若島まつ

若島まつ

のたりのたり大人向けファンタジーロマンスを書いています。

(→つづき)

何千人も収容できたという公衆浴場にどうやって熱を供給していたかというと、壁に通気口をいくつも開け、そのパイプを通して釜から吹き上がる熱い蒸気を供給していました。釜を茹で続けた奴隷たちの苦労を思うと途方もないことですが、ともかくもこうして古代の優れた技術とローマ人の風呂への深い愛でもって浴場文化が生き続け、彼らが征服した場所へと広まり続けたのです。

ところが、中世になると彼らは風呂文化を忘れ去りました。理由は、キリスト教の台頭です。
清貧や慎ましいことを美徳とするキリスト教がヨーロッパ世界の新たな支配者となると、肌を見せる行為自体が忌避され、開放的で楽しみを追求する前支配者の文化は徹底的に否定されました。この頃、多くの公衆浴場が破壊されています。
しかし、時代が少し進んだ頃に今度は医療目的のエチューヴ(蒸気浴)が再びヨーロッパに現れます。
これをもたらしたのは、打倒イスラム教徒のために東へ遠征した十字軍でした。キリスト教徒がローマ時代の記憶を消し去っていた頃、イスラム教圏ではローマの浴場文化が生き続けていたのです。
イスラム教徒はローマ人がもたらした浴場を「ハマム」として受け入れ、継承しました。浴場の規模は違えど、入り方も大体の構造もローマ時代とそっくり同じです。

そんな数奇な運命を辿ったヨーロッパのお風呂事情ですが、一部の富裕層や有識者を除いて一般に入浴が普及することもなく(文化的背景や経済事情によるものと思われる。湯を沸かすと言うこと自体に、とにかく金が掛かるのです)、産業革命の頃にシャワーという文明の機器が発明されるまでそれほど入浴と親しいとは言えない関係性を築いていたのでした。

日本の温泉、お風呂事情にも触れたいところですが、もう本当に止まらなくなるのでもう黙ります…。
ここまでお付き合い下さった方、ありがとうございました。
ハマム、本当におすすめです。めちゃくちゃ気持ちいい。
ハマムは宗教施設なのでモスクに併設されていて、観光地化されている場所のハマムなら旅行者でも入れるところもあります。わたしは確かパリの7区で入ったような気がします。
まじのガチハマムでなければ恵比寿にも。笑

因みに、ここで主に指しているヨーロッパは西~中央ヨーロッパのあたりです。東欧とか北欧となるとまた別のお話。
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登録日 2020.08.29 00:58

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