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宿屋に1人
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いよいよ収穫祭当日となりナンシーとシンシアとケイトの3人は準備を整えて村の中心部へと向かって行った。
物が大量のジャガイモだし歩くと30分も掛かるからデビットさんに馬車で迎えに来てもらって。
デビットさんはぎこちないエスコートでナンシーと他2名を馬車に乗せると材料や道具も全部1人で積み込んでくれたわ。デビットさんの株が上がってればいいわね。
◯▲△
さてチェックインが始まったけど連泊のお客様も含めて本日のお客様は4組12名ね。
本来ならば料理以外の全ての事を1人でしなきゃいけないから大忙しの筈なのに、暇だわ!
「祭りに行かせてもらうからには、若女将に迷惑をお掛けしないように!」
と言うナンシーの指示でシンシアとケイトが昼までに仕事をきっちりと終わらせて行ったからだ。
使っている部屋が少ないとは言え普段よりも随分と気合が入っていたわね。お祭りってそんなに気合が入るのかしら?
私はお祭りって居酒屋の娘だった頃は店が忙しくてお祭りは不参加だったわね。
オサリバンの父母は「祭りに行っていいよ」なんて言っていたけど、あの忙しさを見たらとてもじゃないけど行けないわ。
ビュイック侯爵家の頃は領内のお祭りをお義兄様と見に行った事が有るわ。
本来なら警備の都合上、領主の家の者が民でごった返すお祭りになんて行けないのだけれども、王太子の婚約者になる為の教育を受けていた私を気分転換に連れ出してくれたの。
お祭りに行ったのはその時の1度だけね。
◯▲△
「若女将、収穫祭に行くから夕食は要らないよ」
4組12名のお客様から異口同音に言われたけど、それならそうと早めに言って欲しかったわね。対処の仕方も変わってくるのに。
「そうだわ!」
私は厨房に行くとその旨を料理長に伝える。
「料理長、今日はもう厨房はいいわ。最後なんだから収穫祭に行ってみたら?」
「俺が祭りに行くのか?」
料理長は右手の人差し指を自分に宛てて鳩が豆鉄砲を喰らった様な表情をしている。
「そうよ。だって料理長はもうすぐヒュンダルンに行っちゃうんでしょ?」
「こんなジジイに今更祭りに行けって?」
「そう。それでこの村や『一角竜』の事を息子さんご一家に話してみて。そして気が向いたら今度はお客様として来て」
出来れば息子さん一家にここに移住してもらう事が理想だけどね。
「判ったよ。それじゃ行ったついでにあいつ等がちゃんとやっているかを見てくるわ」
「お願いね。特にナンシーがシンシアとケイトに厳しくしていたら注意してね」
ヒュンダルン王国随一の武門の家、ハーディング子爵家に生まれたナンシーは指導に身が入ると厳しくなりがちだからね。
口の悪い貴族はハーディング子爵を脳筋なんて呼んでいたけど相手にする価値もない者の僻みなんて気にする必要も無い。
ハーディング子爵はビュイック侯爵家の配下に入ったから何回か会った事が有るけど、竹を割った様に豪放で好感を持てる人だったわ。
今はナンシーと名乗っている娘のローザの事を「あれが男であれば比類無き剛の者となっていたでしょう」って残念がっていたわね。
子供の中でも1番強いって。ナンシーも「兄と手合わせしても、3回に2回は勝ちます」って言っていたわ。
そのハーディング家の皆も魔物退治をしているでしょうね。悪い事をしちゃったわ。
◯▲△
ジョージに視点が変わります。
「ハクション!」
「どうした?」
「申し訳ありません。ジョージ様」
「別に謝る事じゃないだろう。くしゃみは生理現象だぞ」
このオリバー=ハーディング、律儀なのは良いのだが度が過ぎると考え物だ。
この俺、ジョージ=ビュイックが聖女だった妹探しの旅に出ると言ったら律儀に同行してくれている。
尤もオリバーはスカーレットの侍女であるローザの兄だ。必然的にオリバーも妹を探している事になる。
だが流石にいつまでも留守には出来ない。この旅も成果を得られぬまま終わらざるを得ない。残念だ。
「お嬢様は何処へ行かれたのでしょうか?」
「国境近くの町ではスカーレットを襲おうとした者達8名をローザが斬った事までは判った。本音を言えばまだ探したいが何時までも留守には出来ないからな」
突然増えた魔物に対して我が領は何とか対応出来ている。そして魔物が増えた事で王宮もビュイック家への監視などしている余裕が無くなった。
今こそスカーレットを取り戻す絶好の機会だったのに。
スカーレットを実の娘の様に思っている両親はスカーレットの消息が分からなくなってから元気が無い。
また一家4人で暮らせればと思ったのだが。
「オリバー、今夜はこの村で泊まって明日の帰国に備えよう。前に来た時よりも活気が有る様だが」
「はい。どうもあの村では収穫祭が行われているそうです」
祭りか。スカーレットを1度だけ連れ出した事が有ったな。
「祭りか、何か気になるな。行ってみよう!」
俺達は祭りに行く事にした。
物が大量のジャガイモだし歩くと30分も掛かるからデビットさんに馬車で迎えに来てもらって。
デビットさんはぎこちないエスコートでナンシーと他2名を馬車に乗せると材料や道具も全部1人で積み込んでくれたわ。デビットさんの株が上がってればいいわね。
◯▲△
さてチェックインが始まったけど連泊のお客様も含めて本日のお客様は4組12名ね。
本来ならば料理以外の全ての事を1人でしなきゃいけないから大忙しの筈なのに、暇だわ!
「祭りに行かせてもらうからには、若女将に迷惑をお掛けしないように!」
と言うナンシーの指示でシンシアとケイトが昼までに仕事をきっちりと終わらせて行ったからだ。
使っている部屋が少ないとは言え普段よりも随分と気合が入っていたわね。お祭りってそんなに気合が入るのかしら?
私はお祭りって居酒屋の娘だった頃は店が忙しくてお祭りは不参加だったわね。
オサリバンの父母は「祭りに行っていいよ」なんて言っていたけど、あの忙しさを見たらとてもじゃないけど行けないわ。
ビュイック侯爵家の頃は領内のお祭りをお義兄様と見に行った事が有るわ。
本来なら警備の都合上、領主の家の者が民でごった返すお祭りになんて行けないのだけれども、王太子の婚約者になる為の教育を受けていた私を気分転換に連れ出してくれたの。
お祭りに行ったのはその時の1度だけね。
◯▲△
「若女将、収穫祭に行くから夕食は要らないよ」
4組12名のお客様から異口同音に言われたけど、それならそうと早めに言って欲しかったわね。対処の仕方も変わってくるのに。
「そうだわ!」
私は厨房に行くとその旨を料理長に伝える。
「料理長、今日はもう厨房はいいわ。最後なんだから収穫祭に行ってみたら?」
「俺が祭りに行くのか?」
料理長は右手の人差し指を自分に宛てて鳩が豆鉄砲を喰らった様な表情をしている。
「そうよ。だって料理長はもうすぐヒュンダルンに行っちゃうんでしょ?」
「こんなジジイに今更祭りに行けって?」
「そう。それでこの村や『一角竜』の事を息子さんご一家に話してみて。そして気が向いたら今度はお客様として来て」
出来れば息子さん一家にここに移住してもらう事が理想だけどね。
「判ったよ。それじゃ行ったついでにあいつ等がちゃんとやっているかを見てくるわ」
「お願いね。特にナンシーがシンシアとケイトに厳しくしていたら注意してね」
ヒュンダルン王国随一の武門の家、ハーディング子爵家に生まれたナンシーは指導に身が入ると厳しくなりがちだからね。
口の悪い貴族はハーディング子爵を脳筋なんて呼んでいたけど相手にする価値もない者の僻みなんて気にする必要も無い。
ハーディング子爵はビュイック侯爵家の配下に入ったから何回か会った事が有るけど、竹を割った様に豪放で好感を持てる人だったわ。
今はナンシーと名乗っている娘のローザの事を「あれが男であれば比類無き剛の者となっていたでしょう」って残念がっていたわね。
子供の中でも1番強いって。ナンシーも「兄と手合わせしても、3回に2回は勝ちます」って言っていたわ。
そのハーディング家の皆も魔物退治をしているでしょうね。悪い事をしちゃったわ。
◯▲△
ジョージに視点が変わります。
「ハクション!」
「どうした?」
「申し訳ありません。ジョージ様」
「別に謝る事じゃないだろう。くしゃみは生理現象だぞ」
このオリバー=ハーディング、律儀なのは良いのだが度が過ぎると考え物だ。
この俺、ジョージ=ビュイックが聖女だった妹探しの旅に出ると言ったら律儀に同行してくれている。
尤もオリバーはスカーレットの侍女であるローザの兄だ。必然的にオリバーも妹を探している事になる。
だが流石にいつまでも留守には出来ない。この旅も成果を得られぬまま終わらざるを得ない。残念だ。
「お嬢様は何処へ行かれたのでしょうか?」
「国境近くの町ではスカーレットを襲おうとした者達8名をローザが斬った事までは判った。本音を言えばまだ探したいが何時までも留守には出来ないからな」
突然増えた魔物に対して我が領は何とか対応出来ている。そして魔物が増えた事で王宮もビュイック家への監視などしている余裕が無くなった。
今こそスカーレットを取り戻す絶好の機会だったのに。
スカーレットを実の娘の様に思っている両親はスカーレットの消息が分からなくなってから元気が無い。
また一家4人で暮らせればと思ったのだが。
「オリバー、今夜はこの村で泊まって明日の帰国に備えよう。前に来た時よりも活気が有る様だが」
「はい。どうもあの村では収穫祭が行われているそうです」
祭りか。スカーレットを1度だけ連れ出した事が有ったな。
「祭りか、何か気になるな。行ってみよう!」
俺達は祭りに行く事にした。
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