夕日(夕日凪)

夕日(夕日凪) (著者名:夕日(夕日凪))

ちまちまと色々投稿しています。書籍もちょこちょこ。一般文芸系は夕日凪、それ以外は夕日という名義です。

本日の短編(25)

お嬢様と執事の日常。


『あなたとの日常』

 お嬢様を膝の上に乗せ彼女の髪に頬をすり寄せる。すると彼女がくすぐったそうに笑う。そんな日常を今日も私は楽しんでいた。
 日常は、幸せで溢れている。お嬢様といるとそんな実感で満たされ温かな気持ちになる。

「マクシミリアン、そんなにされるとくすぐったいわ」

 お嬢様はそう言いながらも嫌がってはいない様子でくすくすと笑いながら身じろぎをした。彼女が動くたびに鼻先を繊細な質感の髪が掠めて、彼女の匂いがふわりと香る。

「お嬢様……」

 私は囁きながらお嬢様を強く抱きしめた。そしてその頬に唇を寄せ口づけると、彼女の白い頬に薔薇色が差す。

「マクシミリアン! お昼間っからいかがわしいわ!」

 お嬢様が抗議の声を上げる。
 ……抱きしめて、頬にキスをしただけなのに。お嬢様は時々私を『やらしい』と言うのだが、いかがわしい行為はしていないと思うのだ。
 むしろ健全の範囲内を守った、節度あるお付き合いをしていると思う。

「頬にキスをしただけでございます、お嬢様」

 私がそう言うと彼女はなんだか不満げな顔でこちらをじろりと睨んだ。そんな可愛いお顔で睨まれても、ちっとも怖くないのだが。

 本当に、幸せだ。彼女と共にあることが、その日常が。
 ――……私はこの日常を『なにをしてでも』守らなければならない。
 犬たちをこっそりと放ち、得た情報を脳内で素早く整理する。
 シュラット侯爵家と王宮で対立している家の者の動きが近頃不穏である、だの。どこぞのクラスの伯爵家の息子がお嬢様に告白するつもりらしい、だの。
 犬たちは日常を脅かしそうな情報を色々と持ってきてくれる。

 さて、どれから潰していこうかな。

 私がそう思いながらお嬢様の体をさらに強く抱きしめると、お嬢様から不満の声が上がった。
登録日 2018.12.19 04:58

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2018.12.26 11:43
かみつれ颯

玉砕覚悟で告白するんだろうから、某伯爵子息君にちょっと位ビアンカちゃんの時間分けてあげたら…って思うのですが…f(^_^)
じゃないとビアンカちゃん「私はモテない」ってずっと凹みそうです。

まあ独占したい気持ちも凄く凄~くわかるけど…f(^_^;

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