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ジョージ帰国へ

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「確認しますが、貴殿らはこの土地の者ではございませんな?」

「如何にも。我等は隣国であるヒュンダルン王国より参った」

「ヒュンダルン王国から? 貴殿のその太刀筋からして只者ではないと思っていましたが。あの、差し支えなければ身の上を明かして頂きたい。であれば此方も真相を話しましょう」

 ここで俺は仮面を取った。オリバーなら俺が素顔を晒した意味が理解出来る筈だ。
 案の定オリバーもそれに続いて仮面を取り素顔を晒すと、改めて胸を張り言い放つ。

「こちらはヒュンダルン王国、ビュイック侯爵家のご嫡男、ジョージ=ビュイック様である」

 こちらは正体を明かした。これで彼も真相を隠さずに話さなければならない。

「そして我こそは、オリバー=ハーディング。ジョージ様の従者を勤めている」

「ラビーワ王国近衛騎士団所属、ドレッツァ=タスティエーラです」

「近衛騎士団だと?」

「如何にも」

 なるほど近衛騎士団所属か。王族を守る最後の盾。道理で守備に徹すればオリバーの猛攻にも耐えられる訳だ。
 だがそうなると余計に気になる。

「近衛騎士が村の収穫祭に居るのは偶然ではないな?」

 王族を警護する近衛騎士が武闘会に参加する理由とは何だ?

「ご説明させて頂きます。実は私の妻の弟、つまり義弟がこちらのご領主の騎士団に厄介になっておりまして」

「それで?」

「ご領主は2年前に代替わりしました。この辺境の地をよく治めていると思うのですが、何故か今一つ領民に受けが悪いのです」

 なるほど読めた。

「そこで領民受けするために太っ腹な領主を演じようと高額賞金の武闘会を催しつつ、実際には用意した騎士が優勝するから、ビタ一文払わなくて済むという訳か?」

「如何にも。この辺境の地では財政は火の車、無い袖は振れないのでこの様な事を思い付いた義弟の提案を採用したそうです」

「賞金が出る訳でもないのに近衛騎士団のそなたが参加した理由は?」

「義弟だけでは腕利きの者に遅れを取る事も考えられます。そこで義弟に泣きつかれまして、仕方無く休暇を取り私的な立場で参加しております」

「その義弟殿は何処に?」

 姿を全く見ないが、出ている筈だよな?

「義弟でしたら準々決勝で敗退しました。全身をマントで覆ったに数秒で」

 俺が準決勝で当たるか。ますます戦いたくなった。

「ジョージ様、オリバー殿、心中お察ししますが、どうかご容赦ください。私ではオリバー殿には敵わないと判断された様です」

「判った。こちらは金に困っている訳ではない。そなたに免じこの場は引くとしよう。だが先の試合、オリバーと剣を合わせてそなたは実際にはどう思う?」

 このドレッツァ、悔しさを滲ませながらもオリバーを讃えている。一角ひとかどの者と見た。

「私は守りに入ればこのラビーワ王国では近衛騎士団の中でも右に出る者は在りません。しかし下手に打って出ようとうとして構えを崩した瞬間に間違いなくオリバー殿に打ち込まれていたでしょう。悔しいですが私ではオリバー殿に勝てません」

「見事な自己分析だ。ラビーワ王国の近衛騎士団でなければ我が騎士団に迎え入れたいくらいだ」

「恐れ入ります」

 その後俺達はドレッツァの義弟の用意した宿に泊まって帰国に備える事になった。
 尤もこの宿、宿とは名ばかりで実際は村の集会所の様だ。この村には訪れる者が殆ど居ない為に宿屋が存在しないそうだ。
 だから客人は村の集会所に泊めるそうだが、それでも何とかもてなそうとするドレッツァとその義弟の心意気が嬉しかった。
 徒歩で30分離れた場所に宿屋が在るそうだが、今夜はここに泊まろうと思う。
 それにしても俺と準決勝で当たる筈だった、武闘会が中止になる前に姿を消したそうだが凄い腕前らしい。何者なんだ?

 それに幾ら探してもスカーレットが見付からない。帰れる下地がようやく整ったというのに。
 今回はもう帰国しなければならないが絶対に見付けるからな、スカーレット。
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