」
「うーん……苦いのよりシロップ!」
ヴァーロのプリンを席に運ぶと、ニコニコご機嫌な様子で見ている。
「あ、チャチャは前に味見として食べてるので、今日はお芋のおやきです。そして、ラハシアさんはシロップとカラメルどちらがいいですか?」
「えっと……カラメルというのをお願いします」
「はい。あ、これはちょっと砂糖を煮詰めて黒っぽくなっただけですよ。この苦味が逆にプリンの甘さを強くしますので」
目の前に置かれたプリンに目を輝かせる。
「いただきます」
スプーンですくったプリンを恐る恐る口に運ぶ。
カラメルの甘苦い感覚と、プルプルのプリンの冷たさ……。
「美味しい!」
「よかった。アルスさんとソフィアさんもどうぞ」
「ありがとう。俺もカラメルにしてくれるか?」
「あ、アルスさんはカラメルより苦味のあるコーヒーシロップにしました。苦いのですが、プリンが甘いのできっと気にいると思うんです。ソフィアさんはカラメルにしています」
「……あ、これ俺好きだわ……うん。ちょうどいい」
アルスは最初黒い液体にギョッとしたものの香りに驚き、そして舌に感じる苦味と旨みに笑った。
「このコーヒーというのは、ダンデライオン茶に似ているのですが、確かちょっと仕事が立て込んだ時に飲むと疲労回復や眠気を覚ます効果があったり、香りにリラックス効果などもあります。でも飲みすぎると内臓を傷つけたり、眠れなくなったり、トイレに行く回数も増えるという逆効果もあるそうです。あ、この間このコーヒーのタネをラインさまにいただいたのです。今度植えようと思っています」
「……お、おうっ! 薬と一緒で適量ってことか……」
「はい、一日多くて3杯までですね。おすすめは朝昼と夕方です。夜寝る前は眠れなくなりますから。それに、妊娠中のお母さんや小さい子供は飲まない方がいいです」
「そうか……また今度飲ませてもらってもいいか?」
「あ、すぐに出せますよ。本格的なものじゃなくて、私がのんでいたものですが」
そういうと、台所に向かいしばらくして、六つのマグカップを持って戻ってくる。
「フィーアちゃんはホットミルクです。そして、私とアルスさん以外はホットミルクにコーヒーを混ぜたカフェオレを持ってきました。お砂糖はカフェオレにはきかせてます」
「……おぉ、黒いんだな」
受け取ったマグカップを見つめ呟く。
「でも、結構香りが強い……それに、美味いな……」
「よかったです。お茶の代わりにこのコーヒーとお菓子もいいんですよ」
「うん……俺はこのままでいい。生臭くてえぐい薬草に比べたらこれの苦味なんてすぐ消える」
アルスは満足そうに微笑む。
しばらくして、遊んで食べてお腹いっぱいのフィーアがうとうととし始めたのに気がついた琴葉は、
「あ、そろそろお部屋に案内しますね。フィーアちゃんもお昼寝のお時間ですから」
と立ち上がったのだった。
ぷんぷん!
拗ねるフィーアに、ヴァーロが、
「だって、ボクの名前はヴァーソロミューだもん。八文字だから八歩なんだよ~」
「じゅるい! ふぃーもいっぱいあゆく!」
フィーアは階段を一歩一歩登ると、上に立っていたヴァーロの足にしがみついて引っ張って訴える。
フィーアは最初勝っていて、最後あと四歩だったのだが、下にいたヴァーロに追い抜かされたのだった。
「じゅるい! トントンしゃきいっちゃめ!」
「えっと……フィーアちゃん。1番に到着したのはヴァーロくんだったけど、一番ジャンケンに勝ったのはフィーアちゃんだから、フィーアちゃんにもプレゼント出します!」
「ほんと? ねえたま!」
ヴァーロの足に抱きついたまま、琴葉を見上げる。
「うんうん。だから、ぷんぷんやめようね?」
「ほーら、フィーア。降りるぞ~。ジュースあるからな」
アルスが苦笑しながら近づき抱き上げる。
階段を降りていくと、一人待っていたソフィアが微笑む。
「お茶とジュースをどうぞ。コトハ。プリンも丁度出したところよ」
「ありがとうございます! ソフィアさん」
「プリン?」
「えぇ。蒸しプリンもいいのだけれど今日は、ゼラチンを使ったプリンなの」
お皿には何も置かれていないのだが、まず子供用の椅子に座らせたフィーアの前の皿をとり、持っていたグラスのようなものをひっくり返す。
そうすると、ぷるんとした黄色のものが現れ、フィーアとヴァーロが目を輝かせる。
「しゅごい! ぷるん!」
「すごいでしょう? 魔法みたいよね。そしてここに……甘いシロップと美味しいシロップ漬けの果物を飾って……出来上がりです!」
「しゅごい!」
スプーンを持たせてもらったフィーアは、ワクワクしている。
「魔法には少しお時間がかかりますので、魔法が解けないうちに食べてください~」
「だそうだ。フィーア、いただきます、しようか」
「ましゅっ!」
アルスに促され、大きい声でそういったフィーアは、スプーンで必死にすくおうとするものの蜜柑のシロップ漬けに逃げられる。
仕方ないなぁとアルスがフォークで手伝い、食べさせる。
「いいなぁ……」
「もうすぐだよ。えっと、ヴァーロくんはシロップとカラメルどっちがいいかな? カラメルはお砂糖を煮詰めたもので、ちょっと苦味があるんだ。果物を漬けていたシロップにする?」
「うーん……苦いのよりシロップ!」
ヴァーロのプリンを席に運ぶと、ニコニコご機嫌な様子で見ている。
「あ、チャチャは前に味見として食べてるので、今日はお芋のおやきです。そして、ラハシアさんはシロップとカラメルどちらがいいですか?」
「えっと……カラメルというのをお願いします」
「はい。あ、これはちょっと砂糖を煮詰めて黒っぽくなっただけですよ。この苦味が逆にプリンの甘さを強くしますので」
目の前に置かれたプリンに目を輝かせる。
「いただきます」
スプーンですくったプリンを恐る恐る口に運ぶ。
カラメルの甘苦い感覚と、プルプルのプリンの冷たさ……。
「美味しい!」
「よかった。アルスさんとソフィアさんもどうぞ」
「ありがとう。俺もカラメルにしてくれるか?」
「あ、アルスさんはカラメルより苦味のあるコーヒーシロップにしました。苦いのですが、プリンが甘いのできっと気にいると思うんです。ソフィアさんはカラメルにしています」
「……あ、これ俺好きだわ……うん。ちょうどいい」
アルスは最初黒い液体にギョッとしたものの香りに驚き、そして舌に感じる苦味と旨みに笑った。
「このコーヒーというのは、ダンデライオン茶に似ているのですが、確かちょっと仕事が立て込んだ時に飲むと疲労回復や眠気を覚ます効果があったり、香りにリラックス効果などもあります。でも飲みすぎると内臓を傷つけたり、眠れなくなったり、トイレに行く回数も増えるという逆効果もあるそうです。あ、この間このコーヒーのタネをラインさまにいただいたのです。今度植えようと思っています」
「……お、おうっ! 薬と一緒で適量ってことか……」
「はい、一日多くて3杯までですね。おすすめは朝昼と夕方です。夜寝る前は眠れなくなりますから。それに、妊娠中のお母さんや小さい子供は飲まない方がいいです」
「そうか……また今度飲ませてもらってもいいか?」
「あ、すぐに出せますよ。本格的なものじゃなくて、私がのんでいたものですが」
そういうと、台所に向かいしばらくして、六つのマグカップを持って戻ってくる。
「フィーアちゃんはホットミルクです。そして、私とアルスさん以外はホットミルクにコーヒーを混ぜたカフェオレを持ってきました。お砂糖はカフェオレにはきかせてます」
「……おぉ、黒いんだな」
受け取ったマグカップを見つめ呟く。
「でも、結構香りが強い……それに、美味いな……」
「よかったです。お茶の代わりにこのコーヒーとお菓子もいいんですよ」
「うん……俺はこのままでいい。生臭くてえぐい薬草に比べたらこれの苦味なんてすぐ消える」
アルスは満足そうに微笑む。
しばらくして、遊んで食べてお腹いっぱいのフィーアがうとうととし始めたのに気がついた琴葉は、
「あ、そろそろお部屋に案内しますね。フィーアちゃんもお昼寝のお時間ですから」
と立ち上がったのだった。
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