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第一章 魔法少女大戦

魔法少女、かく語りき

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「は?」

 イクローは呆けたような声を出した。
 言われた言葉の意味がわからずにぽかん、と口を開けたままである。
 いや、言葉の意味はわかっているのだが、この異常ともいえる状況でなぜそんな質問をされたのかわからない、と言うべきだろう。

「わたし、それ自体よくわからないの。 でもちいさい女の子を変な目で見る人はロリコンなの。 そう勉強したの」

 少女は抑揚のない声でそう言った。

「い、いや! 待て待て待て!!」

 イクローは叫んだ。

「ち、ちげーよ!! いや、よしんば俺がお前に欲情したとしてだ! 俺はまだ十七だぞ? 十七の男がお前……十二歳くらい? の子に欲情するのは……果たしてロリコンと言っていいのか!?」

 彼はいささか混乱してそうよくわけのわからない事をまくしたてた。
 ただ幸いにして、と言うべきか。
 彼は自分の発したその言葉で我に返った。
 .
「そうなの?」

 彼女は無感情な顔でそう言って僅かに首を傾げた。
 そして、そのまま床の上にふわり、と降り立つとさして興味もなさそうに彼の部屋の中を見回した。
 
「それならそれでもよかったの……」

 彼女はよくわからない事を言って彼のベッドまで歩いていくとそのまますとん、と腰かけた。
 そしてイクローは今更ながら彼女が未だ全裸のままな事を思い出して、顔を真っ赤に染めた。

「そ、その……あのさ……と、とりあえず何か着てくれないかな?」

 彼は今になって恥ずかしい気持ちになりながらそう少女に言った。

「ダメなの? 男の子は女の子の裸が好きなのではないの?」
「い、いや嫌いじゃないけども……」

 イクローは恥ずかしそうに下を向いてもじもじとする。
 まぁ、この状況で昔あった韓国スターのCMのように「あなたのハダカ好きで~す!」と叫ぶわけにもいくまい。
 それではただのヘンタイである。
 ましてやこんな幼い女の子が裸で部屋にいる所を母親なぞに見られた日には最悪実の母親によって警察に突き出されかねない。

「わたしの体嫌いなの?」

 彼女はまた抑揚のない感じでそう言ってまた首を傾げた。

「い、いや!! 嫌いじゃないよ! 断じて嫌いじゃない! 綺麗だし、むしろ大好きだ!!」

 彼はなぜかしどろもどろになってそう素直に口にした。
 結局これでは「あなたのハダカ好きで~す!」と言っているのと同じである。

「じゃあ、わたしの事気に入ったって事なの?」

 そう言いながら彼女は、納得したように頷いてベッドから立ち上がり、しばらくイクローをじっと見つめていた。
 そのうち口の中でもにょもにょと明らかに日本語ではない、もしかすると言葉なのかどうかもわからない不思議な言語を呟いて、両手を広げると、くるり、と一回転した。
 すると部屋の真ん中に残ったまま回っていた『魔法円』が彼女の身体を取り巻いた。
 文字のリボンと化したそれは華奢な身体に巻き付いたかと思うと、ぽん! ぽん! と明るい、ちょっと間抜けにも聞こえるような音を立てる。
 そして、驚くべき事にそのまるでポップコーンが弾けるような『ぽん』という音とともにその光るリボンは彼女の衣服を形成していった。
 最初のぽん! はミニスカートへ……幾重にもなったペチコートがふんわりとそのスカートの複雑なひだを膨らませている。
 次のぽん! はノースリーブ、というよりは肩が丸出しでおへそまで丸出しのビスチェへと。
 その真ん中には大きなチャックの引き手が付いている。
 さらに次のぽん! ぽん! と二つの音が彼女の二の腕まである手袋へ。
 さらに二つのぽん! が両足の太ももまであるニーハイソックスのようなロングブーツへと変貌を遂げていく。

 最後に彼女の頭上でぽん! と音がして、まるで魔女の被るそれのような、とんがり帽子が現れた。
 彼女の頭よりも数センチ上に現れたそれを彼女は両手で無造作にぐい、と掴んで引き寄せると、その頭に被った。
 だがそれはいささかサイズが大きすぎるようで彼女の目のあたりまですとん、と落ちた。
 少女は慌てた様子で帽子をぐい、と両手でそれをおでこあたりまで持ち上げた。

 彼女の身体を包む衣装、それはすべてまるで透き通る雪のように純白だった。
 端々に赤いラインが入っている。
 そして真っ赤な小さいリボンで彼女はそのハチミツ色のふんわりとした金髪を左右に分けて束ねていた。

 なんと言えばいいのか――コスプレ衣装というか、魔女っ子のような姿であった。
 そこでイクローはハッとして思い出した。

 (魔法少女! そうだバレッタが言ってた、この子も魔法少女なんだ!)

 頭の上に乗ったとんがり帽子以外は、アイドルのロックっぽい曲を歌う時の衣装のようですらある。
 ただ、そんな衣装ですら、彼女ほどの美少女が身に付けているのはとてもよく似合っている。
 それはまるで――アニメの世界から飛び出してきたキャラクターそのもののようでもある。
 いや、実際あまりにもアニメ的な出来事ではあるのだが。

 「お前も……魔法少女なのか?」

 イクローが恐る恐る尋ねると少女は小さくこくん、と頷いた。

「わたしは魔法少女……キルカ」

 彼女が静かにそう名乗ったその瞬間――純白だった彼女の衣装の右半分ほどに、びちゃ、という音と同時に何かが貼り付いた。

 ……それは真っ赤な、血飛沫だった。
 乱雑にバケツでぶっかけられたように。
 いや、むしろ……まるでその身に返り血を浴びたかのように。

 ――彼女の全身の半分は乱雑な赤いスプラッシュで染め上げられた。

「お前が……バレッタの言っていた……キルカあねさん?」

 イクローがそう呟くように言うと彼女はこくこく、と頷いた。

「なのなの」

 明らかにバレッタよりも年下に見えるのだが、なぜ姐さんなのだろう? と彼は少し考えたが、そんな事は今はどうでもいい、と首を振った。

「わたしはあなたを、探していたの」

 キルカはそう静かに言った。

「お、俺を? な、何の為に? ま、まさか……俺を、さらうため……とか?」

 イクローは全身から血の気が引くような、絶望感が首筋をちりちりと焼くような感覚を味わいながらそう尋ねた。
 だが、キルカは少し驚いたような顔をして、ふるふる、と首を横に振った。

「わたしはあなたを探すために体を分解して電気信号に変えてネットの世界に入っていたの。 そこであなたのことを見つけたの。 だからバレッタをあなたの学校に潜入させていたの」

 そして彼女は彼をじっと見つめてまた口を開いた。

「改めてあなたの名前、聞かせてほしいの」

 そして緊張で身体をこわばらせていたイクローに投げかけられたのはそんな質問だった。

「い、イクロー。 圓藤生郎(えんどう・いくろう)だ……」

 彼はまるで誘導されたかのように、そう素直に答えた。

「イキロ。 いい名前なの」
「イキロ、じゃなくてイクローなんだけど……」
「イキロの方が呼びやすくていいの。 だからイキロって呼んでいい?」

 彼女はそう言って、無表情のまま少し首を傾げて右手の人差し指を立てて顎に当てる。
 その仕草は途轍もなく愛らしい。

 「あ、ああ。 好きに呼んでくれりゃいいけど」

 イクローは彼女の愛らしさに見惚れてしまいそうになりながら慌ててそう答えた。
 彼の言葉に彼女は、口元をわずかに歪めた。
 人形のような無表情な顔に僅かに微笑が浮かんだようにも見える。
 それもまた、あまりにも魅力的だった。

 こんなに可愛いんだから、普通に笑顔くらい見せてくれればいいのに――彼はなぜかそんな事を思ってぼんやりとキルカを見つめた。

「ねぇ、イキロ?」
「な、なんだ?」
「イキロはその名の通り、生きるの」

 彼女はそう訳のわからない事を口にする。
 
「わたしはあなたを見つけて、あなたを守るために探していたの。 そのためにここに来たの。 だからあなたは生きるの。 ずっと生きるの」
「え? い、いや……むしろ俺全然今のところ死ぬ気とか予定とかねぇんだけど……?」

 キルカは一瞬目を見開いた。
 緑がかった青いエメラルドのような瞳に一瞬様々な感情が浮かんでは消えていくのがわかる。
 そして、その仏頂面の綺麗な人形みたいな白い顔に赤みが差した。

 これは――恥じらい、だろうか? 全裸で男の前に立って顔色一つ変えなかったキルカが、恥じらう、ほどの何があるというのだろうか。

「い、イキロは……」

 そこで彼女は言い淀んで一瞬うつむき加減になってから、ほんの少し眉毛を持ち上げて決意の表情を浮かべる。

「わ、わたしと『けっこん』するの! だからわたしはイキロを守るの」

 予想外のキルカの言葉にイクローの頭は一瞬真っ白になった。
 もう大抵の事には驚かないつもりになっていた彼だったが、あまりにも簡単にまた脳味噌を恐慌状態へと持っていかれてしまった。
 人間の意識というモノは不思議なもので、あまりにも予想外な出来事に直面すると安易に考える事を放棄してしまう。

 「あ、ああ……そうなんだ」

 なんとも間抜けな返答をして、イクローはその場にへたり込むように座った。
 そして彼はしばらく微妙な笑顔を浮かべたまま固まっていたが、すぐに彼の脳味噌は再起動を始めた。

「いやいやいやいや!! ちょっと待て! どうしてそんな話になったんだ? ていうか……」

 彼は勢いよく反論をしようと試みたが、そこで言葉を詰まらせた。
 そして、一番の疑問を吐き出す。

「どうして、俺、なんだ?」

 キルカはまた元の人形のような無感情な顔になって彼を見つめていた。

「イキロ、あなたは」

 彼女の一句一句にイクローはごくり、と唾を飲み込む。

「この世界――人間界でたった一人。 魔法少女と結ばれて子を成せる人、なの」

「お、お、お、俺が? 俺だけ? なんで? どうして??」

 彼がしどろもどろでそう返すと、彼女は少し首を傾げながら考える風な顔になる。

「……たぶん」
「たぶんかよ!!」

 ぽつりと呟いたキルカに、イクローはつい即座にツッコミを入れてしまうのだった。

「ま、まぁ……他にもいるかも知れないのだけど。 でも何百万人に一人とか何千万人に一人とか、そういう確率なの」

 キルカはほんの少し慌てた様子でぱたぱたと顔の前で手を振りながら説明する。
 そんな仕草がいちいち可愛らしくてイクローはうっかり微笑んでしまいそうになる。

「でもイキロはわたしが見つけたの。 だからわたしと『けっこん』するの」

 彼女の言葉には相変わらず抑揚があまりないが、その響きには有無を言わせない迫力のようなものが滲んでいた。

「……とりあえず、とりあえずだ。 詳しく説明してくれねぇかな? ワリィんだけど、ちょっと俺、頭がこんがらがってんだ……」

イクローは覚悟を決めて、と、いうよりは開き直った気分でキルカにそう提案してみた。

「わかったの」

 彼女はこくん、と頷いて説明を始めた。
 彼女の訥々とした話し方は時に要領を得ない部分もあったが、なんとか状況を理解する事はできそうだった。

 そしてキルカは話し始めた。

 ――何故。
 なにゆえにキルカが"結婚相手"を探してわざわざやってきたのか。

 まず彼らは本来今いるこの世界、彼らが人間界と呼ぶ世界の住人ではない。
 彼らは次元の違う世界、魔法界からやってきたのだと言う。
 世界の中心に生える巨大な世界樹、ユグドラシルを中心とした世界。
 そのユグドラシルの四方を囲むように四つの王国がある。

 キルカの家であるティアマト家。
 他にダムキナ家、ラハム家、キシャム家の三つ。
 そしてこれがその王国を統治する四つの王家である。。
 これらは魔法界では"四王家"と呼ばれる由緒正しき家柄である。
 王家、という呼称が表す通り、その四つの家は魔法界をほぼ四等分してそれぞれの領土を持っており、その勢力は拮抗している。
 もっとも"王家"というのは俗称であって、王政を布いている訳ではない。

 魔法少女たちの世界は、完全なる実力主義の世界であり、魔力の強い者が下の者を従える形であった。
 故に、それらの王家が更なる力を求めるというのも自明の理というものだ。
 隙あらば他の王家を追い落としてその領地を奪い、更なる繁栄を目指す。
 今までは勢力が拮抗していた為、長い間にらみ合いの冷戦状態が続いていた。
 だが、今の世代になって一つの変化が起きた。

 それは圧倒的な力を持つ魔法少女の誕生である。
 それがキルカだった。

「お前が……キルカが最強……?」
「なのなの」

 イクローが尋ねると彼女はこくこくと当然のように頷いた。

 魔法少女の強さは称号の数で表わされるのだが、キルカの称号数は三七五六四。
 それまでどんなに強い魔法少女でもがんばって一五〇〇〇程度の称号数だったのに軽く倍以上の強さである。
 そもそもが一万を超える称号を持つ魔法少女は王家の者以外にはいない。
 その中にあって彼女の存在はまさにティアマト以外の三つの王家にとっては脅威以外の何物でもなかった。

「それと……俺とお前が結婚するのと何か関係があるのか?」

 彼が続けて聞くとキルカはまたこくこくと頷いた。

「魔法少女は基本みんな世界樹ユグドラシルの木の実から生まれるの」
「き、木の実?」
「なの。 でもわたしたち王家の魔法少女はおかあさんから生まれるの」
「どういう事だ?」

 イクローは要領を得ずに怪訝そうな顔になる。

「王家の魔法少女は魔法上がりを迎える前に、こうして人間界にお婿さんを探しにこなくてはいけないの」

 魔法上がり、とは彼女たち魔法少女が避けて通れない宿命だった。
 彼女たちは魔法『少女』である。
 すなわち少女でなくなると魔力を失うのだ。
 多少の個人差はあるが、十八歳で魔力を失うとされている。

 そして今回の婿探しはいつもとは違っていた。
 それはキルカが婿を取って、彼女と彼女の娘が更なる力を付ける事を他の三王家が恐れている事だ。
 つまり、現在他の三王家の王女たちは自らの婿探しをしながら、当然キルカの婿探しへの妨害をも狙っている。

 ここでもう一つ婿探しについて説明すると、その彼女ら力を求める上で避けて通れないのが――"男"という存在だからだ。
 考えてみればわかるのだが、なぜ木の実から生まれる魔法少女に家柄などというものがあるのか?
 それは彼女たち、王家の魔法少女は木の実ではなく、親から生まれたからである。
 王家の魔法少女たちは、十七歳になると成人の儀式として人間界にやってきて"婿探し"をする。
 なぜ日本に現れるのかは単純な理由だ。
 彼女らの使う世界を渡る転送のためのゲートが日本に開いているからというだけに過ぎない。

 そして、遥か昔……初めて魔法少女と契りを交わした男が、日本人だった。
 それだけの理由である。

 それまでは魔法少女たちは魔力を失うと奴隷になったり彼らの村落より放逐されて野垂れ死にしたりと魔力上がりを迎えた後の運命は過酷であった。

 最初に魔法少女と契ったその男が何者でどうなったかはわからないが、子供が生まれた時――当然その子供も魔法少女だった――に、魔法少女たちはある事実に気づいた。
 それは、生まれた子供の魔力が、それまでのどんな魔法少女よりも強力であるという事だ。
 つまり"男女の交配によって生まれた魔法少女は強力な魔力を持って生まれる"という現象の発見であった。
 その発見により彼女たちは男を求めた。そして数多の男性と"子作り"を行うが、残念ながら強力な魔力を持った魔法少女を身ごもる事ができたのは最初の魔法少女を除いて、ほんの三人だった。
 他にも幾人かは子を身ごもったが、彼女らから生まれたのは"男の子"であった。
 それらの男子たちは魔力を持たずに生まれた。
 だが残念ながら"魔法少年"は存在しない。
 彼らには魔法は使えないのだ。

 そしてこの身ごもった四人とその娘が現在の王家の元となった。

 その後の研究で魔法少女を身ごもる事で魔力上がりが起きなくなる事もわかった。
 そして魔法少女を身ごもるには、極々少数の微弱な魔力を持った男性と契る事が必要であるという事も。

「じゃ、じゃあ俺に魔力があるって……いうのか?」

 イクローは驚きのあまり立ち上がって言った。
 キルカはまた当然のように頷いた。

「なのなの。 イキロには魔力があるの。 わたしはネットに潜んで魔力のある男のひとがアクセスしたら体を再構築するプログラムを組んでいたの。 調査であなたに魔力がありそうだったのでバレッタにあなたと接触するようにいったのよ」
「ま、マジかよ……」

 イクローは愕然とした。
 そしてキルカは話の続きを始めた。

 魔力を持った男性、彼らには一つの大いなる有意性があった。
 それは、彼らと契る事によって魔法少女たちは確実に魔法少女を身ごもる事ができたという事だ。
 この男子たちは彼女たちに"天子"と呼ばれ、王家並びに配下の有能な魔法少女たちに重用された。

 だが"天子"が生まれる確率もまた、圧倒的に低く全人類で数百万~数千万人に一人程度だった。
 運よく見つかればいいが見つからない場合は彼らの世代は終わる。
 母である女王が次の世代の彼女たちの妹たちに世代をつなぐ事で王家は保たれてきたのだ。
 一つの王家が天子を見つけられた場合はその家に他の王家は参ってその寵愛を受ける事で次世代へとつないでいく。
 その場合はもちろん天子を持つ王家が圧倒的な力を持つ時代になるのである。

 そして今回はいつもの儀式とは少し様相が変わっていた。
 今回の儀式には四人の魔法少女が同時に参加しているのだ。
 四王家の娘、全員が同時に、だ。

 王家同士が勢力を争うなかで、その次代を担う女王候補が全員一堂に会して、人間界で"婿探し"いや、もはやこれは"男狩り"と言うべき行為を行っていると言う事だ。
 なぜならば次世代の当主達は揃って誕生日が近い、同い年だったからである。

 それはつまり、現在進行形で行われている一連の"男性失踪事件"は彼女たちの手による"男狩り"の産物だという事を意味する。
 元々がいわばライバル同士である。
 彼女たちはきっと手段を問わず、交配可能な男を求めて絨毯爆撃のように男を攫っているのだろう。

「なぁ、攫われた奴らって……殺された、のか?」

 イクローは恐ろしくなって尋ねる。
 キルカは大きな目を彼に向けて、ふるふる、と首を振った。

「魔力を持たないとわかったらたぶん適当なところへ解放されるの」
「そ、そうか……よかった……」

 イクローが胸を撫でおろすと、彼女はまたふるふる、と首を振った。

「魔力で記憶を消されているの。 きっと記憶が全部なくなってもう自分が誰かも何もわからないの」
「……それって死ぬよりひでえよ」

 彼女はこくんと頷いた。

「だからわたしはそうしたくないから、こうやってネットに入り込んでプログラムを組んで情報収集をしていたの」
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