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6品目:スイートトラップvs激辛トラップ
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刻々と迫る開店時間に、星川の下準備は相変わらずの速さだ。山崎はウエイター兼料理の説明者として心を落ち着かせる。
「さてと、開店時間だからやりましょうか」
「そうですね、シェフ!」
開店時間になったと同時に客が多く入って来る、と思われたがその逆だった。
「あれ?結構少ないな…でも赤字じゃないから良いや」
「確かに少ないけど、来てもらったからにはちゃんとおもてなしをしましょう!」
2人は、心を込めて調理と完成した料理を1人1人の客の前に差し出す。
「さて、今日の昼までの客は14人…か。仕方ないね。飲食店の現実はそう甘くないから」
「商売って難しいですね…シェフ」
昼休みに雑談をしながら賄いを食べ始める。何もすることがないまま、お昼休みが終わり午後の営業が始まった。
客足が開店時と異なって少なくなっており、最も多かった明治時代の週間料理より半分以下にまで少なくなっていることに星川は気づく。
「ねぇ山崎君!SNSで、ハッシュタグオールスパイスと検索してみて!」
「分かりました!」
山崎はノートパソコンを取り出し、急ぎで検索を掛ける。星川の勘は無情にも的中した。
「誹謗中傷の嵐だ…週間料理という設定に対するものばかり。やばすぎだろ…」
「ふーん、誹謗中傷ねぇ…。私にとっては痛くも痒くもないけど、利益が少なくなるのは嫌だからちゃんと調べて特定しますか」
山崎のノートパソコンで星川は自身が開いているSNSの状態を見る。すぐに誰の仕業なのか特定することができた。
「これは古賀の同期、石橋の仕業だな?」
「あの…石橋って人も星川さんの知り合いか何かですか?」
「ん?そうだよ。石橋慎二って人で、とても人を馬鹿にすることが好きなブラジル料理を極めた変人よ」
石橋慎二という男は、星川よりも豪快で主にブラジル料理のシュラスコを得意とする。焼き加減も絶妙で、肉の旨味と甘味の限界まで引き立たせることを得意とするバーベキューの神童とも呼ばれる。
「なら、この人をどうにか止めれば良いってことですね。どうしましょうか?」
「んー…シュラスコって辛めの味付けのイメージしかないし、スーパーフードのアサイーってやつを使ってそうだよね。よし、私たちも対抗しようか。誹謗中傷が来たなら料理で対抗するまで!」
星川は、貴族の好むあのお菓子を作り始める。卵白を泡立てながら砂糖を入れてメレンゲを作り、着色料を入れる。その間に中身のクリームを作り上げて焼き上がりを見ながら準備をする。
「これはフランス発祥のマカロン!」
「そうよ。英国貴族だからこその強みがこれなのよ。辛いものには甘いもの!」
相反する勝負となる2つの料理。どちらが勝つのか想像が付かない、山崎の立場は枯れ木の山の賑わいという状態だ。
翌日、イギリスの料理メニューにマカロンと紅茶を用意した。値段も良心的なワンコインだ。もちろん他の料理もテイクアウトできるという、最強の布陣で準備する。
予想的中なのか、午後になるとスーツ姿のサラリーマンやマダムがお越しになる。これを星川は読んでいたのだ。
「ここは話し合いをするにしても、マダム同士で座談会するにはもってこいの場所。お菓子と紅茶を手に取れば、みんな仲良く食べる。仲良ければ全て良し」
更に星川は、テイクアウトでイギリス料理を提供するという考えを示して会計を受けた殆どの客がイギリス料理のテイクアウトを購入する。世界を股にかける女料理人は、考えも想像も常人を超えてくる。営業を学ぶ商学部も驚くものだ。
「これで最後かな。赤字脱却した事だから、今日は2人で夕飯済ませようか。私の師匠の所へ食べに行こうよ」
「僕もですか…シェフ。分かりました。ご一緒しますね」
楽しく話しながら店の清掃をした後、星川の師匠にあたる立川の店へ目指して歩く。2人の手は自然と恋人繋ぎをしていた。
「到着したよ!ここが立川シェフのお店…あれ?今日は定休日だっけ」
「星川シェフ、明かりついてるから少し行ってみましょう」
明かりの漏れる1つの部屋の近くへと2人は忍び足で近付く。部屋には、立川シェフともう1人のシェフが言い争いをしていた。
「お前は何度言ったら分かる?そんなに俺の店を潰したいのか?お前のブラジリアン料理に何が出来るのかここで証明しろよ」
「潰したいとか一言も言ってませんよ、ただオールスパイスを潰す為に手を組みましょうって事です。それに、あなたはオールスパイスのシェフ星川の師匠ですよね?なら師は弟子に訓練させるべく、試練を与えるべきなのではありませんか?」
「今すぐに出て行け!石橋」
会話は何と立川と誹謗中傷をした元凶、石橋との店に関するものだった。それを耳にした2人は、立ち崩れるばかりだ。
「店を潰すってどうやって潰す気なの…石橋…」
「星川シェフ、一度離れましょう。そうしないと今バレたら大変ですよ」
山崎は、星川の承諾を得る前に自身の住む家へ逃げるようにして帰宅した。
「さてと、開店時間だからやりましょうか」
「そうですね、シェフ!」
開店時間になったと同時に客が多く入って来る、と思われたがその逆だった。
「あれ?結構少ないな…でも赤字じゃないから良いや」
「確かに少ないけど、来てもらったからにはちゃんとおもてなしをしましょう!」
2人は、心を込めて調理と完成した料理を1人1人の客の前に差し出す。
「さて、今日の昼までの客は14人…か。仕方ないね。飲食店の現実はそう甘くないから」
「商売って難しいですね…シェフ」
昼休みに雑談をしながら賄いを食べ始める。何もすることがないまま、お昼休みが終わり午後の営業が始まった。
客足が開店時と異なって少なくなっており、最も多かった明治時代の週間料理より半分以下にまで少なくなっていることに星川は気づく。
「ねぇ山崎君!SNSで、ハッシュタグオールスパイスと検索してみて!」
「分かりました!」
山崎はノートパソコンを取り出し、急ぎで検索を掛ける。星川の勘は無情にも的中した。
「誹謗中傷の嵐だ…週間料理という設定に対するものばかり。やばすぎだろ…」
「ふーん、誹謗中傷ねぇ…。私にとっては痛くも痒くもないけど、利益が少なくなるのは嫌だからちゃんと調べて特定しますか」
山崎のノートパソコンで星川は自身が開いているSNSの状態を見る。すぐに誰の仕業なのか特定することができた。
「これは古賀の同期、石橋の仕業だな?」
「あの…石橋って人も星川さんの知り合いか何かですか?」
「ん?そうだよ。石橋慎二って人で、とても人を馬鹿にすることが好きなブラジル料理を極めた変人よ」
石橋慎二という男は、星川よりも豪快で主にブラジル料理のシュラスコを得意とする。焼き加減も絶妙で、肉の旨味と甘味の限界まで引き立たせることを得意とするバーベキューの神童とも呼ばれる。
「なら、この人をどうにか止めれば良いってことですね。どうしましょうか?」
「んー…シュラスコって辛めの味付けのイメージしかないし、スーパーフードのアサイーってやつを使ってそうだよね。よし、私たちも対抗しようか。誹謗中傷が来たなら料理で対抗するまで!」
星川は、貴族の好むあのお菓子を作り始める。卵白を泡立てながら砂糖を入れてメレンゲを作り、着色料を入れる。その間に中身のクリームを作り上げて焼き上がりを見ながら準備をする。
「これはフランス発祥のマカロン!」
「そうよ。英国貴族だからこその強みがこれなのよ。辛いものには甘いもの!」
相反する勝負となる2つの料理。どちらが勝つのか想像が付かない、山崎の立場は枯れ木の山の賑わいという状態だ。
翌日、イギリスの料理メニューにマカロンと紅茶を用意した。値段も良心的なワンコインだ。もちろん他の料理もテイクアウトできるという、最強の布陣で準備する。
予想的中なのか、午後になるとスーツ姿のサラリーマンやマダムがお越しになる。これを星川は読んでいたのだ。
「ここは話し合いをするにしても、マダム同士で座談会するにはもってこいの場所。お菓子と紅茶を手に取れば、みんな仲良く食べる。仲良ければ全て良し」
更に星川は、テイクアウトでイギリス料理を提供するという考えを示して会計を受けた殆どの客がイギリス料理のテイクアウトを購入する。世界を股にかける女料理人は、考えも想像も常人を超えてくる。営業を学ぶ商学部も驚くものだ。
「これで最後かな。赤字脱却した事だから、今日は2人で夕飯済ませようか。私の師匠の所へ食べに行こうよ」
「僕もですか…シェフ。分かりました。ご一緒しますね」
楽しく話しながら店の清掃をした後、星川の師匠にあたる立川の店へ目指して歩く。2人の手は自然と恋人繋ぎをしていた。
「到着したよ!ここが立川シェフのお店…あれ?今日は定休日だっけ」
「星川シェフ、明かりついてるから少し行ってみましょう」
明かりの漏れる1つの部屋の近くへと2人は忍び足で近付く。部屋には、立川シェフともう1人のシェフが言い争いをしていた。
「お前は何度言ったら分かる?そんなに俺の店を潰したいのか?お前のブラジリアン料理に何が出来るのかここで証明しろよ」
「潰したいとか一言も言ってませんよ、ただオールスパイスを潰す為に手を組みましょうって事です。それに、あなたはオールスパイスのシェフ星川の師匠ですよね?なら師は弟子に訓練させるべく、試練を与えるべきなのではありませんか?」
「今すぐに出て行け!石橋」
会話は何と立川と誹謗中傷をした元凶、石橋との店に関するものだった。それを耳にした2人は、立ち崩れるばかりだ。
「店を潰すってどうやって潰す気なの…石橋…」
「星川シェフ、一度離れましょう。そうしないと今バレたら大変ですよ」
山崎は、星川の承諾を得る前に自身の住む家へ逃げるようにして帰宅した。
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