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料理長の職業病
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帰国前日に収穫祭とは運がいい。現在のヒュンダルンは国中の何処を探しても祭りなんて出来る所は無い。
久し振りに祭りを楽しませてもらうとするか。
「帰ればまた魔物討伐の日々だ。今日くらいは楽しんでも罰は当たらないだろう」
「はっ!」
「お前らも祭りを楽しんで来い!」
「ありがとうございます。ジョージ様」
護衛として付いて来た2人にも声を掛け、俺はオリバーと祭りを楽しむ群衆の中へと入って行った。
思えば祭りなんて我が家に来て間もないスカーレットを連れ出した時以来だ。あの時は後で知られて父上から大目玉だったなぁ。でもあの時のスカーレットの嬉しそうな顔は忘れられん。
今回は1度帰国するがスカーレットは必ず見つけ出して連れ帰る。
◯▲△ ナンシー目線に変わります。
「おっ、やってるな。盛況じゃないか」
「料理長!」
私がシンシアとケイトの女3人で何とか切り盛りしていると意外な人が顔を見せた。料理長だ。
「料理長、若女将はどうされました?」
料理長がここに居るという事は若女将がどうされたのか気になってしまう。
「若女将か? 自分は残るって言ってたぜ」
「えっ? それでは若女将はお一人で残られているのですか?」
「ああ。お客さんも誰も居ないけどだからってドアを閉めて鍵を掛ける訳にもいかねえからな、自分が残らないといけないって譲らねぇんだよ」
何と言う事でしょう!
「若女将が心配です。私は戻ります!」
「まあ待てって。皆に楽しんで欲しいって若女将の気持ちが判らねぇ訳じゃないだろ?」
そうでした。若女将はその様なお方です。今まではお客様が一杯で、従業員が祭りに繰り出すなんて考えられませんでしたからね。
「こっちは俺がやっておくから3人は祭りを楽しんできな」
「ですが料理長は?」
「俺は祭りを楽しめねぇ体質だって判った。実はさっきから何を食べてもな、もう一工夫でもっと美味くなるのにって思っちまうんだ。だから大人しくイモを揚げる事にしたわ」
職業病ですかね。料理長らしいですけど。
「判りました。ではシンシアとケイトは祭りを楽しんでらっしゃい」
「ナンシーさんは?」
「料理長を手伝います」
若女将はシンシアとケイトのどちらかと仰ってから、2人共と言い換えました。つまりはこの姉妹に揃って祭りを楽しんで欲しいのですよね。
ですから必然的に私は残ります。
「何を言ってるんだ。お前さんも祭りを楽しむんだよ。若女将に言われただろ?」
「うっ、確かに。判りました料理長、それではお言葉に甘えて」
実は祭りへの参加は初めてなので二の足を踏んでいましたが、仕方有りませんね。
私は生まれて始めて祭りを楽しむ人々の中に身を投じました。
◯▲△ ジョージ視点です。
隣国の祭りは初めて口にする物が殆どだ。だが共通している事が有る。
「どれも皆、それなりに旨いな」
祭りの屋台料理独特の魅力とでも言うべきか、繊細とは程遠いが引き付けられる様な匂いと味だ。
「あそこの屋台が一際賑わっている様だが?」
「何でしょうか? あの屋台の客に話を聞いて参ります」
数ある屋台の中でも異常な程に行列の出来ている屋台を見つけた。するとすぐにオリバーが情報収集に行ってくれる。気の利く奴だ。
「どうもジャガイモを使った料理を提供している様です」
「ジャガイモ? ジャガイモの料理があんなに評判なのか?」
「油で揚げているそうです」
ヒュンダルンでジャガイモを使った料理と言えばシチューで使うか輪切りにして焼くくらいだ。平民達は油で揚げたりする事があり、それが旨いと兵から聞いた事が有るが我々貴族は揚げたジャガイモを食べた事が無い。
「折角だ、食べてみるか?」
「それでは手に入れて参ります」
「いやオリバー、我々も並ぶぞ。ここでは我々は他所者だ。それに我が領内だとしても祭りの興に水を差す真似をするな」
行列の最後尾ではなく、いきなり屋台に向かおうとするオリバーを嗜める。実直な奴だが何でも俺を優先的に考える事が玉に傷だ。
「実は買った客の話では店員は見目麗しい女性との事です」
「それでお前は自分が行こうとしたのか?」
「あっ、いえ」
オリバーの奴が珍しくしどろもどろになる。図星か。
そして俺達の番が近付いてきた。
久し振りに祭りを楽しませてもらうとするか。
「帰ればまた魔物討伐の日々だ。今日くらいは楽しんでも罰は当たらないだろう」
「はっ!」
「お前らも祭りを楽しんで来い!」
「ありがとうございます。ジョージ様」
護衛として付いて来た2人にも声を掛け、俺はオリバーと祭りを楽しむ群衆の中へと入って行った。
思えば祭りなんて我が家に来て間もないスカーレットを連れ出した時以来だ。あの時は後で知られて父上から大目玉だったなぁ。でもあの時のスカーレットの嬉しそうな顔は忘れられん。
今回は1度帰国するがスカーレットは必ず見つけ出して連れ帰る。
◯▲△ ナンシー目線に変わります。
「おっ、やってるな。盛況じゃないか」
「料理長!」
私がシンシアとケイトの女3人で何とか切り盛りしていると意外な人が顔を見せた。料理長だ。
「料理長、若女将はどうされました?」
料理長がここに居るという事は若女将がどうされたのか気になってしまう。
「若女将か? 自分は残るって言ってたぜ」
「えっ? それでは若女将はお一人で残られているのですか?」
「ああ。お客さんも誰も居ないけどだからってドアを閉めて鍵を掛ける訳にもいかねえからな、自分が残らないといけないって譲らねぇんだよ」
何と言う事でしょう!
「若女将が心配です。私は戻ります!」
「まあ待てって。皆に楽しんで欲しいって若女将の気持ちが判らねぇ訳じゃないだろ?」
そうでした。若女将はその様なお方です。今まではお客様が一杯で、従業員が祭りに繰り出すなんて考えられませんでしたからね。
「こっちは俺がやっておくから3人は祭りを楽しんできな」
「ですが料理長は?」
「俺は祭りを楽しめねぇ体質だって判った。実はさっきから何を食べてもな、もう一工夫でもっと美味くなるのにって思っちまうんだ。だから大人しくイモを揚げる事にしたわ」
職業病ですかね。料理長らしいですけど。
「判りました。ではシンシアとケイトは祭りを楽しんでらっしゃい」
「ナンシーさんは?」
「料理長を手伝います」
若女将はシンシアとケイトのどちらかと仰ってから、2人共と言い換えました。つまりはこの姉妹に揃って祭りを楽しんで欲しいのですよね。
ですから必然的に私は残ります。
「何を言ってるんだ。お前さんも祭りを楽しむんだよ。若女将に言われただろ?」
「うっ、確かに。判りました料理長、それではお言葉に甘えて」
実は祭りへの参加は初めてなので二の足を踏んでいましたが、仕方有りませんね。
私は生まれて始めて祭りを楽しむ人々の中に身を投じました。
◯▲△ ジョージ視点です。
隣国の祭りは初めて口にする物が殆どだ。だが共通している事が有る。
「どれも皆、それなりに旨いな」
祭りの屋台料理独特の魅力とでも言うべきか、繊細とは程遠いが引き付けられる様な匂いと味だ。
「あそこの屋台が一際賑わっている様だが?」
「何でしょうか? あの屋台の客に話を聞いて参ります」
数ある屋台の中でも異常な程に行列の出来ている屋台を見つけた。するとすぐにオリバーが情報収集に行ってくれる。気の利く奴だ。
「どうもジャガイモを使った料理を提供している様です」
「ジャガイモ? ジャガイモの料理があんなに評判なのか?」
「油で揚げているそうです」
ヒュンダルンでジャガイモを使った料理と言えばシチューで使うか輪切りにして焼くくらいだ。平民達は油で揚げたりする事があり、それが旨いと兵から聞いた事が有るが我々貴族は揚げたジャガイモを食べた事が無い。
「折角だ、食べてみるか?」
「それでは手に入れて参ります」
「いやオリバー、我々も並ぶぞ。ここでは我々は他所者だ。それに我が領内だとしても祭りの興に水を差す真似をするな」
行列の最後尾ではなく、いきなり屋台に向かおうとするオリバーを嗜める。実直な奴だが何でも俺を優先的に考える事が玉に傷だ。
「実は買った客の話では店員は見目麗しい女性との事です」
「それでお前は自分が行こうとしたのか?」
「あっ、いえ」
オリバーの奴が珍しくしどろもどろになる。図星か。
そして俺達の番が近付いてきた。
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