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21話:団結

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 山本と前宮のデートは成功に終わり、山本は満足していた。しかし、次の日が練習でもあったのですぐに切り替えた。着替えと演舞練習に使う道具を揃えて就寝した。

 その早朝、電車に乗り揺られていたがいつもとは違う。

(いつもなら何も変哲のない感覚なのに胸が抑えられるような気持ちだ…。前宮君とデートしたからかな。ネックレスつけちゃってるし、よく見たら光ってる…。3人に自慢しようかな)

 練習の場所へ到着するとそこには守山と高部、鶴海が先に準備を進めている。

「お!まゆっちおはよー!え、よく見たらネックレス付けてるじゃん。可愛い」

「おはようって今日はなんか可愛いね!昨日の前宮とのデート楽しかった?」

 守山と高部は抉り返すように質問する。山本はそんなデートに対してこう答える。

「とても楽しかったよ!私、前宮君と結婚する事になったしネックレスも良いやつだから本当に驚いた。今日行く時、ずっと胸を抑えられるような気持ちになった…。前宮君のこと考えるとすごく変な気分になる…」

 山本らしくない答えだったが、幸せそうな顔を見て守山は嬉しそうだった。

 団員も続々と集まって男子も集まる。大山も変わった山本を見て感心した。

「なんか山本さん、明るくなったね。可愛いネックレスしちゃって…誰かのお守りか?」

「ふふっそうかもね」

 円陣を組んで気合を入れ直す。山本は動きのキレが良くなり、団員もマネして全体が良くなった。声を出すところや素早い動きも上達した。

 でも…

「まだ声足りない!何回言ったら気がすむの?もっと気合い入れてやれ!」

「遅い!そこは何度もやったでしょ?いい加減に学べよ。へたくそかよ」

 守山と高部の罵声が響き渡る。

 午前の練習が終わりお昼の休憩時間になると突然な来客が男女応援団の前に現れた。

「リハビリでちょっと近くにきた。せっかくだから寄ってみた。みんなお久しぶり」

 何と前宮がリハビリのために歩いて練習場所へやってきた。前宮の姿を見て山本は顔を真っ赤にしていた。

 それも綺麗なりんごのように紅潮していた。

「あれれ?まゆっち顔赤くなってるよ!恥ずかしいの?顔隠さないでよ…」

「もう、来るなら連絡してよね!涼太君。恥ずかしいよぉ…」

「ごめんごめん…お、大山もいるじゃないか。せっかくだしご飯ご馳走しようか?弁当屋あったからそこで好きなもの買って頂いて僕が支払うよ」

 顔を赤くする山本に攻めまくる守山。そして、またも気前良くお昼ご飯をご馳走すると言った前宮に一同は歓喜する。大山は言葉に甘えて1番量が多い弁当を選んだ。女子24人に男子14人で合計38人分の弁当を前宮はご馳走した。

 料金もえげつない。

「えっと…料金は3万7000円です。お支払いは各々で行います…?」

「あ、全額払うよ。4万円から頼む。急な注文に対応してくれてありがとうね」

 前宮の支払う姿を見た男女応援団幹部は拍手する。山本とお揃いのネックレスを見て視線は山本に集まった。

 一つの窪みがある事に気づき、守山は2人に話す。

「そのネックレスよく見たら窪みがあるね。くっつけれたりするの?」

「よく見たら本当だ。真由さん、ちょっとだけ外してやってみようか…」

「やってみよっか」

 2人はネックレスを外して窪みをくっつける。よく見ると大きなハートが2つ重なって見えるようになった。団員は歓声が響き渡り、拍手喝采した。2人は顔を赤くしながらも外して2人の首にそれぞれネックレスをつける。

 特に前宮が山本のを付けた後、彼女の胸に大切かつ優しく入れたシーンを見た守山たちはキュンとしていた。

「もう理想のカップルかよ!まゆっちの顔可愛すぎるー!そして前宮も流石すぎる」

「なみ~…それは言い過ぎだよぉ~。もう涼太君、確かにありがたいけど私の気持ちが危うくなるからやめてよn…っ!?」

 今度は前宮はご褒美のキスを山本のおでこにした。女子団員はメロメロで男子は羨ましそうに見る。

 前宮は、他の人に聞こえないように小さな声で山本の耳に呟く。

「驚かせてすまない…。どうすればいいか分からずで思いついたことをしている。反応が可愛い…。そのネックレスには僕の御神体を宿らせた。君を守ってくれるはず…」

「…えっ!?」

 前宮が離れた後、周りを落ち着かせた。

 そして大山は完食した後、前宮を中心にして円陣を組む。

「おい前宮よ。お前、山本さん心配かけてしまったんだから声出しして帰れよ!俺たちを鼓舞するようにしてさ」

「ん?分かった。少しずつ回復してるから鼓舞しよう。ちょっと待ってて…」

 配置を決めて前宮は男子女子応援団の円陣の中心に立ち、息を大きく吸い込んで叫ぶ。

「こんにちは!皆さんの演舞も完成に近づき、多くの絆を生む事が出来てるのではないでしょうか?守山、山本、高部、鶴海、大山に聞きましたがこの演舞は解散寸前まで追い込まれていました。でも、僕とこの5人で教育委員会へ行って阻止してきました!もう大丈夫です。次の新しい校長は分かりませんが今まで築き上げてきたものは壊れません。だから、全力で頑張ろう。そして、真由さん!どんな事があっても僕が守ります!さぁいこー!!」

 最後はもはや狙っただろと言わんばかりのものだったが、山本は嬉しそうにネックレスを触りながら午後の練習に取り組む。汗ばむ山本にネックレスは弾みながらも光り輝いた。

 守山たちは羨ましい眼差しを彼女に送る。

「まゆっち良いなぁ~私も彼氏欲しい」

「ほんとそれな~前宮みたいな人が良いな」

「分かりみが深い!」

 山本を挟んで3人は自分の欲する条件を話しまくった。

 練習後、着替えて山本は1人自分の体を気にする。それは体目的でなかった前宮とは言え、自分に自信を持てなかったからだ。大切なネックレスを両手で包んで大切に持った。心の中で念じた。

(前宮君と結婚したら仲良く暮らそうね。守るって言ってくれたけど私も前宮君のこと守る!そして、幸せになろう)

 そう念じているうちに涙を流していた。自分のことと応援団をここまで守ってくれる前宮の活躍にありがたみを持った。帰宅後お風呂で練習した後前宮と電話して会話をした。

 突如気になることが一つ浮かび上がる。

「そういえば退学証明書集めておけって言ってたけどあれどうしたの?」

「そのまま守山の破れたブラウスに包んで持たせたから守山が持ってるはず。あれは教育委員会に提出して今の教育体制を崩す作戦さ。森田さんもそれを望んでると思って…」

 相変わらずの前宮にほっとした山本。遅くまで電話をした後、ベッドに横になり眠った。

 それも入院していた前宮の横に可愛い顔で寝ていた時のように…。
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