12 / 54
ローザ、カーマと和解する
しおりを挟む
カーマはお嬢様に悪態ついていた侍女。
それ以外にも侍女には相応しくない態度を取り続けていた事で侯爵家を解雇される事になりました。
それを実家に連絡される事が余程嫌でしたのね。自分で蒔いた種なのに。
正直に言うと私は何も感じませんでした。彼女の処遇については旦那様が断を下されたし、冷たいようですけれども、彼女に対して思う事は特には何もございませんでした。
明日にはお屋敷を追われる人間です。旦那様のご不許を買った彼女が、吹けば飛ぶ様な男爵の実家でどう扱われるのか想像に難しくはありません。将来を悲観しての自害でしょう。
でも自害をするのならお屋敷の外でして欲しい。こちらの迷惑も考えてもらいたかったものです。
「ローザ、案内して!」
「お嬢様、どうされるのですか?」
「まだ今なら何とかなるかも。早く!」
私とてお嬢様のお考えは理解出来るつもりです。きっと聖女の能力を持つ身として彼女を蘇生なされるおつもりなのでしょう。
彼女を知る者としては、余計な事をしてくれるな、とも思います。それに第一、お嬢様にわざわざ彼女の遺体などお見せする訳には。ここは意見させて頂きます。
「お嬢様、お止め下さい!」
「何を言っているの、人の命がかかっているのよ!」
その気迫に押されてしまいました。お嬢様のお立場でしたら、悪態をついたこのカーマを放置しても後ろ指さされる筋合いも無い筈ですのに。
これが聖女様ですのね。ご自身に対して何一つ利益にならないこんな女の為に!
「こちらです!」
気が付けば走り出しておりました。
◯▲△
「カーマ!」
カーマはお嬢様と私が到着した時には意識は無く、青い顔をしてぐったりしていました。服毒自殺の様ですね。
「お嬢様、いけません」
使用人一同でお嬢様がカーマに近付く事を阻止しようと必死です。
皆思う事は一緒で、まだ少女であるお嬢様にカーマの遺体など見せたくないのだと思います。
「どいて!」
ですがそんな事で止まるお嬢様ではございません。
お嬢様の気迫の前に身動き取れなくなった使用人達を掻い潜りカーマの遺体へと駆け寄リます。
「まだ生きているわ!」
「いえ、確かに息はもう…」
「でも感じるの、生命の息吹を!」
執事らにそう言い放つとお嬢様はカーマに手を当てて目を閉じ、神経を集中している様です。
するとどうでしょう! お嬢様の御身体が光に包まれ、カーマの顔色が見る見る間に良くなって行くではありませんか!
「うっ、ぅぅ」
確かに死んだ筈のカーマが息を吹き返した瞬間でした!
「カーマ!」
お嬢様が優しく呼び掛けるとカーマの意識が戻って来た様です。
「カーマ良かったなぁ!」
「お嬢様がお救い下さったのよ!」
「お嬢様?」
使用人達の呼び掛けにも、まだ意識は混濁している様子。
「!」
でも直ぐに我に返った様だ。ハッとなったかと思えば、人目も憚らずに泣き出した。
「どうして死なせてくれなかったのですか? 実家に戻ったって…」
「カーマ……」
パチーン!
乾いた音が響きました。お嬢様が優しくお声を掛けた後になんと、カーマの頬に平手打ちしました。
「これでおあいこ。私に対する無礼は不問とします」
「お、お嬢様?」
頬を手で押さえるカーマは目を白黒させて何が起こったのか理解出来ていない様子でした。
「いい、さっきまでのカーマはもう死んだの! 自ら命を断つなんて行動力が有るのなら、それはもっと前向きに使うべきだと思うの!」
「前向き?」
「そう。カーマ、貴女は何の為に生まれて来たの? 仕事を怠けて昼寝して、後輩をイビって私に悪態をついて、クビになり、実家で虐げられて意図しない結婚をさせられる。相手は便宜上正妻には貴族の娘なら誰でも良い商人かしら。それとも人生も終盤を迎えた貴族か金持ちの老人との結婚とは名ばかりの介護。その内に僅かなお金を掴まされて捨てられて寂しい老後を送る。そんな人生を歩むカーマは死んだの!」
「うぅっ、ぅぅ」
「1度死んだつもりでやり直そう。ね、カーマ」
泣き崩れるカーマにそっと寄り添うお嬢様は幼いながらもまさに聖女様!
「お嬢様、申し訳ありませんでした」
カーマが嗚咽しながらようやくお嬢様に謝罪した。まぁでもこれで一件落着です!
「お嬢様、お嬢様に終生の忠誠を誓います」
こう言ったのはカーマでした!
「ちょっと、あなたはお暇を出された筈でしょ!」
「良いじゃない。言った者勝ちよ!」
結局カーマは許され、私と2人で競う様にお嬢様にお仕えしましたが、年齢も年齢だったカーマは暫くして旦那様所縁の騎士に嫁いで行きました。
お屋敷を去る日にはお嬢様の前で大泣きしていましたっけ。
○▲△
お嬢様が王宮に上がる際に1人だけ連れて行ける侍女はもちろん私しか居りません。
その私が王妃の陰謀により王宮からの退去を命じられての今回の断罪。お嬢様の処刑など執行させてなるものですか!
「お嬢様、我がハーディング家は国1番の武門の家と自負しております! 私も幼い頃より一通りの事は叩き込まれております。すぐに参ります、お嬢様!」
私は単身、ひたすら王都に向かって馬を走らせた。
それ以外にも侍女には相応しくない態度を取り続けていた事で侯爵家を解雇される事になりました。
それを実家に連絡される事が余程嫌でしたのね。自分で蒔いた種なのに。
正直に言うと私は何も感じませんでした。彼女の処遇については旦那様が断を下されたし、冷たいようですけれども、彼女に対して思う事は特には何もございませんでした。
明日にはお屋敷を追われる人間です。旦那様のご不許を買った彼女が、吹けば飛ぶ様な男爵の実家でどう扱われるのか想像に難しくはありません。将来を悲観しての自害でしょう。
でも自害をするのならお屋敷の外でして欲しい。こちらの迷惑も考えてもらいたかったものです。
「ローザ、案内して!」
「お嬢様、どうされるのですか?」
「まだ今なら何とかなるかも。早く!」
私とてお嬢様のお考えは理解出来るつもりです。きっと聖女の能力を持つ身として彼女を蘇生なされるおつもりなのでしょう。
彼女を知る者としては、余計な事をしてくれるな、とも思います。それに第一、お嬢様にわざわざ彼女の遺体などお見せする訳には。ここは意見させて頂きます。
「お嬢様、お止め下さい!」
「何を言っているの、人の命がかかっているのよ!」
その気迫に押されてしまいました。お嬢様のお立場でしたら、悪態をついたこのカーマを放置しても後ろ指さされる筋合いも無い筈ですのに。
これが聖女様ですのね。ご自身に対して何一つ利益にならないこんな女の為に!
「こちらです!」
気が付けば走り出しておりました。
◯▲△
「カーマ!」
カーマはお嬢様と私が到着した時には意識は無く、青い顔をしてぐったりしていました。服毒自殺の様ですね。
「お嬢様、いけません」
使用人一同でお嬢様がカーマに近付く事を阻止しようと必死です。
皆思う事は一緒で、まだ少女であるお嬢様にカーマの遺体など見せたくないのだと思います。
「どいて!」
ですがそんな事で止まるお嬢様ではございません。
お嬢様の気迫の前に身動き取れなくなった使用人達を掻い潜りカーマの遺体へと駆け寄リます。
「まだ生きているわ!」
「いえ、確かに息はもう…」
「でも感じるの、生命の息吹を!」
執事らにそう言い放つとお嬢様はカーマに手を当てて目を閉じ、神経を集中している様です。
するとどうでしょう! お嬢様の御身体が光に包まれ、カーマの顔色が見る見る間に良くなって行くではありませんか!
「うっ、ぅぅ」
確かに死んだ筈のカーマが息を吹き返した瞬間でした!
「カーマ!」
お嬢様が優しく呼び掛けるとカーマの意識が戻って来た様です。
「カーマ良かったなぁ!」
「お嬢様がお救い下さったのよ!」
「お嬢様?」
使用人達の呼び掛けにも、まだ意識は混濁している様子。
「!」
でも直ぐに我に返った様だ。ハッとなったかと思えば、人目も憚らずに泣き出した。
「どうして死なせてくれなかったのですか? 実家に戻ったって…」
「カーマ……」
パチーン!
乾いた音が響きました。お嬢様が優しくお声を掛けた後になんと、カーマの頬に平手打ちしました。
「これでおあいこ。私に対する無礼は不問とします」
「お、お嬢様?」
頬を手で押さえるカーマは目を白黒させて何が起こったのか理解出来ていない様子でした。
「いい、さっきまでのカーマはもう死んだの! 自ら命を断つなんて行動力が有るのなら、それはもっと前向きに使うべきだと思うの!」
「前向き?」
「そう。カーマ、貴女は何の為に生まれて来たの? 仕事を怠けて昼寝して、後輩をイビって私に悪態をついて、クビになり、実家で虐げられて意図しない結婚をさせられる。相手は便宜上正妻には貴族の娘なら誰でも良い商人かしら。それとも人生も終盤を迎えた貴族か金持ちの老人との結婚とは名ばかりの介護。その内に僅かなお金を掴まされて捨てられて寂しい老後を送る。そんな人生を歩むカーマは死んだの!」
「うぅっ、ぅぅ」
「1度死んだつもりでやり直そう。ね、カーマ」
泣き崩れるカーマにそっと寄り添うお嬢様は幼いながらもまさに聖女様!
「お嬢様、申し訳ありませんでした」
カーマが嗚咽しながらようやくお嬢様に謝罪した。まぁでもこれで一件落着です!
「お嬢様、お嬢様に終生の忠誠を誓います」
こう言ったのはカーマでした!
「ちょっと、あなたはお暇を出された筈でしょ!」
「良いじゃない。言った者勝ちよ!」
結局カーマは許され、私と2人で競う様にお嬢様にお仕えしましたが、年齢も年齢だったカーマは暫くして旦那様所縁の騎士に嫁いで行きました。
お屋敷を去る日にはお嬢様の前で大泣きしていましたっけ。
○▲△
お嬢様が王宮に上がる際に1人だけ連れて行ける侍女はもちろん私しか居りません。
その私が王妃の陰謀により王宮からの退去を命じられての今回の断罪。お嬢様の処刑など執行させてなるものですか!
「お嬢様、我がハーディング家は国1番の武門の家と自負しております! 私も幼い頃より一通りの事は叩き込まれております。すぐに参ります、お嬢様!」
私は単身、ひたすら王都に向かって馬を走らせた。
1
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる
八重
恋愛
記憶を失ったことで令嬢としての生き方を忘れたリーズは17歳の誕生日に哀れにも父親に捨てられる。
獣も住む危険な辺境の地で、彼女はある騎士二コラに拾われた。
「では、私の妻になりませんか?」
突然の求婚に戸惑いつつも、頼る人がいなかったリーズは彼を頼ることにする。
そして、二コラと一緒に暮らすことになったリーズは彼の優しく誠実な人柄にどんどん惹かれていく。
一方、辺境を守る騎士を務める二コラにも実は秘密があって……!
※小説家になろう先行公開で他サイトにも公開中です
※序盤は一話一話が短めになっております
異世界ニートを生贄に。
ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』
五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。
その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。
その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。
残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。
そして七十年後の今。
結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。
そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる