妹ばかり~ ハッピーエンド(6)没話パターン2(1)
難産供養その2
◆◆◆
・公爵視点
空気を読んだ医者が手早く診察を終わらせ、逃げるように出て行ったあと。
西日の差す部屋には、ヴォルフとアネッサの二人きり。
怒りに怯えるアネッサを、ヴォルフは迷わず抱き寄せて――。
「――そういうことで、まだ魔族の行方はわかっていない」
真面目な話をしていた。
そもそも、今日の目的は事件の顛末を伝えることだ。
アネッサが逃げさえしなければ、恐れることなど何一つなかったのである。
「たいした魔族ではなかったが、それでも魔族は魔族だ。今見つからないのであれば、もう近くにはいないだろう。領内は警戒しているが、他領へ出れば俺の力では手が出せない。国に協力を依頼している」
「は、はひ……」
ヴォルフの腕の中で、アネッサは緊張したように強張っている。
返事の声も裏返り、かすかに震えているようだ。
ただし、ヴォルフから彼女の顔を見ることはできない。
なにせ現在、彼女はヴォルフの腕の中。
椅子に座るヴォルフのさらに上に座らされ、背中から抱きしめられているのだ。
ときおり堪えられない、というようにもがくが、ヴォルフは意にも介さずに腰を抱き、片手で彼女の手を握る。
「魔族は放っておけば人間を襲う。この屋敷にはさすがに近づかないだろうが、それでも君も身の回りには気を付けてくれ」
「わ、わかりま――ひゃっ」
「それとあわせて、今回の件は国に隠さず報告することにした。魔族の召喚に襲撃とあっては、黙っているのは難しい」
「んんん……っ」
「事件の原因についても――俺のしてきたことについても伝える。いずれ、なんらかの沙汰が下るだろう」
「ん、んん……――――ヴォルフ様!! ま、待ってください! 待って!!」
腕の中でアネッサが身じろぎする。
しかし、「待て」と言われても待つ義理はなく、ヴォルフはそのまま彼女の首筋にちゅっとキスを落とした。
すでにいくつもの赤い跡のある首に、もうひとつ赤い跡が残る。
たしかめるようにその場所を舐めれば、彼女は再び「んん……」と押し殺した呻き声を上げた。
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・公爵視点
空気を読んだ医者が手早く診察を終わらせ、逃げるように出て行ったあと。
西日の差す部屋には、ヴォルフとアネッサの二人きり。
怒りに怯えるアネッサを、ヴォルフは迷わず抱き寄せて――。
「――そういうことで、まだ魔族の行方はわかっていない」
真面目な話をしていた。
そもそも、今日の目的は事件の顛末を伝えることだ。
アネッサが逃げさえしなければ、恐れることなど何一つなかったのである。
「たいした魔族ではなかったが、それでも魔族は魔族だ。今見つからないのであれば、もう近くにはいないだろう。領内は警戒しているが、他領へ出れば俺の力では手が出せない。国に協力を依頼している」
「は、はひ……」
ヴォルフの腕の中で、アネッサは緊張したように強張っている。
返事の声も裏返り、かすかに震えているようだ。
ただし、ヴォルフから彼女の顔を見ることはできない。
なにせ現在、彼女はヴォルフの腕の中。
椅子に座るヴォルフのさらに上に座らされ、背中から抱きしめられているのだ。
ときおり堪えられない、というようにもがくが、ヴォルフは意にも介さずに腰を抱き、片手で彼女の手を握る。
「魔族は放っておけば人間を襲う。この屋敷にはさすがに近づかないだろうが、それでも君も身の回りには気を付けてくれ」
「わ、わかりま――ひゃっ」
「それとあわせて、今回の件は国に隠さず報告することにした。魔族の召喚に襲撃とあっては、黙っているのは難しい」
「んんん……っ」
「事件の原因についても――俺のしてきたことについても伝える。いずれ、なんらかの沙汰が下るだろう」
「ん、んん……――――ヴォルフ様!! ま、待ってください! 待って!!」
腕の中でアネッサが身じろぎする。
しかし、「待て」と言われても待つ義理はなく、ヴォルフはそのまま彼女の首筋にちゅっとキスを落とした。
すでにいくつもの赤い跡のある首に、もうひとつ赤い跡が残る。
たしかめるようにその場所を舐めれば、彼女は再び「んん……」と押し殺した呻き声を上げた。
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登録日 2020.02.20 00:31
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