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おわりとはじまり
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三話
あまり良い状況とは言えないが、陛下の身の安全を確保するのが先だ。
身体から神聖力を放ち、本宮の方へ送る。
皇宮内に神聖力を巡らせ、結界を張ろうとしたその時――数百を超える生命の気配を感じた。
耳を研ぎ澄ませば、鎧の音と金属同士がぶつかり合う音が聞こえ始める。
「皇族の暗殺だけでは飽き足らず、皇宮を占拠するとは・・・・・・!」
「やっと気がついたのですね」
腰に携えた鞘から剣を抜いて、アルシアンの首元に突きつける。
アルシアンは皇族だが、騎士団を持っていない。
これほどの騎士を引き連れてきたということは、アルシアンに協力している貴族が居ることになる。
いや、アルシアンは大人しい性格で、謀反を起こすような奴ではないはずだ。
首謀者は別に居て、アルシアンは協力しているだけの可能性も・・・・・・。
「落ち着いてください、お兄様」
命の危機が迫っているというのに、アルシアンは感情の読めない表情を浮かべ、至って冷静だった。
その時、扉が勢いよく開き――いつの間にか俺の首元に刀身が当てられていた。
「動けば首を切る」
剣を持つ男の姿に見覚えがあり、目を見開く。
魔境の近くにある北部のウィンター領。
魔物の侵略から帝国を守る守護者にして、ローウェル帝国唯一の大公。
シグリド・ウィンター。
漆黒の髪と、赤い瞳を持つ怪物と名高い男だ。
「ウィンター大公・・・皇族に刃を向けることの意味を分っているのか?」
「お前こそ、自らが置かれている状況を分かっていないようだな」
この状況で助けが来たとは思っていなかったが、ウィンター大公も敵なのか。
彼がここに居るということは、外の奴らは精鋭部隊で知られるウィンター騎士団に違いない。
皇宮を占拠された上に、ソードマスターである大公が敵に回るのは最悪のシナリオだ。
「戦闘経験の差くらいは理解している」
「賢明な判断だ」
手の力を抜いて、剣を床に落とす。
帝国の守護者などと呼ばれている大公も、所詮は権力を欲する貴族と変わらないのか。
「アルシアン、聞きたいことがある」
「なんでもお答えしますよ」
ウィンター大公に剣を当てられたまま、アルシアンの方を見る。
既に答えを聞かされたようなものだが、確証を得るために本人の口から聞きたい。
「現存の直系皇族は私とアルシアンだけなのか?」
「そうですよ。お兄様と僕だけです」
『そして、すぐに僕だけになります』
口には出さなかったが、アルシアンがそう考えていることは分かった。
「そうか・・・・・・それなら仕方がないな・・・・・・」
「「――ッ!!」」
大公の腕を掴んで、反対の手で剣を奪う。
俺は両手で剣を握ると、アルシアン――ではなく、自分の腹部に深く差し込んだ。
「お兄様・・・なぜ・・・!」
「っ・・・アル、シアン・・・・・・」
「・・・・・・!!」
剣を刺さった腹部を抑えながら、アルシアンの肩にもたれ掛かる。
直系皇族の中で継承権を持っているのは、カシウスとアルシアンだけだ。
このまま俺が毒で死ねば、龍人を暗殺したアルシアンは教会から罰を受け、皇族の血筋が途絶える。
ならば、庇ってやるしか無いだろう。
反対の手をアルシアンの後頭部に添えて、肩越しに見える大公に向けて口を動かす。
『後は任せた』
「ッ・・・なぜ俺に・・・・・・」
全身の力が抜けて、地面に倒れ込む。
大公は俺を殺すつもりで来たのかと思ったが、彼の表情を見るにそうでは無かったようだ。
真っ赤な瞳が、俺の言葉を聞いて揺れていた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ふと、アルシアンのそんなつぶやきが聞こえた。
その言葉の意味を考えようにも、血が流れすぎたせいで意識が薄れていく。
俺はそのまま意識を失った。
あまり良い状況とは言えないが、陛下の身の安全を確保するのが先だ。
身体から神聖力を放ち、本宮の方へ送る。
皇宮内に神聖力を巡らせ、結界を張ろうとしたその時――数百を超える生命の気配を感じた。
耳を研ぎ澄ませば、鎧の音と金属同士がぶつかり合う音が聞こえ始める。
「皇族の暗殺だけでは飽き足らず、皇宮を占拠するとは・・・・・・!」
「やっと気がついたのですね」
腰に携えた鞘から剣を抜いて、アルシアンの首元に突きつける。
アルシアンは皇族だが、騎士団を持っていない。
これほどの騎士を引き連れてきたということは、アルシアンに協力している貴族が居ることになる。
いや、アルシアンは大人しい性格で、謀反を起こすような奴ではないはずだ。
首謀者は別に居て、アルシアンは協力しているだけの可能性も・・・・・・。
「落ち着いてください、お兄様」
命の危機が迫っているというのに、アルシアンは感情の読めない表情を浮かべ、至って冷静だった。
その時、扉が勢いよく開き――いつの間にか俺の首元に刀身が当てられていた。
「動けば首を切る」
剣を持つ男の姿に見覚えがあり、目を見開く。
魔境の近くにある北部のウィンター領。
魔物の侵略から帝国を守る守護者にして、ローウェル帝国唯一の大公。
シグリド・ウィンター。
漆黒の髪と、赤い瞳を持つ怪物と名高い男だ。
「ウィンター大公・・・皇族に刃を向けることの意味を分っているのか?」
「お前こそ、自らが置かれている状況を分かっていないようだな」
この状況で助けが来たとは思っていなかったが、ウィンター大公も敵なのか。
彼がここに居るということは、外の奴らは精鋭部隊で知られるウィンター騎士団に違いない。
皇宮を占拠された上に、ソードマスターである大公が敵に回るのは最悪のシナリオだ。
「戦闘経験の差くらいは理解している」
「賢明な判断だ」
手の力を抜いて、剣を床に落とす。
帝国の守護者などと呼ばれている大公も、所詮は権力を欲する貴族と変わらないのか。
「アルシアン、聞きたいことがある」
「なんでもお答えしますよ」
ウィンター大公に剣を当てられたまま、アルシアンの方を見る。
既に答えを聞かされたようなものだが、確証を得るために本人の口から聞きたい。
「現存の直系皇族は私とアルシアンだけなのか?」
「そうですよ。お兄様と僕だけです」
『そして、すぐに僕だけになります』
口には出さなかったが、アルシアンがそう考えていることは分かった。
「そうか・・・・・・それなら仕方がないな・・・・・・」
「「――ッ!!」」
大公の腕を掴んで、反対の手で剣を奪う。
俺は両手で剣を握ると、アルシアン――ではなく、自分の腹部に深く差し込んだ。
「お兄様・・・なぜ・・・!」
「っ・・・アル、シアン・・・・・・」
「・・・・・・!!」
剣を刺さった腹部を抑えながら、アルシアンの肩にもたれ掛かる。
直系皇族の中で継承権を持っているのは、カシウスとアルシアンだけだ。
このまま俺が毒で死ねば、龍人を暗殺したアルシアンは教会から罰を受け、皇族の血筋が途絶える。
ならば、庇ってやるしか無いだろう。
反対の手をアルシアンの後頭部に添えて、肩越しに見える大公に向けて口を動かす。
『後は任せた』
「ッ・・・なぜ俺に・・・・・・」
全身の力が抜けて、地面に倒れ込む。
大公は俺を殺すつもりで来たのかと思ったが、彼の表情を見るにそうでは無かったようだ。
真っ赤な瞳が、俺の言葉を聞いて揺れていた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ふと、アルシアンのそんなつぶやきが聞こえた。
その言葉の意味を考えようにも、血が流れすぎたせいで意識が薄れていく。
俺はそのまま意識を失った。
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