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このままじゃジリ貧
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私が咄嗟に聖女能力全開の結界を張ってから3ヶ月が経った。
魔の大樹海には依然として魔物は戻って来ない。
これじゃ魔の大樹海なんて看板倒れもいい所で普通の樹海になっちゃったわ。
どうやら魔の大樹海には魔物が出ないなんて噂が広まったらしくて、レベルアップ目的の冒険者のお客様が激減よ!
私のせいだけど。
元聖女としては魔物の復活を望むのは如何な物かと思うけれども、主な利用者が冒険者である宿屋の経営をしている者としては正直困る。
現在のお客様は、普段は魔物が居るから採取が困難だと言われている大樹海に自生している薬草とか食材になる植物を採取に来たお客様が数人、他にはダンジョンに入る前のお客様と出て来たお客様が数人ずつ。部屋も半分以上が空室のまま。
だから逗留中のお客様は絶対に手放せないの。
その為にいつも以上にお客様とお話したわ。
食材の採取の為にお泊りになっているお客様から伺った話によると、特に秋に生えるキノコが高値で売れるそうなの。
何でも人工では育てられないらしくて、森の奥深くに極稀に生えているって仰っていたわね。
それだと採れる季節が終わったらそのお客様も来なくなる。
ダンジョン目当てのお客様は数日間泊まり掛けでダンジョンに入る。だからダンジョン生活の前後にだけ宿屋を利用するのよね。
幸いにして? 私の結界はダンジョンの深い方までは届いていないみたいだけど、ダンジョンに入る冒険者は1度ダンジョンに入ると暫く戻って来ないから宿屋的にはそれほど有り難く無い。
フロントに居ても暇なのよ。
魔物は樹海に居る分には人に迷惑を掛けないから、少しだけ考えてナンシーに提案してみた。
「少しだけ戻って、向こうで結界を張ったら魔物が樹海に戻らないかな?」
「戻るって、ヒュンダルンにですか?」
「そうよ。ヒュンダルンに」
私が軽く答えたその瞬間、ナンシーが大きく目を見開くとその表情が見る見る険しくなっていったわ。
「若女将、ヒュンダルンに関わっては…」
「ちょっと待って。気持ちは判るけど聞いて!」
「はぁ」
渋々といった感じでナンシーは落ち着いてくれてホッとするわ。
「いい、確認するけどヒュンダルンに大量発生した魔物は魔の大樹海から私が3ヶ月前に張った結界で押し出されたのよね?」
「恐らくは」
「だったら、私がヒュンダルンに一瞬だけ戻って向こうで結界を張れば魔物は樹海に戻るんじゃないかと思うの」
「それでヒュンダルンに戻ると?」
「そうよ。ヒュンダルン国民は魔物が居なくなって助かる、『一角竜』は魔物が増えればお客様も増える。一挙両得じゃない!」
我ながらグッドアイデアよね!
「お言葉ですが若女将、樹海の結界はまだ残っていると思われます。何と言いましても若女将が張った結界ですから。果たして魔物が期待通りに戻るでしょうか?」
盲点だったわ!
結界って1度張ったら暫くは効果が残っているのよね。確かにナンシーの言う通り大人しく元の樹海に戻る保証は無いわね。
「それじゃ大人しく結界が消えるのを待つしか無いの?」
「はい。残念ながら」
これは『一角竜』存続の危機だわ。
魔の大樹海には依然として魔物は戻って来ない。
これじゃ魔の大樹海なんて看板倒れもいい所で普通の樹海になっちゃったわ。
どうやら魔の大樹海には魔物が出ないなんて噂が広まったらしくて、レベルアップ目的の冒険者のお客様が激減よ!
私のせいだけど。
元聖女としては魔物の復活を望むのは如何な物かと思うけれども、主な利用者が冒険者である宿屋の経営をしている者としては正直困る。
現在のお客様は、普段は魔物が居るから採取が困難だと言われている大樹海に自生している薬草とか食材になる植物を採取に来たお客様が数人、他にはダンジョンに入る前のお客様と出て来たお客様が数人ずつ。部屋も半分以上が空室のまま。
だから逗留中のお客様は絶対に手放せないの。
その為にいつも以上にお客様とお話したわ。
食材の採取の為にお泊りになっているお客様から伺った話によると、特に秋に生えるキノコが高値で売れるそうなの。
何でも人工では育てられないらしくて、森の奥深くに極稀に生えているって仰っていたわね。
それだと採れる季節が終わったらそのお客様も来なくなる。
ダンジョン目当てのお客様は数日間泊まり掛けでダンジョンに入る。だからダンジョン生活の前後にだけ宿屋を利用するのよね。
幸いにして? 私の結界はダンジョンの深い方までは届いていないみたいだけど、ダンジョンに入る冒険者は1度ダンジョンに入ると暫く戻って来ないから宿屋的にはそれほど有り難く無い。
フロントに居ても暇なのよ。
魔物は樹海に居る分には人に迷惑を掛けないから、少しだけ考えてナンシーに提案してみた。
「少しだけ戻って、向こうで結界を張ったら魔物が樹海に戻らないかな?」
「戻るって、ヒュンダルンにですか?」
「そうよ。ヒュンダルンに」
私が軽く答えたその瞬間、ナンシーが大きく目を見開くとその表情が見る見る険しくなっていったわ。
「若女将、ヒュンダルンに関わっては…」
「ちょっと待って。気持ちは判るけど聞いて!」
「はぁ」
渋々といった感じでナンシーは落ち着いてくれてホッとするわ。
「いい、確認するけどヒュンダルンに大量発生した魔物は魔の大樹海から私が3ヶ月前に張った結界で押し出されたのよね?」
「恐らくは」
「だったら、私がヒュンダルンに一瞬だけ戻って向こうで結界を張れば魔物は樹海に戻るんじゃないかと思うの」
「それでヒュンダルンに戻ると?」
「そうよ。ヒュンダルン国民は魔物が居なくなって助かる、『一角竜』は魔物が増えればお客様も増える。一挙両得じゃない!」
我ながらグッドアイデアよね!
「お言葉ですが若女将、樹海の結界はまだ残っていると思われます。何と言いましても若女将が張った結界ですから。果たして魔物が期待通りに戻るでしょうか?」
盲点だったわ!
結界って1度張ったら暫くは効果が残っているのよね。確かにナンシーの言う通り大人しく元の樹海に戻る保証は無いわね。
「それじゃ大人しく結界が消えるのを待つしか無いの?」
「はい。残念ながら」
これは『一角竜』存続の危機だわ。
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