白雲八鈴

白雲八鈴

異世界物で恋愛ファンタジーを中心にコツコツ投稿中。 少しでも楽しんで読んでいただければ、嬉しく思います。 書籍化「私の秘密を婚約者に見られたときの対処法を誰か教えてください」好評発売中です。

◆イグニス、幼女に絡まれる1


 ここ近年、魔物の被害が拡大し、国はその対策として、騎士となる者の増員を決めた。そう、身分問わず騎士となるものを求めたのだ。

 これにより、後に英雄と呼ばれる者が出てくることになる。

 では、その英雄と呼ばれる者の物語を語ることにしよう。

 後の英雄イグニスは冒険者として生計を立てていたが、冒険者として全てが上手く事が運ぶ訳では無い。時を同じくして冒険者になった者たちの中でも、突出した者たちは既にAランクやSランクに昇級し、その名を国中に轟かしていた。
 方やイグニスは未だにCランクだ。その年30歳。冒険者としては、その進退を考える岐路に立つ歳だと言っていい。

 Cランクの稼ぎなどその日暮らしがいいところだ。これが、あと10年若ければ、まだ己の成長に希望が持て、そのまま突っ走ることもできただろうが、イグニスの歳はすでに30歳。一流の冒険者であれば、30歳を超えてもまだまだ第一線で活躍できるであろうが、Cランクとなれば、田舎に戻って畑でも耕した方がいいのだろうか、それとも王都で日雇いのバイトでもすればいいのだろうかと、悩むところだ。

 ただ、イグニスに冒険者の才がなかったのかといえば、そうではない。イグニスが扱う剣は幼い頃に田舎に引っ越してきた老人が教えたものだ。その人物は騎士団長にまで上り詰めた御仁であり、奥方である老婦人は魔導師長を務めていた人物であった。その二人から教えを受けたイグニスは一流の冒険者になって当然だった。

 だが、今現在のランクはCランク。これはどういうことなのだろうか。実はイグニスはとてつもなく不運を背負った男なのだ。

 例えば今日は外せない大事な日という日に限って、土砂降りの雨が降っていたり、今日は思ってみない獲物を遭遇し大金を得れば、スリに遭い全額失ってしまったり、冒険者ギルドの昇級試験がある日は朝から鳥に糞を頭の上に落とされ、黒猫が目の前を横切り、大荷物を持った老婆が道端でうずくまっており、老婆を目的地まで届けてギルドに向かおうとすれば、道が突如として陥没し、地下道に落とされ、地下をさまようこと3日、やっと地上に出られたという感じで、昇級試験を受ける事ができなかったのだ。

 運が悪いにも程がある。

 そして、騎士になるために試験会場に向かっているイグニスがどうなっているかと言えば、どうやら人に絡まれているようだ。


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登録日 2023.02.08 19:47

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