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名湯誕生?

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 魔物は片付いたわ。こうなるとあとの問題は怪我した冒険者ね。

「お嬢様、やはり彼等をお助けになられるのですね?」

「乗りかかった船よ」

 聖女だった私がこのラビーワ王国に到着したその日にあんな怪我人に遭遇する。これも何かの縁なのかしら?

「行くわよ」

「ですがお嬢様」

 ナンシーは戦うと酔が覚めるのかしら?
 すっかり口調が戻ったナンシーを振り払って館の中に入ると女将さんが不安そうに聞いて来る。
 
「魔物は?」

「任せてって言ったでしょ。外に死体が転がっているから爪とか毛皮とかの素材は全てどうぞ。それで私達の宿代になると思うけど、どうかしら?」

 大きな町に有るギルドに売れば宿代を払ってもお釣りが来る位になるけど、荷物になるから遠慮するわ。
 そんな気持ちから場を和ませるつもりで冗談半分に女将さんに言ってみたけど、やっぱりそんな場合じゃないわよね。失礼しました。
 
「それで怪我人は?」

 相方を担いで来た方も外傷が酷いけど、担がれて来た方はもっと酷いわ。
 見れば判るけど頭を爪で酷くやられたのね。それにお腹も。この傷だときっと臓器の損傷もしてるでしょうね。
 意識も無いし出血も多い、このままだと間違い無く明日の夜明け前には死ぬわ。

「ナンシー、やるわよ!」

「ですがお嬢様、ここでお嬢様の能力おちからをお使いになられると」

 聖女の能力を使うとヒュンダルン王国で処刑された筈の聖女が生きてラビーワ王国に逃れて来たって噂が広まってしまうかも知れない。

「でも…」

 この怪我なら余裕で治せるわ。でも、聖女の能力で治ったなんて知られる訳にはいかないし。
 困ったわ。治せる怪我人が居るのに能力が使えないなんて。

「もう、取り敢えず治すわ。このままだと死んじゃうから。考えるのはその後よ」

「畏まりました。ですが万が一にも彼等が他言する様な愚か者でしたら斬り捨てる事をお許し下さい」

 物騒な事を言うけどこれは私を思っての事なのよね。

「取り敢えず女将さんをお願い」

「畏まりました」

 言った瞬間にナンシーは女将さんの後ろに音もなくスッと回り込むと、軽い手刀を彼女の後頭部に当てて意識を奪った。
 それを確認して私も2人の冒険者に手を翳すの。

「この者等に安らぎを」

 これでこっちの2人も揃ってぐっすりと寝たわ。本当は女将さんにもこれで寝て欲しかったけど、これって不安な状態の人じゃないと効果無いから仕方無いわよね。

「それじゃ、やるわよ!」

 私は彼等の傷口に手を翳して思いっ切り聖女の能力を使った。
 ナンシーによると、やはりと言うべきかこの時の私はかなり光っていたらしい。



◯△▲


 結論から言うと、彼等の傷は綺麗に治ったわ。でも問題はここからね。

「どうやって誤魔化そう?」

「お嬢様、私に妙案がございます」

「妙案?」

 ナンシーが何かを思い付いたみたい。妙案って何かしら?

「お嬢様の能力は水に付与が可能でしたよね?」

「ええ。聖水って呼ぶ人もいたわよね」

 聖女として地方を巡っていると、そう滅多に行けない所に行く事も多かったわ。
 そんな時に置き土産じゃないけど水とか布に能力を付与して来る事が多かっくかわね。
 付与した能力は水が1番長持ちしたわ。次が布で、木材の順。鉄とかは付与は出来なくは無いけど長持ちしなかったわね。

「ここの温泉にお嬢様の能力を付与して彼等に掛けるのです。彼等の怪我を治したのは飽くまでも温泉と言う事にして」

 それで上手く行くの?
    
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