上 下
35 / 41
二章

三十五話

しおりを挟む
 あと何すれば良いんだっけ。よく考えたら指揮というより監視が仕事だよな。椅子運びとか死んでもやりたくないし。

「·········俺必要無くね?」

「いや、あのやる気見てよ」

「あぁ··········」

 そういえばあいつら馬鹿だったわ。先輩達は俺の方を見ては奇声を上げてを繰り返して凄い速度で働いている。

 ていうか気持ち悪いからこっち見んな。うっさいんだよ。耳栓代わりに結翔の胸元に顔を埋める。

「う"っ、監視なら俺がしとくから心湊は寝てたら?」

「は? どうせお前一人じゃ何も出来ないだろ」

 さっきから男同士の絡みが、とか言って食い入るように見てんだから。問題起きたら俺の責任になるんだよ。腕を叩いて壇上にある椅子の上に降ろしてもらう。

「はぁ·······自分で自分の首絞めてる気分だわ」

 何が悲しくて自分を歓迎する準備を自分でしなきゃならんのだ。その上鬼ごっこ+ご褒美デートだぞ。捕まっても捕まえても地獄だわ。

 ──トントン

「ん?」

「ヨッ、天使。ついに演技辞めたんだな」

「うえ、なんでこんな所に居るんですか。担任」

 一生職員室に引きこもってろよ。ていうか気安く触んな。

「まあそう睨むなって。それよりどうだ? 香水の匂い」

「·············ホストクビになったんですか?」

「ちげぇよ」

 ならなんで無臭なんだよ。ついに自分の臭さに気づいたか。

「お前が嫌だって言うから使うの辞めたんだよ。悪いか?」

「わー生徒思いな先生ですねー」

「チッ·······まだ転校生の件根に持ってんのかよ」

 ──ピクッ

 何言ってんだこのホストは。恨んでるに決まってるだろうが。お前が天使とか言わなければ絡まれずに済んだんだよ。

「悪かったって言ってるだろ。ほら、これやるから機嫌直せ」

「これは·········たわし、ですか?」

「あ、すまん。間違えたわ」

「·············」

 お前絶対喧嘩売ってるだろ。たわしで顔面磨いてやろうか?

「ほれ、これ副会長からだ」

「ありがとうございます。用件終わりですねさようなら」

「いや、もう少し話を······」

 ──ニコッ

「さようなら」

 これ以上お前と話す事なんて無いわ。さっさと失せろ。

「···ッ·······お前、あの腹黒に似てきたか?」

「は?」

 真似してんだよアホが。仕方ねえなぁ、と舌打ちして退職ホストは帰って行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役王子の幼少期が天使なのですが

しらはね
BL
何日にも渡る高熱で苦しめられている間に前世を思い出した主人公。前世では男子高校生をしていて、いつもの学校の帰り道に自動車が正面から向かってきたところで記憶が途切れている。記憶が戻ってからは今いる世界が前世で妹としていた乙女ゲームの世界に類似していることに気づく。一つだけ違うのは自分の名前がゲーム内になかったことだ。名前のないモブかもしれないと思ったが、自分の家は王族に次ぎ身分のある公爵家で幼馴染は第一王子である。そんな人物が描かれないことがあるのかと不思議に思っていたが・・・

無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~

白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。 そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!? 前世は嫌われもの。今世は愛されもの。 自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!! **************** というようなものを書こうと思っています。 初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。 暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。 なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。 この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。 R15は保険です。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

魔王なんですか?とりあえずお外に出たいんですけど!

ミクリ21
BL
気がつけば、知らない部屋にいた。 生活に不便はない知らない部屋で、自称魔王に監禁されています。 魔王が主人公を監禁する理由………それは、魔王の一目惚れが原因だった!

処理中です...