1
ライト文芸 連載中 長編
一九六五年五月二十六日、日本のとある街で、世界初の「異形化」した人間の存在が確認された。 小柄なその体躯に似合わない、筋骨隆々とした右腕に、ナイフのように鋭利な爪、獣のように黒々しい毛を生やしたその男は、人通りの少ない夕方の住宅街で、下校中の女子高生二人組を襲った。 駆け付けた警官が三発発砲し、男は死亡。 女子高生二人は救急搬送されたが、一名は到着時に既に死亡しており、もう一名は全身に無数の裂傷が刻まれていた。その後の処置で一命は取り留めたが、意識不明の重体となった。 次の日、その街を中心に、日本各地で異形化が発生し、その異形化に伴って発生した事件が大小含め、十二件。爬虫類のような鱗を身に纏う者、鳥のような翼の生えた者、両腕が鉱石のように変質した者など、メディアで大々的に報道された異形たちの姿は、人々に衝撃を与えた。 死者の出る事件も珍しくなく、日に日に増していく異形に、当時の日本は、人類滅亡だの、世界終末論だの、はたまた、とある組織の陰謀論など、幾つもの憶測が飛び交ったのだが、しばらく時が経ち、自衛隊や、警察がその対処に慣れ始めると、何事も無かったかのように元の日常に戻った。 そんななんて事のない歴史の一幕から、六十年。 八年前まで普通のサラリーマンだった俺は今、東京で異形狩りをしている。
24h.ポイント 0pt
小説 192,200 位 / 192,200件 ライト文芸 7,629 位 / 7,629件
文字数 4,786 最終更新日 2024.12.22 登録日 2024.12.22
1