上 下
44 / 102

お出かけ

しおりを挟む
 半月ほどの間に、琴葉の周囲は落ち着き、アルスは図鑑を訳しつつ、琴葉の持って来ていた乾燥ハーブを一つ一つ試す。
 そのまま口にするだけでなく、煮出したり、もしくは蒸気を浴びるなどできる限り試す。
 そして、自分の集めたハーブと見比べ、そして自分の持っていた古い本に書き込む。
 それだけでなく、プランターと土を購入し、庭で育て始める。
 特にミントは直植えすると一気に増えてしまう。
 カモミールも増えるが、根の張り具合が違うのと、使用頻度の多さから、畑を作って植えた。
 ちなみに、ミントは交配するとかなり増えてしまうので、あちこち別々に離して置いている。
 アップルミント、スペアミント、ペパーミント、ウォーターミント、そして薄荷ハッカを選んだ。
 薄荷は日本のミントの一種だ。
 他にはラベンダーとイタリアンパセリ、コリアンダー、レモングラス、バジルと基本的なハーブを選んだ。
 一緒に、青紫蘇と赤紫蘇も植えたのは、一番身近なハーブだからかもしれない。
 毎日アルスと琴葉、ソフィアとヴァーロが交代で水をやり、様子を確認する。
 現在順調に生育中だ。

 そして、先日植えたスプラウトは、順調に伸びて先日収穫。
 サラダに使われた。
 自分が作ったものを収穫して喜んでいたものの、一日で食べきってしまったことにショックを受けたヴァーロの涙目が可愛かった。

 今日も、昼食にバジルのスパゲッティを食べ、レモングラスのハーブティーを飲んだアルスは味がどうだったかを持っていた紙に細かい文字で書き込んでいた。メモも乱雑にしまっていてはわからなくなるのではないか?

「あの、アルスさん、ノートに書き込んだらどうでしょう?」
「いや……本当はそうしたいんだが、ノートに書くと、途中で追加で書くことができた時に、挟むこともできないだろう? まぁ、これも整理整頓面倒ではあるのだが……」
「あ、じゃぁ、こう言うのはどうでしょう」

 出すのは、小さめのメモの束。

「これは付箋と言って、書いて貼り付けるメモです。それにインデックス……というか、紙の隅にこの紙にはこのハーブについて書いてるとわかるようにしておけば、探す手間が省けます。あ、それよりルーズリーフのほうがいいですかね?」

 続けて琴葉が出すのは、しっかりとした穴の空いた紙をまとめる表装……ルーズリーフバインダー。
 紙の束もしっかり出している。

「これは中を入れ替えられますし、必要無くなったら中のものをとって処分できます。ノートだと、入れ替えはできませんが、これなら、書き込み用紙が足りない時は足せますし、イライラしませんよ」
「いいのか?」
「えぇ。このためのものですし、もし、書き込み終わったら、全部出して、それに簡易の表紙をつけて本棚に置きましょうか」

 言いながらルーズリーフを簡易的にまとめる輪っか……リングを置く。

「助かるよ……それに、この貼って剥がせるフセンという紙とか、便利だな……」
「私のいた地域は、何故か文房具が進化してました」
「進化か、言い方が面白いな。ありがとう、コトハ」

 笑うと、また仕事に戻る。

 アルスは勉強熱心だ。
 自分の身体を使って薬を試すなんて、前世の中国の神話時代の神農のようだ。
 まぁ毒キノコとかはないし、食べ合わせさえ注意していれば大丈夫かな……と思いつつ、チャチャと一緒に自分について歩くヴァーロに笑いかける。

「ヴァーロくん。お腹すいた?」
「ううん、大丈夫! それよりチャチャとお散歩行こうよ! ね?」
「そうだね。あ、ギルドに置かせてもらえる作品持って行こうかな」
「うん! 護衛は任せて!」
「ちょっと待ってて。ポンチョ着てくるね」

 バッグと外出用のポンチョを取りに戻る。
 靴はショートブーツ。
 スカートはシックな臙脂色にエプロンドレス、上のシャツは長袖だが、薄かったので一枚セーターを着ている。

【アタシはここにいるわよ。一応繋がってるから何かあったら呼びなさい】

 桜智は手を振り、

【アホドラ。琴葉とチャチャ頼むわよ】

「アホドラって言うなっての!」

ガウガウ文句を言うヴァーロをいなし、桜智は一人編み物をしていたソフィアの横に座ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

友達になろうとした私のことが、そんなに邪魔ですか?

はまみ
ファンタジー
私、オリヴィア。クラスで浮いた存在の絶世の美少女レイアさんを、なにかにつけてサポートしてきたつもり。 彼女と友達になりたくて。 でも、そのレイアさんから、彼女の邪魔ばかりしていると、言われてしまい… 設定はざっくりです。 貴族などの設定も、実際の厳密なものとは、異なります。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

処理中です...