メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗

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第一章

3

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十三話
 あれから目を覚ますまで3日が掛かった。
 病室のベッドで半身を起こして、本を読む。
 改めて必要な知識を再確認した。
 
 一、魔力が完全に枯渇すると、満たされるまで休息期に入り、身体の機能が大幅に低下する。
 二、他人の魔力を受け取ることである程度機能を回復出来る。しかし、同属性の魔力が必要。
 三、"休息期"中は無防備になるため、必ず身の安全が確保出来る場所にいること。
 四、"休息期"は生命力を代償に、遅らせることが出来る。しかし、後遺症が残る場合がある。

 枯渇に関する重要事項はこの四つだ。
 今回僕が経験したのはただの休息期で、後遺症のようなリスクも無い。

 侍医の方にも問題がない旨を伝え、僕は職務に復帰すると何度も訴えた。
 それなのに僕は・・・・・・

「つまらせないようにゆっくり飲んでね」
「熱いから気をつけろよ」

 僕の右側にはコップを持った殿下が、
 左側にはお粥を乗せたスプーンを持つカーマイン様がいらっしゃる。

 何度もお断りしますと意思表示したのに、おふたりは頑なに病室から出られようとしなかった。
 
 おふたりの授業の時間も迫っており、無心でもぐもぐと口を動かす。
 三日ぶりにお会い出来て嬉しいけれども・・・。
 看病されることは望んでいませんっ・・・・・・!

「安静にするんだよ?」
「イヤです・・・僕の任務が・・・・・・」
「レインのパーティーに参加出来なくても良いのか?」
「それも嫌ですっ・・・!」
「なら早く治さないとだろ?」
「うぅ・・・・・・」

 カーマイン様に痛い所を突かれ、大人しくベッドに横になる。
 おふたりが授業に向かわれるのを見送って、僕は布団の中に潜った。

 まさか魔力が無くなっただけで、三日間も意識を失うことになるなんて・・・・・・。
 宮廷魔法使いになってから色々な本を読んだけど、休息期は長くても一日だと記されていた。

 サポートキャラだから、魔力が多いのか?

 ゲームではフィンレーの情報がなかったし、今世の記憶はモヤがかかっていて思い出せない。
 僕は自分自身について、何も知らない・・・・・・。

 何かを思い出そうとすると、暗い気分になってズキズキと頭が痛くなる。
 頭痛がする時は必ず闇魔法の気配がするから、たぶん過去の僕が記憶を封印したんだと思う。
 ここ一ヶ月の間にも、僕の記憶は穴が空いたかのように空白が出来ることがあった。

 ゾワッと、背筋に何かが這ったような気がした。
 まるでこれ以上考えるのはやめろとでも言うかのように、頭がズキズキと痛む。
 僕は考えるのはやめて、目を閉じた。



 画面に一人の女性が映っていた。
 キッと釣り上げられた目尻、人々を見下すような眼差し、扇子を口元に当てる姿は悪役そのもの。

 こちらに向かって『レインハルト様と結婚するのはこの私よッ!』高らかに叫んだ。
 すると、その女性に扇子で頬を叩かれる、女性の姿が映される。

『レインハルト様・・・・・・』
『カーマイン様・・・・・・』

『繧サ繧ェ繝峨い・・・・・・』
『繧「繝シ繧ッ・・・・・・』

 画面に選択肢が現れた。
 コンソールが上の方へ動き、カチッと音がした。
 
 たまたま通り掛かった金髪の長身男性が、緩やかな歩調で女性の間に入る。
 男性は叩かれた女性の頬を撫でた。
 
 その光景を静かに見ていた扇子を持つ女性は、目を細めて潤んだその紫色の瞳を隠す。
 彼女は扇子をバチンと仕舞うと『今日はこの辺にしてあげるわ』と、従者を連れて踵を返した。

「悪役令嬢なのに嫉妬で狂ったりしないのか。そもそも、シエラって泣くような人だったか?」

 誰かが画面の前で首を傾げた。



「わあっ! 重要なことを忘れてたっ!」

 ベッドから飛び起きて、僕は叫んだ。
 久しぶりに前世の夢を見た。

 悪役令嬢シエラ・・・彼女と殿下の出会いは、誕生日パーティーだった! あと三日しかない!

 一目惚れの対策方法、誰か教えてください。
 殿下にパーティー用の変な仮面を付けていただくしか・・・方法が無いような・・・・・・。

「おはよう。何を忘れてたの?」
「おはようございます、殿下・・・・・・。独り言で会話を成立させないでください」

 ベッドの傍らにお座りになっている殿下に、何をしているんですか、視線を向ける。
 彼の手のひらを見ると、黒い毛があった。
 所々に、白い毛が混じっている。

「最近よく髪の毛抜けない?」
「意識したことがないので分からないです・・・」
「まあ、そうだよね。十歳で抜け毛を気にしてたら、そっちの方が心配だよ」
「・・・・・・?」

 殿下が持っている毛、おそらく僕の髪の毛と質問の内容に、首を傾げる。
 もしかして僕、禿げるんですか・・・?
 人間に換毛期ってありましたっけ・・・・・・。

「それって僕の髪の毛ですよね?」
「うん、最近やけに白髪が多いな~とは思ってたけど、抜けやすくなってるみたい」
「わあああっ! 嫌だぁー! 禿げたくない!」
「侍医がストレス性のものだって言ってたから心配は要らないよ」
「嘘です! ストレスなんてありません! 殿下とカーマイン様のお傍に居るだけで僕は幸せです!」
「僕もフィンが居てくれるだけで幸せだよ」

 だから一生面倒見てあげる、にこりと微笑みながら口にした殿下に、両手で顔を覆う。
 
 今なら、レインハルトが人気一位だった理由が分かる気がする・・・・・・。

 こんな笑顔を向けられて、『守ってあげる』『面倒みてあげる』なんて言われたら、
 すぐに頷いて自堕落な生活を送ることだろう。
 
 しかし、僕は家臣で殿下は主君だ。
 殿下のヒモになるのだけは、絶対に嫌です。
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