村咲

村咲 (著者名:赤村咲)

妹ばかり~ 5章28話没話(3)

「お前を愛するわけがないだろう! 金食い虫で、すぐに魔力を暴走させる厄介者で、日がな一日部屋にこもる薄暗いお前を! いつも『自分だけは悪くない』という顔をしているお前を、アネッサがどう思っているかわかるか? 姉が、兄が、ちやほやされる弟妹を見て、どんな気持ちでいるかわかるか!」
「おとう……さま……」
「お前さえいなければ!」

 父の言葉にびくりとする。
 もはや、目からあふれる涙が止めようもない。
 言われている言葉が、自分への罵倒と言うことだけはわかる。
 それが姉の感情なのか、父の感情なのかがわからない。

「お前さえいなければ、こんなことにはならなかった!」
「あ…………」

 ――だめ、だめ、だめ……!

 じわじわと肌からあふれる魔力の感触に、アーシャは体を固くする。
 自分の体を抱きたいのに、父が手を掴んでいるせいでそれもできない。

「お前がいなければ、私も妻ももっと自分に目をかけていた。お前がいなければ、私たちの愛は自分に向いていた。――アネッサがそう思うに決まっているだろう! いいか? 真っ先にアネッサが陥れるのは、私ではなくお前だ! アーシャ!!」

 ――わたしさえいなければ。

 その言葉を、アーシャは否定できない。
 自分さえいなければ、姉が家族の中で嫌われることもなかった。
 両親の目は一人娘の姉に向かい、弟は素直に姉を慕っただろう。

 姉が幸せになるためには、伯爵家を出るべきだと思っていた。
 だけど本当は――出て行く必要なんでないのだ。アーシャさえいなければ。

 ――お姉さまは、そんなこと思わないわ。

 わかっている。わかっているけど――。

「アネッサの望みは、お前が苦しんで消えることだ! そうはなりたくないだろう! ――私の弟のようには!」

 ――だめ。

 父の声が遠くなる。
 視界が暗くなる。
 体の感覚が失せていく――。



◆◆◆
供養ここまで

ちょっと父側の心境を書きすぎ&長すぎだったので没
登録日 2020.01.22 23:28

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4
2020.02.02 09:54
村咲
村咲

矢口日さん

わー!返信遅れてすみません!
近況ボードは通知がないからなかなか気がつけず……!
父は実は、誰よりもアネッサのことをわかっているのではないかと思います。
ただ、気持ちはわかってもわかりあえるわけではないですからね……。

解除
2020.01.26 21:41
矢口日

なんかやるせないですね、、父のアーシャへの言葉が、アネッサのことを言っているのか、父自身のことを言っているのか一瞬分からなくなる感じでした。何にしてもアーシャにはキツすぎる毒ですね~
ご供養ありがとうございます!

解除
2020.01.23 21:34
村咲
村咲

ハクラさん

供養まで見に来てくださってありがとうございます!!
楽しんでいただけるなら、それが何よりの供養です!!
これ言うと怒られそうですが、父とアネッサは実は境遇も根本の性格(コンプレックス)も似ているつもりで書いてます!
アネッサがどこかで間違えた姿が父だったのかもしれない……。

解除
2020.01.23 10:40
大河 ながれ

没話の供養の場が嬉しいです!何しろこの作品のファンなので!!

お豚(トン)さま…。
おだてられたら木に登るところ、傲慢さの根っこには、大きなコンプレックスと劣等感があるのですね。
見返してやる!の努力が間違ってる。
アーシャはアーシャ個人として自分の足で立って生きていくために、いまが頑張りどきですね。

解除
4

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